上 下
22 / 71

第21話ゴードン公爵家王都屋敷の出来事3

しおりを挟む
「なんだレイズ。
 言いたいことがあるなら言ってみろ」

「では言わせてもらいます。
 今回の件は父上のなされようが悪すぎました。
 父上の失敗をノヴァに押し付け、自分は楽をされた。
 ノヴァに嫌われ見捨てられて当然です。
 これ以上自分の失敗をノヴァに負担させるのは止めた方がいい」

「なんだと!
 いつ私が失敗した!?
 いつ私が失敗の負担をノヴァに押し付けた!?
 いい加減な事を言うのなら、お前でも許さんぞ!」

「ならば申しましょう。
 弑逆の汚名を着るのを恐れて、自分の手を汚すことを嫌って、全ての負担をノヴァに押し付けたではありませんか。
 騎士ならば、汚名を着てでも正義を行うべきです。
 自分が奇麗なままでいるために、娘を汚辱にまみれさすなど、父親の資格もなければ騎士を名乗る資格もありません。
 ゴードン公爵家の当主で父親だから黙っていましたが、はっきり申し上げて、私は貴男の事を恥じ蔑んでいます」

「それ、だけか」

「他にもございます。
 ノヴァを迎えるならば、娘として遇すようにと何度も進言したはずです。
 それをあのような待遇をしておいて、今更親子の縁もないでしょう。
 作戦だと申されましたが、なぜギネアとミレイの好き勝手にさせていたのです。
 近親相姦が分かった遥か昔に、断罪することもできたでしょう。
 今迄無関心に好き勝手やらせておいて、今更利用しようとするなど、卑怯です。
 もっとも、当主の命令だからとか、父親の命令だからだとか言って、今日まで何もしなかった私も同罪ですがね。
 ですが、この期に及んで一族だ家族だと口にするほど恥さらしではありません。
 ここまで酷い扱いをしてきたのです。
 兄だと主張するほど恥知らずではありません。
 捨てられるのは当然で、受け入れるしかないでしょう」

「恥知らずだと言うのか?
 双剣大将軍と称される私を、恥知らずだと言うのか?!」

「まだ分からないようですね。
 本人の耳に入るのは心地よい阿諛追従だけですよ。
 息子である私の耳にもね。
 ですが本気で調べれば、多くの貴族士族が、本当はどう思っているか、知ることができますよ。
 権力に固執し、娘を見捨てた酷薄で恥知らずな公爵とね。
 お前達の耳にも入っているだろう。
 それを教えないように握り潰していたのだろう。
 私のように」
 
 兄が、いえ、レイズ卿が覚悟を決めたようです。
 護衛の騎士達に、本当の事を言えと眼で命じています。
 言わなければ、オウエンと協力して皆殺しにするぞと伝えています。
 これでゴードン公爵も本当に自分の評判を知ることになるでしょう。
 その結果、どう決断するのでしょうか?
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】今更告白されても困ります!

夜船 紡
恋愛
少女は生まれてまもなく王子の婚約者として選ばれた。 いつかはこの国の王妃として生きるはずだった。 しかし、王子はとある伯爵令嬢に一目惚れ。 婚約を白紙に戻したいと申し出る。 少女は「わかりました」と受け入れた。 しかし、家に帰ると父は激怒して彼女を殺してしまったのだ。 そんな中で彼女は願う。 ーーもし、生まれ変われるのならば、柵のない平民に生まれたい。もし叶うのならば、今度は自由に・・・ その願いは聞き届けられ、少女は平民の娘ジェンヌとなった。 しかし、貴族に生まれ変わった王子に見つかり求愛される。 「君を失って、ようやく自分の本当の気持ちがわかった。それで、追いかけてきたんだ」

侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。

和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」  同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。  幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。  外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。  しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。  人間、似た物同士が夫婦になるという。   その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。  ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。  そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。  一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。  他の投稿サイトにも掲載しています。

今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!

ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。 苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。 それでもなんとななれ始めたのだが、 目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。 そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。 義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。 仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。 「子供一人ぐらい楽勝だろ」 夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。 「家族なんだから助けてあげないと」 「家族なんだから助けあうべきだ」 夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。 「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」 「あの子は大変なんだ」 「母親ならできて当然よ」 シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。 その末に。 「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」 この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

婚約破棄されて捨てられたけど感謝でいっぱい

青空一夏
恋愛
私、アグネスは次期皇后として皇太子と婚約していた。辛い勉強に日々、明け暮れるも、妹は遊びほうけているばかり。そんな妹を羨ましかった私に皇太子から婚約破棄の宣言がされた。理由は妹が妊娠したから!おまけに私にその妹を支えるために側妃になれと言う。いや、それってそちらに都合良すぎだから!逃れるために私がとった策とは‥‥

続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎  『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』  第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。  書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。  第1巻:2023年12月〜    改稿を入れて読みやすくなっております。  是非♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。 絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。 前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。 そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。 まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。 前作に続き、のんびりと投稿してまいります。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15にしています。 ※誤字脱字が存在する可能性か高いです。  苦笑いで許して下さい。

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

処理中です...