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第一章
第38話:会食・マリア視点
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父上、母上、お義兄様、わたくしの四人だけで会食です。
わたくしが婚約破棄されて以来、四人だけで食事する機会は殆どなくなってしまい、政治的な駆け引きが必要な晩餐会や舞踏会ばかりでした。
それでも、お義兄様が城におられて、一緒にいてくださるのなら、晩餐会であろうと舞踏会であろうと、愉しむことができました。
ですが、お義兄様が王国に残った貴族やローマ帝国に内通する貴族を討伐するために出征されてからは、お見かけする事すらできなくなったのです。
滅ぼした王家を含む貴族の数と、切り取られた領地の広さから言えば、半年少しというのは信じられないほど短期間です。
ですが、ただ待つしかなかったわたくしには、永遠とも思える長さだったのです。
もう二度と外征などして欲しくないというのが、偽らざる本心です。
「エドアルド、公王家の直轄領と味方した貴族領以外は、国土のほとんど全てがエドアルドの直轄領となっている。
それほど力をつけたのなら、マリアと結婚しても大丈夫なのではないか。
もうどのような大国であろうと、公国を攻め込むことはできん。
マリアの婚約者を選ぶと言って子弟を集めた王侯貴族も文句は言うわないだろう」
ありがとうございます、お父様。
お義兄様、どうかわたくしと結婚すると言ってくださいませ。
「恐れながら公王陛下、表立って声高に文句を言う王侯貴族は少ないでしょう。
ですが、陰で悪い噂を広める王侯貴族は数多くいると思われます。
ここは身分に囚われず、優秀な漢を婚約者に選ぶべきでございます」
「エドアルド、これはマリアの母としてではなく、公国の公妃としてたずねます。
公国の利益になるマリアに相応しい公子が、本当におられるのですか」
母上がわたくしのためにお義兄様に質問してくれています。
女が表の政務に口出しするべきではないと言って、内政だけに専念しておられた母上が、わたくしのために政略結婚に口出ししてくださっています。
「完璧とは言い難いですが、多少は期待できる公子が現れました。
今までのように、絶対に婚約者に選べないように屑ではありません」
「屑ではないだけで、騎士として認められる方なのですか」
「騎士として認められるかどうかは、現在も調べ続けさせております。
今暫く御待ち頂きたいのです。
マリアお嬢様の婚約者ですから、万が一にも調べ損ねてはいけません。
それと、ヤコポ殿は騎士というよりは能臣と評するべきだと思われます。
領地の内政や民を導く力に加え、策を考える力があるようです」
「エドアルド、はっきりと言っておきますが、少々の能力は認められませんよ。
エドアルドの血を継いだ優秀な異母兄弟が数多く生まれてくるのですよ。
そのヤコポ殿とマリアの子供が、余りにも見劣りするようでは、公王家が家臣の乗っ取られてしまうではありませんか」
「その点は大丈夫でございます、公妃殿下。
私が子供達に徹底的に忠誠心を叩き込みます。
僅かでも叛意がありそうな子供は、責任を持って処分いたしますので、ご安心ください」
「駄目です、そのような非道は絶対に許しません。
今この場ではっきりと断言しておきます。
マリアの結婚相手は全ての面でエドアルドを超える者でないと認めません。
マリアが十八になるまでにエドアルドを超える者が現れなかったら、エドアルドがマリアと結婚しなさい。
これは公妃としても母としても厳命します、いいですね、エドアルド」
わたくしが婚約破棄されて以来、四人だけで食事する機会は殆どなくなってしまい、政治的な駆け引きが必要な晩餐会や舞踏会ばかりでした。
それでも、お義兄様が城におられて、一緒にいてくださるのなら、晩餐会であろうと舞踏会であろうと、愉しむことができました。
ですが、お義兄様が王国に残った貴族やローマ帝国に内通する貴族を討伐するために出征されてからは、お見かけする事すらできなくなったのです。
滅ぼした王家を含む貴族の数と、切り取られた領地の広さから言えば、半年少しというのは信じられないほど短期間です。
ですが、ただ待つしかなかったわたくしには、永遠とも思える長さだったのです。
もう二度と外征などして欲しくないというのが、偽らざる本心です。
「エドアルド、公王家の直轄領と味方した貴族領以外は、国土のほとんど全てがエドアルドの直轄領となっている。
それほど力をつけたのなら、マリアと結婚しても大丈夫なのではないか。
もうどのような大国であろうと、公国を攻め込むことはできん。
マリアの婚約者を選ぶと言って子弟を集めた王侯貴族も文句は言うわないだろう」
ありがとうございます、お父様。
お義兄様、どうかわたくしと結婚すると言ってくださいませ。
「恐れながら公王陛下、表立って声高に文句を言う王侯貴族は少ないでしょう。
ですが、陰で悪い噂を広める王侯貴族は数多くいると思われます。
ここは身分に囚われず、優秀な漢を婚約者に選ぶべきでございます」
「エドアルド、これはマリアの母としてではなく、公国の公妃としてたずねます。
公国の利益になるマリアに相応しい公子が、本当におられるのですか」
母上がわたくしのためにお義兄様に質問してくれています。
女が表の政務に口出しするべきではないと言って、内政だけに専念しておられた母上が、わたくしのために政略結婚に口出ししてくださっています。
「完璧とは言い難いですが、多少は期待できる公子が現れました。
今までのように、絶対に婚約者に選べないように屑ではありません」
「屑ではないだけで、騎士として認められる方なのですか」
「騎士として認められるかどうかは、現在も調べ続けさせております。
今暫く御待ち頂きたいのです。
マリアお嬢様の婚約者ですから、万が一にも調べ損ねてはいけません。
それと、ヤコポ殿は騎士というよりは能臣と評するべきだと思われます。
領地の内政や民を導く力に加え、策を考える力があるようです」
「エドアルド、はっきりと言っておきますが、少々の能力は認められませんよ。
エドアルドの血を継いだ優秀な異母兄弟が数多く生まれてくるのですよ。
そのヤコポ殿とマリアの子供が、余りにも見劣りするようでは、公王家が家臣の乗っ取られてしまうではありませんか」
「その点は大丈夫でございます、公妃殿下。
私が子供達に徹底的に忠誠心を叩き込みます。
僅かでも叛意がありそうな子供は、責任を持って処分いたしますので、ご安心ください」
「駄目です、そのような非道は絶対に許しません。
今この場ではっきりと断言しておきます。
マリアの結婚相手は全ての面でエドアルドを超える者でないと認めません。
マリアが十八になるまでにエドアルドを超える者が現れなかったら、エドアルドがマリアと結婚しなさい。
これは公妃としても母としても厳命します、いいですね、エドアルド」
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