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6話

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「おい、おい、おい、おい。
 物騒な事を言ってくれる。
 俺はオウエンと今やりあう気はない。
 やるなら正々堂々と一対一でやりたいんだ。
 
「だったらそこをどけ、デイヴィッド」

 オウエンとデイヴィッドが舌戦を繰り広げています。
 実際に剣を交える前の舌戦で、勝敗が決まる事もあります。
 ですが、今回は少し様相が違うようです。
 オウエンとデイヴィッドは、共に六竜騎士と評されるほどの腕利きです。
 しかもオウエンは私の実家に仕える騎士で、デイヴィッドは私の実家に寄騎する男爵家の若き当主です。
 友情のようなモノがあり、情報交換しているようです。

「そういうわけにはいかないんだよ。
 ハワード王国も色々混乱していてね、分裂状態なんだ。
 このままでは隣国の侵攻も考えられる状況だ。
 四大公爵家はまだ他国に通じていないが、有力貴族の中には、他国に通じて領地や権益を手に入れようとしている家もある」

「だからどうだと言うんだ。
 一度追放にしておいて、どの面下げてお嬢様に帰ってきてくれという」

「それができるのが、面の皮が厚い有力貴族様なのさ。
 お嬢様のご尊父も同じだよ。
 一度追放しても、状況が変われは無理矢理連れ戻すのだ」

「ふむ。
 色情狂の命令ではないのだな?」

「オウエンが誰の事を言っているのかさっぱり分からないが。
 今この店の周りを取り囲んでいるのは、ゴードン公爵家の密偵だ。
 この後来る連中がどこの手者かは分からんがね」

「お嬢様。
 いかがなさいますか?」

 ある程度の情報は手に入れました。
 私を無傷で確保したいデイヴィッドは、わざと情報を流してくれました。
 まあ、父の許可を得ての事でしょう。
 父の事ですから、ゴードン公爵家の利益を最優先に考えるとともに、ハワード王国の利益も確保していますね。
 私の幸せは二の次三の次でしょう。

「ハンター男爵当主デイヴィッド。
 ひとつ質問があります」

「何でございましょう、ゴードン公爵家令嬢ノヴァ様。
 私に答えられる事でしたら、何でもお答えさせていただきます」

「四大公爵家の考えはどうなのですか?」

「グラント公爵家は引くに引けなくなっております。
 他の公爵家は、ゴードン公爵に味方すると言っておられます」

「私をイーサン王太子の婚約者に戻すという事ですか?
 それともイーサン王太子を廃嫡にして、ロバーツ第二王子を立太子させるという事ですか?」

「思い切ったことを口になされますね。
 残念ながらそこまで話は進んでいません。
 戦国乱世を統一し、隣国に奪われていた領地を奪還された、初代国王陛下の決められた大綱は、そう簡単には変えられません。
 イーサン王太子の廃嫡となると、四大公爵家の意見を統一できなくなります」

 困りましたね。
 そうなると、恐らく私の境遇は最悪の状況になりますね。
 念のため、どういう立場を押し付けられるのか、確認しておかなければなりませんが、逃げる準備をしておいた方がいいですね。
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