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13話

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 随分静かですね。
 断末魔が全く聞こえません。
 タッカー男爵があのようなモノ達を許すわけがりませんから、断末魔もあげられないような、的確な一撃で殺しているのでしょうね。
 タッカー男爵だけでなく、率いている将兵も恐ろしいくらいの手練れですね。
 騒ぐことのないように、一斉に一瞬で絶命させたのでしょう。

「聖女ノヴァ様。
 塵は片付けました。
 この場は私達が引き受けますので、そのまま地下道でお待ちください」

「分かりました。
 オウエンが戻り次第遠くの国に行きます」

「お願い致します」

 待つ時間も愉しいモノです。
 特に母さんとこれからの生活について話しながら待つのは、とても楽しいですね。
 家をどうするのか。
 商売を始めるのか。
 魔法の勉強するのか。
 とても夢が広がります。

「タッカー男爵。
 ここは引いてもらいたい」

「オウエン卿。
 聖女ノヴァ様を売ったのか?」

「売ったわけではない!
 だが死ぬわけにはいかんし、ノヴァ様から長く離れる訳にもいかん。
 だから取引したのだ。
 事情の分からないタッカー男爵に非難されるいわれはない」

「ふん!
 だが聖女ノヴァ様をアレの生贄にするのだろうが!
 それで守護騎士といえるのか?!」

「そんな事には絶対させない。
 守護騎士として、やるべきことは心得ている。
 国を敵に回そうと、公爵を敵に回そうともだ!」

「ふ~ん。
 ハンター男爵もそれでいいのか?
 それではゴードン公爵の望みに反するのではないか?」

 オウエンが戻って来てくれました!
 タッカー男爵と交渉してくれています。
 ですが、ハンター男爵とも取引してしまったようです。
 少し哀しいですが、オウエンの判断は正しいです。
 オウエンの心配していたように、私は殺されかけましたから。
 タッカー男爵がいなかったら、魔道具を使って戦う事になっていました。

 問題はハンター男爵です。
 ハンター男爵は父の命令でここにきています。
 私を色情狂の生贄にする命令です。
 でもオウエンは、父の命令に逆らうと公言しました。
 たぶん色情狂を殺す気です。
 それを聞いたハンター男爵は、どう決断するのでしょうか?

「ふん!
 俺はノヴァ様を無事に国まで連れ帰れと命じられただけだ。
 その後は知らん。
 オウエンが何を考え、何をしようと知った事ではない」

 あら、あら、あら。
 さすが武闘派のハンター男爵ですね。
 ハンター男爵も色情狂を殺すべきだと考えているようです。
 これなら国に帰っても何とかなるかもしれません。
 オウエンを嘘つきにするわけにもいきませんし、一旦帰ることにしましょうか?

 ですが無事に帰るには、タッカー男爵と戦わなければいけません。
 勝てるのでしょうか? 
 いえ、勝ち負けなどどうでもいいです。
 オウエンさえ無事なら、私はどうなっても構いません。
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