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「ノヴァ様!
やっと会えました!
お久しぶりです、ノヴァ様!」
「まあ、まあ、まあ!
なぜここに来たのです、ダグラス?」
「なぜって、ノヴァ様に会いたかったからじゃないですか」
ダグラスが満面の笑みを浮かべて店に入ってきました。
正直困りました。
絶望とまでは言いませんが、かなり危険です。
私の居場所を探し当てた王太子から逃げ出して半年です。
ようやく新しい薬店も軌道に乗ってきたところです。
その店を捨ててまた逃げ出さなければいけません。
ダグラスはまだ子供の面が多い微妙な年齢です。
私の事を慕ってくれているのは知っています。
命の恩人というだけでなく、年上の女性として憧れてくれています。
憧憬という表現が一番相応しいのかもしれません。
ダグラスの初恋なのかもしれません。
この年頃の男の子ならよくある熱病のようなモノです。
周りの何も見えず、コーラル家に残された手がかりを使って、血眼になって私の居場所を探し出したのでしょう。
「ダグラス。
それが私を危険にさらす事だと分かっている?」
「え?
なんで僕が会いに来たらノヴァ様が危険になるの?」
「私の事を王太子が狙っているからよ。
相手は一国の王太子よ。
優秀な王家の密偵を総動員できるのよ。
私なら、必ずコーラル家の人を見張らせるわ。
案の定ダグラスはここに来たわ。
今頃この場所は王太子に伝えられているわ」
「そんな!
僕はノヴァ様に迷惑をかける気なんてなかったんだ!
ノヴァ様の役に立ちたかっただけなんだ!
ノヴァ様を助けたかったんだ……
……ノヴァ様に会いたくて、ノヴァ様の側にいたくて……
それだけなんだよ!
本当なんだよ!
知らなかったんだよ!」
「いいのよ。
分かっているわ。
だけどもゆっくり話している時間もないわ。
私はこのまま逃げるから、ダグラスには後始末をお願いね。
お母さん、オウエン、このまま逃げるわよ」
「はい、お嬢、いえ、ノヴァ」
「その時間はないようです、お嬢様」
オリビアは直ぐに逃げる決断をしてくれましたがオウエンが厳し事を口にします。
もう敵に包囲されているのでしょうか?
オウエンが斬り抜けられないような強敵がいるのでしょうか?
大人数に取り囲まれているのでしょうか?
「ふ、ふ、ふ、ふ。
逃亡生活でも腕は鈍っていないようだな、オウエン」
そう言いながら、ダグラスの後から店に入ってきたのは、ハンター男爵家のデイヴィッドです。
意外でした。
デイヴィッドは実家に近い騎士です。
私を追放した実家に近いデイヴィッドが追ってきたという事は、王太子と父が手を結んだという事でしょうか?
「今さら何の用だ、デイヴィッド。
お嬢様の幸せを邪魔するのなら、お前であろうと殺すぞ!」
やっと会えました!
お久しぶりです、ノヴァ様!」
「まあ、まあ、まあ!
なぜここに来たのです、ダグラス?」
「なぜって、ノヴァ様に会いたかったからじゃないですか」
ダグラスが満面の笑みを浮かべて店に入ってきました。
正直困りました。
絶望とまでは言いませんが、かなり危険です。
私の居場所を探し当てた王太子から逃げ出して半年です。
ようやく新しい薬店も軌道に乗ってきたところです。
その店を捨ててまた逃げ出さなければいけません。
ダグラスはまだ子供の面が多い微妙な年齢です。
私の事を慕ってくれているのは知っています。
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憧憬という表現が一番相応しいのかもしれません。
ダグラスの初恋なのかもしれません。
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周りの何も見えず、コーラル家に残された手がかりを使って、血眼になって私の居場所を探し出したのでしょう。
「ダグラス。
それが私を危険にさらす事だと分かっている?」
「え?
なんで僕が会いに来たらノヴァ様が危険になるの?」
「私の事を王太子が狙っているからよ。
相手は一国の王太子よ。
優秀な王家の密偵を総動員できるのよ。
私なら、必ずコーラル家の人を見張らせるわ。
案の定ダグラスはここに来たわ。
今頃この場所は王太子に伝えられているわ」
「そんな!
僕はノヴァ様に迷惑をかける気なんてなかったんだ!
ノヴァ様の役に立ちたかっただけなんだ!
ノヴァ様を助けたかったんだ……
……ノヴァ様に会いたくて、ノヴァ様の側にいたくて……
それだけなんだよ!
本当なんだよ!
知らなかったんだよ!」
「いいのよ。
分かっているわ。
だけどもゆっくり話している時間もないわ。
私はこのまま逃げるから、ダグラスには後始末をお願いね。
お母さん、オウエン、このまま逃げるわよ」
「はい、お嬢、いえ、ノヴァ」
「その時間はないようです、お嬢様」
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もう敵に包囲されているのでしょうか?
オウエンが斬り抜けられないような強敵がいるのでしょうか?
大人数に取り囲まれているのでしょうか?
「ふ、ふ、ふ、ふ。
逃亡生活でも腕は鈍っていないようだな、オウエン」
そう言いながら、ダグラスの後から店に入ってきたのは、ハンター男爵家のデイヴィッドです。
意外でした。
デイヴィッドは実家に近い騎士です。
私を追放した実家に近いデイヴィッドが追ってきたという事は、王太子と父が手を結んだという事でしょうか?
「今さら何の用だ、デイヴィッド。
お嬢様の幸せを邪魔するのなら、お前であろうと殺すぞ!」
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