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第一章
第21話:後始末
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「酷い、これはあまりに酷過ぎます」
ソフィアは顔面蒼白となって嘆き続けていた。
ソフィアがシンシアの台所領を出て直ぐに見たモノ、それは全ての建物が破壊され、全ての人間が喰い殺された村や街だった。
人間が生きたまま喰い殺された時に飛び散った血がそこら中を赤く染めている。
その血痕もとても小さな魔獣や魔蟲が舐め消していく。
ソフィアの心をえぐるような光景だった。
「チビちゃん急いで、このままでは王都まで同じ状況になってしまうは」
ソフィアはまだ王都が維持されていると思っているようだった。
だがチビちゃんには分かっていた。
縄張りを主張している間に王都が壊滅している事を。
「ソフィア、覚悟しておいた方がいい。
ソフィアにあんな仕打ちをする連中だ。
自分達の命を捨ててまで王都の民を護るはずがない。
足手纏いになる聖女候補や、聖女候補にすら選ばれなかった令嬢達を護って戦うほど高尚な連中じゃない」
グレアムには予測できていた。
チビちゃんから直接聞いたわけではないが、誰も生き残っていないだろうと。
四強と呼ばれた聖女候補の性格の悪さなら、自分が生き残るためなら平気で取り巻きを見捨てるだろうと予測できていた。
「そんな事はないわ、普段どれだけ意地悪をしていても、彼女達だって聖女候補よ。
そんな恥知らずな事など絶対にやらないわ」
口ではそう言いながらもソフィアの顔は真っ青だった。
本当に彼女達が誇り高い聖女候補なら、王都を出てこの場で戦っているはずだ。
聖女学園では四強と呼ばれていても、現役や予備役には彼女達よりはるかに強い魔獣を従魔にしていた聖女がいたのだ。
そんな人達が誰一人生き残ることができていないのだ。
恥知らずに逃げ出さない限り生きてるはずがないのだ。
「そうか、そう信じたいのなら信じているがいい。
だが信じることで隙を作ってはいけないよ。
もし生き残っている民がいたとしたら、絶対に助けなければいけない。
それなのに隙があったら助ける前に自分が危機に陥るよ」
グレアムがソフィアに気合を入れようと民の事を口にした。
聖女候補は同じ聖女候補を助けるために存在するのではない。
聖女候補は民を助けるために存在するのだ。
それを思い出させるために厳しい事を口にしたのだ。
血痕以外何一つ残さず喰い殺された民の事を思い出させたのだ。
「ごめんなさい、そうね、その通りね。
私は聖女候補を助けにここに来たのではないわね。
私は民を助けるためにここに来たのよね。
チビちゃん、誰か生きている人はいないかな。
チビちゃんが本気になったら民の気配も分かるんじゃないの。
お願いチビちゃん、生き残っている人の所に案内して」
ソフィアは顔面蒼白となって嘆き続けていた。
ソフィアがシンシアの台所領を出て直ぐに見たモノ、それは全ての建物が破壊され、全ての人間が喰い殺された村や街だった。
人間が生きたまま喰い殺された時に飛び散った血がそこら中を赤く染めている。
その血痕もとても小さな魔獣や魔蟲が舐め消していく。
ソフィアの心をえぐるような光景だった。
「チビちゃん急いで、このままでは王都まで同じ状況になってしまうは」
ソフィアはまだ王都が維持されていると思っているようだった。
だがチビちゃんには分かっていた。
縄張りを主張している間に王都が壊滅している事を。
「ソフィア、覚悟しておいた方がいい。
ソフィアにあんな仕打ちをする連中だ。
自分達の命を捨ててまで王都の民を護るはずがない。
足手纏いになる聖女候補や、聖女候補にすら選ばれなかった令嬢達を護って戦うほど高尚な連中じゃない」
グレアムには予測できていた。
チビちゃんから直接聞いたわけではないが、誰も生き残っていないだろうと。
四強と呼ばれた聖女候補の性格の悪さなら、自分が生き残るためなら平気で取り巻きを見捨てるだろうと予測できていた。
「そんな事はないわ、普段どれだけ意地悪をしていても、彼女達だって聖女候補よ。
そんな恥知らずな事など絶対にやらないわ」
口ではそう言いながらもソフィアの顔は真っ青だった。
本当に彼女達が誇り高い聖女候補なら、王都を出てこの場で戦っているはずだ。
聖女学園では四強と呼ばれていても、現役や予備役には彼女達よりはるかに強い魔獣を従魔にしていた聖女がいたのだ。
そんな人達が誰一人生き残ることができていないのだ。
恥知らずに逃げ出さない限り生きてるはずがないのだ。
「そうか、そう信じたいのなら信じているがいい。
だが信じることで隙を作ってはいけないよ。
もし生き残っている民がいたとしたら、絶対に助けなければいけない。
それなのに隙があったら助ける前に自分が危機に陥るよ」
グレアムがソフィアに気合を入れようと民の事を口にした。
聖女候補は同じ聖女候補を助けるために存在するのではない。
聖女候補は民を助けるために存在するのだ。
それを思い出させるために厳しい事を口にしたのだ。
血痕以外何一つ残さず喰い殺された民の事を思い出させたのだ。
「ごめんなさい、そうね、その通りね。
私は聖女候補を助けにここに来たのではないわね。
私は民を助けるためにここに来たのよね。
チビちゃん、誰か生きている人はいないかな。
チビちゃんが本気になったら民の気配も分かるんじゃないの。
お願いチビちゃん、生き残っている人の所に案内して」
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