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25話

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「正直清々しました。
 高慢で酷薄な人間だと思われるかもしれませんが、殺せてよかったです。
 あのような下衆を生かしておくと、苦しむ人が多くいると思うのです」

 昨日私に不敬を働いた男は、家族と店の者に同意が取れたので、オウエンの手で首を刎ねられました。
 そのかわり、薬はちゃんと家族と店に手渡されました。
 今日も彼らが落札していましたから、高額で買ってもらえる客がいるのでしょう。
 これからも彼らが落札し続けるかもしれません。

「悩むのは止めなさい、ノヴァ。
 薬の生産量が増えれば、他の商人に売る事もできます。
 今はノドン男爵家を繁栄させることだけを考えなさい」

 悩む私に、オリビア母さんがはっきりと言い切ってくれました。
 お陰ですっきりとしました。
 個人としての善悪で悩むだけではいけないのです。
 男爵家の当主となったからには、貴族当主の責任を果たさないといけません。
 オリビア母さんとオウエンの家族も養っていかないといけません。

 領地がなく、商売だけで家を保たなければいけないノドン男爵家は、安穏としていられる立場ではないのです。
 もっとも、私一人の力で薬を生産している訳ではありません。
 オリビア母さんとオウエンが手伝ってくれるから、結構な金額を稼ぐ事ができているのです。

「男爵閣下。
 コーラル家のアーレンという商人が謁見を求めております。
 どういたしましょうか?」

 ミリアムが報告に来てくれました。
 オリビア母さんの長女で、私の乳姉になる人です。
 私もオリビア母さんも、ノドン男爵家を内側から支える人材として、薬作りを任せられる人材として、とても期待しています。

 それにしても、アーレンですか。
 ダグラスを見捨てましたから、もう関係を断つと思っていました。
 まあ、私達がこのような状態に追い込まれたのは、ダグラスの責任が大きいですから、私には後悔も悔恨もありません。
 ですが、実の親であるアーレンには憎まれても仕方ないと思っています。

 子供の敵を討とうと、私を狙ってきたのでしょうか?
 あの混乱の時に聞いた話では、アーレンは裏世界で名の知れた存在のようです。
 裏世界にも貴族と同じように護らなければいけない体面があるのかもしれません。
 これからも裏世界で影響力を発揮するために、私を殺さなければいけないのかもしれません。

「閣下。
 そう心配されますな。
 閣下に害を与えようとする者は、私がこの手で斬り殺します。
 アーレンが少しでもおかしな言動をとったら、即座に殺します。
 だから安心して会ってください。
 何のために会いに来たかもわからず、陰でつけ狙われる方が対処に困ります」
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