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53話

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 オウエンと別れて、私室でアレクサンダーに母乳をあげていると、半時間ほどでオウエンがやってきました。
 オウエンが疲れ切った顔をしています。
 これはねぎらってあげなければいけませんね。

「オウエン、お疲れさまでしたね」

「正直本当に疲れました。
 これなら敵と直接戦っている方が楽です」

「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ。
 そうかもしれませんね。
 私もあのような事は苦手です。
 ですが男爵家の当主として、領民を護るためには必要なのですね。
 お互い助け合ってやりましょうね」

「はい、お嬢様」

 満腹になったアレクサンダーが私の胸のなかでスヤスヤと寝ています。
 こんなひと時が、とても幸せを感じます。
 この幸せを絶対に守らなければいけません。
 そのためなら、鬼にも悪魔にもなりましょう。
 オウエンもそう思ってくれているはずです。

「ねえオウエン。
 結局どうすることにしたの。
 それによって状況が大きく変わるわ」

「はい、確かにその通りだと私も思います。
 その点に関しては、自由戦士ギルドに任せる事にしました。
 彼らの提案で、自由戦士ギルドの本部か重要支部を荒地に開設する事にしました」

「それはいい案ですね。
 自由戦士ギルドに所属する人達が、安心して休養できる場所になったら、常に一定の自由戦士が領内にいてくれる事になります。
 そうなれば、領地も国も大きな戦力を確保できます。
 ですが、自由戦士ギルドとは話がついているのですか?」

「それは彼らが交渉してるようです」

「まだ確実ではないのですね。
 では他に決まった事はありますか?」

「今採掘している鉱山と開拓している村は、自由戦士ギルドの領地にするか、ノドン男爵家と契約してくれた自由戦士の領地とします。
 新たに開拓する農地と、新たに採掘する鉱山は、ノドン男爵家の代官を派遣して直轄領とします。
 鉱山の採掘物は毎日役人が改めて、六割の税金を納める事になります。
 六公四民の税金は、他の領地と同じです」

「悪い条件ではありませんね。
 ですが問題は今ある開拓地と鉱山です。
 特に鉱山の採掘量を考えれば、自由戦士ギルドに全てを渡す条件は、我が家に不利過ぎるのではありませんか?」

「その点は問題ありません。
 ノドン男爵家が領主であることは変わりませんから、採掘量を三者で確認した上で、分配割合を決める事になっています。
 その時に自由戦士ギルドの兵役義務を決める予定です。
 自由戦士ギルドの取り分が多ければ、その分兵役義務が増えますから、ノドン男爵家が一方的に損をするわけではありません」

「そうですか、それなら大丈夫ですね。
 では、そろそろ、彼らが私には見せられないと言ったモノが何だったのか、教えてください」
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