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第一章
第29話:心配
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「お義兄様は大丈夫でしょうか、公王陛下」
「ここは私的な場所だから、公王陛下ではなくお父さんと呼んで欲しいな」
「申し訳ありません、父上」
「マリアがエドアルドを心配する気持ちはよく分かる。
なんと言っても相手はギリス教団だ。
ロマリオ王国にある大神殿だけではなく、他にも四つの大神殿がある。
ギリス教を国教にしている国も多い。
公国内にも中小の神殿もあれば、信徒もいる。
だがマリアも分かっているだろう。
エドアルドが勝算のない戦いをしない」
「はい、お義兄様は一番勝てる可能性の高い方法を選ばれます。
相手がどのような対応をしてきても、確実に勝てる策を選ばれます。
ですが、分かっていても、それでも心配なのです。
父上や私のために、進んで必要もない憎まれ役を選ばれているのではないかと」
「確かに、そう言う面はあるかもしれない。
マリアとの結婚を避けるために、自分の評判を落としている可能性はある」
「それは、私が無理な事を申し上げたからでしょうか」
「そうではない、そんな事を言ったら、余の方がよほど無理な事を言った。
全ては公王家と公国のためだ。
誰かがやらなければいけない憎まれ役ならば、余やマリアにさせず、自分が引き受けようとするだろう。
エドアルドの性格だと、配下の者にやらせる事はない。
まして、憎まれ役をやらした配下を自らの手で殺して、人気取りに使う事もない」
「はい、お義兄様ならば、必要な憎まれ役は自分が引き受けられます。
王妃と王太子を斬首されたのはお義兄様です。
ですが、それなら、何故お義兄様は教団の襲撃を自らやらず、カルロ殿にやらせたのでしょうか」
「エドアルドとカルロは親友だが、カルロは少々特殊な性格をしている。
カルロは常に強い相手と戦う事を求めている」
「まさか、カルロ殿はお義兄様と戦いたいと思っておられるのですか」
「ある程度発散している時には大丈夫だが、宮廷生活が長くなると、何時暴れ出すか分からないと聞いている。
だからエドアルドは、定期的に武芸大会を開催して、カルロが発散できる場を設けていたのだ」
「わたくし、武芸大会は利益をあげるためだと聞いておりました。
お義兄様が出場されるのも、孤児や寡婦を救う資金集めだと思っておりました。
利益だけでなく、カルロ殿の暴発を止める為でもあったのですね」
「エドアルドの策は、一つの目的しかない方が珍しい。
常に複数の利益を得るために行っている。
武芸大会を開催した一番の目的は、王都の孤児や寡婦を救う事だった。
だがそれは、我が家とエドアルドの評判を高める事でもある。
武芸大会に刺客を送り込む、我が家やエドアルドを敵視している王侯貴族や商人を炙り出す目的もあった。
そう言う目的の一つに、カルロを暴れさせない事があっただけだ」
「わたくし、何も知りませんでした。
王国の聖女、公爵家の賢女だと言われていても、お義兄様の足元にも及ばなかったのですね。
このような者が、お義兄様の伴侶になりたいだなんて、思い上がりもはなはだしかったのですね」
「そんな事はない、マリアは聖女と呼ばれるに相応しい行動をしてきた。
親の欲目でなく、公王として公平に見て心からそう思っている。
ただエドアルドが優秀過ぎるだけだ、比べる事はない」
「……ですが……」
「それに、エドアルドにも大きな欠点がある。
その欠点さえなければエドアルドは完璧な聖人だっただろうが、欠点が大きすぎて、とても残念な漢になってしまっている。
だからそう自分を卑下するな、マリア」
「ここは私的な場所だから、公王陛下ではなくお父さんと呼んで欲しいな」
「申し訳ありません、父上」
「マリアがエドアルドを心配する気持ちはよく分かる。
なんと言っても相手はギリス教団だ。
ロマリオ王国にある大神殿だけではなく、他にも四つの大神殿がある。
ギリス教を国教にしている国も多い。
公国内にも中小の神殿もあれば、信徒もいる。
だがマリアも分かっているだろう。
エドアルドが勝算のない戦いをしない」
「はい、お義兄様は一番勝てる可能性の高い方法を選ばれます。
相手がどのような対応をしてきても、確実に勝てる策を選ばれます。
ですが、分かっていても、それでも心配なのです。
父上や私のために、進んで必要もない憎まれ役を選ばれているのではないかと」
「確かに、そう言う面はあるかもしれない。
マリアとの結婚を避けるために、自分の評判を落としている可能性はある」
「それは、私が無理な事を申し上げたからでしょうか」
「そうではない、そんな事を言ったら、余の方がよほど無理な事を言った。
全ては公王家と公国のためだ。
誰かがやらなければいけない憎まれ役ならば、余やマリアにさせず、自分が引き受けようとするだろう。
エドアルドの性格だと、配下の者にやらせる事はない。
まして、憎まれ役をやらした配下を自らの手で殺して、人気取りに使う事もない」
「はい、お義兄様ならば、必要な憎まれ役は自分が引き受けられます。
王妃と王太子を斬首されたのはお義兄様です。
ですが、それなら、何故お義兄様は教団の襲撃を自らやらず、カルロ殿にやらせたのでしょうか」
「エドアルドとカルロは親友だが、カルロは少々特殊な性格をしている。
カルロは常に強い相手と戦う事を求めている」
「まさか、カルロ殿はお義兄様と戦いたいと思っておられるのですか」
「ある程度発散している時には大丈夫だが、宮廷生活が長くなると、何時暴れ出すか分からないと聞いている。
だからエドアルドは、定期的に武芸大会を開催して、カルロが発散できる場を設けていたのだ」
「わたくし、武芸大会は利益をあげるためだと聞いておりました。
お義兄様が出場されるのも、孤児や寡婦を救う資金集めだと思っておりました。
利益だけでなく、カルロ殿の暴発を止める為でもあったのですね」
「エドアルドの策は、一つの目的しかない方が珍しい。
常に複数の利益を得るために行っている。
武芸大会を開催した一番の目的は、王都の孤児や寡婦を救う事だった。
だがそれは、我が家とエドアルドの評判を高める事でもある。
武芸大会に刺客を送り込む、我が家やエドアルドを敵視している王侯貴族や商人を炙り出す目的もあった。
そう言う目的の一つに、カルロを暴れさせない事があっただけだ」
「わたくし、何も知りませんでした。
王国の聖女、公爵家の賢女だと言われていても、お義兄様の足元にも及ばなかったのですね。
このような者が、お義兄様の伴侶になりたいだなんて、思い上がりもはなはだしかったのですね」
「そんな事はない、マリアは聖女と呼ばれるに相応しい行動をしてきた。
親の欲目でなく、公王として公平に見て心からそう思っている。
ただエドアルドが優秀過ぎるだけだ、比べる事はない」
「……ですが……」
「それに、エドアルドにも大きな欠点がある。
その欠点さえなければエドアルドは完璧な聖人だっただろうが、欠点が大きすぎて、とても残念な漢になってしまっている。
だからそう自分を卑下するな、マリア」
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