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45話

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「また妊娠したんだって?
 年子になるのかい?」

 兄上が冷やかすように言いますが、しかたありません。
 実際にその通りなのですから。
 貴族婦人や令嬢の色目に嫉妬して、私から誘った妊娠です。
 恥ずかしがる必要などありません。
 堂々とすればいいのです。

「はい、その通りですわ。
 これでノドン男爵家とミルド男爵家の跡継ぎに困る事はありませんわ」

「そうだね、跡継ぎは大切だね。
 何人くらい子供を生むつもりだい?」

 兄妹とはいえ、きわどい質問をしてきますね。
 実力主義の兄上なら、たくさん産んで競わせろという考えなのでしょうね。
 独自の爵位を得たというのに、いまだに守護騎士のように私の後ろに立って護衛を務めてくれているオウエンが、少し照れているようです。
 今日はもう少し照れてもらいましょう。

「そうですわね。
 オウエンが私を愛してくれる限り、五人でも十人でも生みますわ。
 ねえ、オウエン」

「はい、閣下。
 閣下のお望み通りに」

 オウエンの照れが強くなりました。
 さっきよりも顔が赤くなっています。
 そういうオウエンも、普段の凛々しいオウエンと違って可愛いです。
 それに、私だけが、ベットの中のオウエンを知っているのです。
 その姿は、他の誰にも見せません!

「ふむ、仲睦まじい二人に言う事ではないのだが、本家の跡取りとしては言わない訳にはいかんのでな。
 ミルド男爵オウエン卿。
 ノヴァ以外との間に子供ができた場合はどうするんだ?」

「兄上!
 いくら兄上でも言っていいことと悪い事があります!
 本家の跡継ぎであろうと、今の言葉は許せません!
 兄妹の縁を切らせてもらいます!」

「なあ、ノヴァ。
 聞きたくはないが、聞かなければいけないと言ったろ。
 ノヴァは考えたくもないだろうが、薬で意思を奪われている間に、子種を盗まれることもあるんだ。
 強力な魅了の魔法で、操られることもある。
 戦争で捕虜になった時に、貞操を守るためにオウエンに自害させるのか?
 それとも、貞操を失っても生きていて欲しいのか?
 そろそれ覚悟を決めなければいけない」

 怒りに任せて兄にケンカを吹っかけてしまいましたが、何の状況の変化もなしに、私とオウエンを怒らせるような事を言う兄ではありません。
 何か大きな動きがあるのでしょう。
 その中には、オウエンが捕虜になるかもしれない、大規模な戦争も想定されるのでしょう。
 
「私はノヴァ様に命も誇りも捧げております。
 その誓いを破るくらいなら、死を選びます。
 その事覚えておいていただきたいです」
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