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37話

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 私はアーレンに、屋敷の出入り禁止を言い渡しました。
 薬の入札も禁止しました。
 素材の購入も断りました。
 激しく交渉すると思ったのですが、予想外に簡単に引き下がりました。
 正直最初は凄く警戒しました。
 報復の襲撃をしてくると思ったのです。

「意外でしたね、こんなに素直に引き下がるとは思いませんでした」

「閣下、私もそう思いました。
 色々探ってはいるのですが、全く動きがありません。
 ノドン男爵家が断ったら、シャノン公爵家と交渉すると思ったのですが、そのようなようすもありませんので、正直不気味です」

 私の言葉に、オウエンが答えてくれます。
 最近は私とオウエンの、二人きりの時間が増えました。
 私達の雰囲気を察して、オリビアが席を外してくれることが増えたのです。
 そのかいもあって、私は子供を授かることができました。
 とても幸せです。
 この幸せは、何が何でも護りたいと思っています。

「購入した農地の作物も順調に育っていると聞きます。
 新たに畑を開墾して、薬の素材を育てる話もしています。
 問題はアーレンの襲撃です。
 忸怩たる想いはありますが、この子のためならしかたりません。
 どこかの派閥に入って、そこから家臣を紹介してもらおうと思います」

 私がお腹をさすりながら話すと、オウエンも満面の笑みを浮かべて、私の手に自分の手を添えて、一緒にさすってくれます。
 オウエンも私の妊娠を心から喜んでくれています。
 私と同じように、この子を護ろうと思ってくれています。

「そうですね。
 今一番に大切すべきなのは、閣下や私の誇りではなくこの子の命であり将来です。
 地に頭をつけてでも、戦闘力のある家臣を手に入れる必要があります。
 閣下は誰の派閥に入るおつもりですか?」

「頭を下げるのは嫌ですが、兄レイズ卿が一番無難だと思っています。
 レイズ卿に問題があるのなら、ロバーツ第二王子を考えています」

 レイズ卿は、ゴードン公爵家を継ぐのにふさわしい武勇と知略を備えています。
 公爵に必要な冷酷なところもあります。
 少なくとも冷酷に見せかけるだけの演技力があります。
 戦闘力はオウエンと同じく、六竜騎士と称される実力で、時に聖騎士とまで称されています。
 個人の戦闘力だけでなく、近衛騎士団長として近衛騎士を率い、ゴードン公爵家長子として諸侯軍を率い、王国第一騎士団にも大きな影響力があります。

 ロバーツ第二王子は次期摂政になるのが決まっていますし、軟禁されているイーサン王太子が死ねば、ロバーツ第二王子の子供が王位に就きます。
 個人の武勇も、オウエンやレイズ卿と同じ六竜騎士と称され、第五騎士団長でバーンズ伯爵家令息のアシェル卿とは、親友だと聞いています。
 どちらについても強力な武力支援が受けられるでしょう。
 問題はどちらについた方がお腹の子の安全と幸福が保たれるかです!
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