上 下
18 / 71

17話

しおりを挟む
「王太子殿下。
 王太子殿下。
 王太子殿下!」

「ミレイ、ミレイ、ミレイ」

 ボイル公爵家王都屋敷に設けられた秘密の部屋で、ハワード王国王太子イーサンとゴードン公爵家令嬢ミレイが、本能をむき出しにして情欲にふけっていた。
 それを覗き窓からボイル公爵とゴードン公爵夫人ギネアが、情欲の炎の籠った眼で見つめていた。

「上手くいきましたね、兄上」

「ふん、色情狂の扱いなど簡単なモノよ。
 これでゴードン公爵を蹴落とすことができる。
 ゴードン公爵が没落したら、お前を取り戻す」

「まあ、兄上ったら」
 
 この後の情景は、吐き気をもよおすほど愚劣なモノだった。
 実の兄と妹が、王太子とミレイのように、本能のまま情欲をむき出しにする。
 壁ひとつ隔てた場所で、二組の男女が、許されない行為にふけっていた。
 一組は近親相姦の禁忌を犯し、もう一組は婚前貫通の禁忌に触れていた。

「ギャアァアア!」

「お待ちください!
 どうかお待ちください!
 大将軍ゴードン公爵閣下であろうと、このような乱暴狼藉は許されませんぞ!」

「黙れ外道!
 近親相姦を見逃すなど、神を恐れぬ大罪である!
 邪魔だてすると、ボイル公爵一人の罪ではなく、公爵家全体の悪行とし、家臣領民皆殺しにするぞ!」

 大将軍ゴードン公爵カレブ卿の逆鱗に触れて、その場にいた家臣達が一刀のもとに皆殺しになった。
 大将軍となって六竜騎士には数えられなくなったが、その実力は六竜騎士と同等、いや、実戦経験の差で、ゴードン公爵の方が強いという者さえいるのだ。
 両手に剣を握り、演舞に思えるほど華麗な剣さばきを見せるゴードン公爵は、多くの国から双剣大将軍と恐れられる存在なのだ。

「ボイル公爵!
 ギネア!
 実の兄妹で淫欲にふけるなど、神をも畏れぬ大罪。
 この場で成敗してくれる」

 そう言うと、ゴードン公爵は双剣をふるって二人の首を刎ねた。
 二人の淫欲部屋が、防音をしっかりしていたのが災いした。
 近親相姦の大罪を隠すために、中の音が漏れないように、外の音に邪魔されないように、完璧に防音されていたのだ。
 しかも不意にドアを開けられた驚きで、膣痙攣をおこして離れられなくなっており、つながったまま殺された。

「ミレイ!
 近親相姦で生まれた大罪の子よ。
 更に貴族令嬢の貞操を守らず、王太子と婚前貫通の罪を重ねた恥知らずよ。
 実の父親ではないが、今日まで育てたモノとして、その責任をとらせる。
 死ね!」

 ゴードン公爵の剣が、ミレイの首を刎ねた。
 噴水のように切り口から噴き出る血液が、王太子を真っ赤に染める。
 母娘で似ているのか、ミレイも膣痙攣をおこしていて、王太子は逃げることができないでいた。
 あまりの惨状に、王太子はその場で気を失った。

「この腐れ外道と色情狂を晒し者にしろ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。 だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。 しかも新たな婚約者は妹のロゼ。 誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。 だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。 それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。 主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。 婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。 この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。 これに追加して書いていきます。 新しい作品では ①主人公の感情が薄い ②視点変更で読みずらい というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。 見比べて見るのも面白いかも知れません。 ご迷惑をお掛けいたしました

自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな
恋愛
地味で大人しいカトリーヌと、可愛らしく社交的なレイラは、見た目も性格も対照的な姉妹。 本当はレイラの方が姉なのだが、『妹の方が甘えられるから』という、どうでも良い理由で、幼い頃からレイラが妹を自称していたのである。 誰も否定しないせいで、いつしか、友人知人はもちろん、両親やカトリーヌ自身でさえも、レイラが妹だと思い込むようになっていた。 そんなある日のこと、『妹の方を花嫁として迎えたい』と、スチュアートから申し出を受ける。 しかしこの男、無愛想な乱暴者と評判が悪い。 レイラはもちろん 「こんな人のところにお嫁に行くのなんて、ごめんだわ!」 と駄々をこね、何年かぶりに 「だって本当の『妹』はカトリーヌのほうでしょう! だったらカトリーヌがお嫁に行くべきだわ!」 と言い放ったのである。 スチュアートが求めているのは明らかに可愛いレイラの方だろう、とカトリーヌは思ったが、 「実は求婚してくれている男性がいるの。 私も結婚するつもりでいるのよ」 と泣き出すレイラを見て、自分が嫁に行くことを決意する。 しかし思った通り、スチュアートが求めていたのはレイラの方だったらしい。 カトリーヌを一目見るなり、みるみる険しい顔になり、思い切り壁を殴りつけたのである。 これではとても幸せな結婚など望めそうにない。 しかし、自分が行くと言ってしまった以上、もう実家には戻れない。 カトリーヌは底なし沼に沈んでいくような気分だったが、時が経つにつれ、少しずつスチュアートとの距離が縮まり始めて……?

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪
恋愛
 学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。  王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——  だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。  誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。  この事件をきっかけに歴史は動いた。  無血革命が起こり、国名が変わった。  平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。 ※R15は保険。 ※設定はゆるんゆるん。 ※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m ※本編はオマケ込みで全24話 ※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話) ※『ジョン、という人』(全1話) ※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話) ※↑蛇足回2021,6,23加筆修正 ※外伝『真か偽か』(全1話) ※小説家になろうにも投稿しております。

処理中です...