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26話

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「そのせつは愚息のダグラスが重ね重ねご迷惑をおかけしました。
 この通り、心からお詫びさせていただきます」

 アーレンは入ってきて直ぐに丁寧な挨拶をしたかと思うと、次はダグラスの事を詫びだしました。
 私の受けた印象では、本気で心から詫びているようです。
 でも相手は裏社会でも名の知れた相手です。
 迂闊な返事はつけ込まれるかもしれません。
 言葉の一つ一つが、家の名誉や命に係わるのが貴族の会話です。
 悪いと思ってもいないのに詫びる訳にはいきません。

 いえ、心の中では悪かったと思っていても、逆に相手を責めなければいけない時があるのが、貴族というモノです。
 だからそんな貴族には戻りたくなかったのに、戻らなければいかなくなったのも、ダグラスの迂闊な行動が原因です。
 ここは気持ちのままに責めるべきかもしれませんね。

「詫びられても、もうどうにもなりませんよ。
 私はこの国に無理矢理戻らされてしまいました。
 男爵位を購入して、貴族家の当主にならなければいけなくなりました。
 本当に不本意な状態です。
 もう二度とダグラスを近づけないようにしてください」

 私はアーレンにはっきりと言いました。
 言い切って止めさせないと、また何をしでかすか分かりません。
 目的のたに実家との縁を切り、自分自身で全てを決められるようにしたのです。
 オウエンを私の婿に迎えても、もう誰も文句が言えないのです。
 だから、私に恋して分別をなくしているダグラスには近づいて欲しくないのです。

「重々承知しております。
 ダグラスは遠く離れた国で修行させております。
 古くから私と共に働いてきた者に見張りを任せておりますので、もう二度とご迷惑をおかけする事はございません」

「そうですか、それではもう私から話す事はありません。
 今日の要件がダグラスのしでかした事の詫びでしたら、もうそれで十分です。
 もう帰ってくれてもいいのですよ?」

「いえ、いえ、言葉で詫びを入れさせてもらうだけでは、申し訳ありません。
 賠償金を支払わせていただきたいのですが、一度きりでは十分な賠償にはならないと思うのです。
 そこで薬の入札に参加させていただいて落札額を高値に誘導させていただきます。
 我が家が利益をあげられるのなら、そのまま落札させていただきますので、不正にはなりませんから、閣下に名誉が傷つくこともないと思われます。
 いかがでしょうか?」

 いきなりとんでもない事を言いだしました。
 確かに我が家には有利な話ですが、何か裏があるのではないでしょうか?
 相手は裏世界でも名の知れた男です。
 なにかとんでもない事に、私の薬が使われてしまうのではないかと、心から不安になります。
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