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第一章
第20話:時間稼ぎ
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「おい、グレアム。
縄張りを主張するのなら、ガッツリ魔獣を喰った方がいい。
それもそれなりに強い魔獣を喰わなきゃならない。
少々時間がかかるぞ」
チビちゃんが自分の背中に騎乗しているグレアムとソフィアに言い放つ。
ソフィアは気がつかなかったが、グレアムは直ぐに気がついた。
直ぐに助けに行くのが気に喰わないのだと。
グレアムはその理由を考えてみた。
グレアムとチビちゃんには相通ずるものがある。
それはソフィアを虐めた連中など死んだ方がいいという気持ちだ。
「そうだな、王都に助けに行って領民が殺されては意味がない。
意味がないどころか次期領主候補としても聖女候補としても失格だ。
今目の前にいる人を助けないで何が聖女候補だ」
グレアムは背後に騎乗するソフィアに聞かせるように大きな声で話す。
何度も同じ事を言うのは恥ずかしい。
だがソフィアが暴走しないようにするためなら恥も外聞もない。
チビちゃんと一緒に大嘘をつくことも平気だった。
チビちゃんに魔獣や聖女の魔力や気配を察する力が本当にあるのなら、腐れ外道共が魔獣に皆殺しにされてから助けに行く心算なのだろうと考えたのだ。
「分かっているわ、グレアム。
母上様にも言われて目が覚めたわ。
追放された私は聖女候補として働くのではなく、次期領主として働くわ」
ソフィアも領民優先には納得しているようなので、グレアムとチビちゃんはじっくり時間をかけて縄張りを主張した。
魔境側の境界線は当然だが、ハミルトン王国との境界線もカーク王国側の境界線も、竜クラスの魔獣でも恐れるくらい強く縄張りを主張した。
その副産物として、シンシアの台所領に接している両王国領で暴れ回っていた魔獣が、一斉に逃げ散ってしまった。
「これだけ強く縄張りを主張したらもう大丈夫だぞ。
これで一カ月くらいは古竜や古代竜でも近寄ってこない。
安心して王国領に遠征できるぞ」
チビちゃんが偉そうに万全だと口にする。
ソフィアはこれでようやく王都の民を助けに行けると安堵していた。
恨み辛みしかないものの、旧友達を助けに行けると思っていた。
自分自身は何もせず、チビちゃんが魔獣を喰い散らかしてマーキングする姿を見ているだけなのは、精神的に辛いモノがあったのだ。
だがグレアムは暗い喜びを感じていた。
ソフィアを虐めた連中が皆殺しになったのだと。
もし助けたとしても助けてもらったことに感謝などせず、むしろ虐められていたのに助けに来る馬鹿だと、ソフィアをあざ笑うであろう連中を助けなくていいのだと。
もうこれでソフィアがあの連中を助ける姿を見なければいけないと言う、苦行に耐えなくてもいいのだと安堵していた。
縄張りを主張するのなら、ガッツリ魔獣を喰った方がいい。
それもそれなりに強い魔獣を喰わなきゃならない。
少々時間がかかるぞ」
チビちゃんが自分の背中に騎乗しているグレアムとソフィアに言い放つ。
ソフィアは気がつかなかったが、グレアムは直ぐに気がついた。
直ぐに助けに行くのが気に喰わないのだと。
グレアムはその理由を考えてみた。
グレアムとチビちゃんには相通ずるものがある。
それはソフィアを虐めた連中など死んだ方がいいという気持ちだ。
「そうだな、王都に助けに行って領民が殺されては意味がない。
意味がないどころか次期領主候補としても聖女候補としても失格だ。
今目の前にいる人を助けないで何が聖女候補だ」
グレアムは背後に騎乗するソフィアに聞かせるように大きな声で話す。
何度も同じ事を言うのは恥ずかしい。
だがソフィアが暴走しないようにするためなら恥も外聞もない。
チビちゃんと一緒に大嘘をつくことも平気だった。
チビちゃんに魔獣や聖女の魔力や気配を察する力が本当にあるのなら、腐れ外道共が魔獣に皆殺しにされてから助けに行く心算なのだろうと考えたのだ。
「分かっているわ、グレアム。
母上様にも言われて目が覚めたわ。
追放された私は聖女候補として働くのではなく、次期領主として働くわ」
ソフィアも領民優先には納得しているようなので、グレアムとチビちゃんはじっくり時間をかけて縄張りを主張した。
魔境側の境界線は当然だが、ハミルトン王国との境界線もカーク王国側の境界線も、竜クラスの魔獣でも恐れるくらい強く縄張りを主張した。
その副産物として、シンシアの台所領に接している両王国領で暴れ回っていた魔獣が、一斉に逃げ散ってしまった。
「これだけ強く縄張りを主張したらもう大丈夫だぞ。
これで一カ月くらいは古竜や古代竜でも近寄ってこない。
安心して王国領に遠征できるぞ」
チビちゃんが偉そうに万全だと口にする。
ソフィアはこれでようやく王都の民を助けに行けると安堵していた。
恨み辛みしかないものの、旧友達を助けに行けると思っていた。
自分自身は何もせず、チビちゃんが魔獣を喰い散らかしてマーキングする姿を見ているだけなのは、精神的に辛いモノがあったのだ。
だがグレアムは暗い喜びを感じていた。
ソフィアを虐めた連中が皆殺しになったのだと。
もし助けたとしても助けてもらったことに感謝などせず、むしろ虐められていたのに助けに来る馬鹿だと、ソフィアをあざ笑うであろう連中を助けなくていいのだと。
もうこれでソフィアがあの連中を助ける姿を見なければいけないと言う、苦行に耐えなくてもいいのだと安堵していた。
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