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第一章

第23話:詫び

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「エドアルド、最初に詫びておく。
 何も分かっていないのに、余が現実にそぐわない命令を下した事で、必要もない負担をかけてしまって申し訳なかった」

「そのように頭を下げていただく必要はございません、公王陛下。
 問題がないとは申しませんが、今まで王侯貴族から受けていた理不尽な命令に比べれば、どうとでもなる程度のことでございます。
 今戦っている王家やローマ帝国に勝利すれば、どのような大国も無理な要求はできなくなります。
 私がどうしても公国に残らなければいけない状態ではなくなります。
 私についてきたいという者達も、王家を滅ぼして手に入れた領地の一部を、私が婿入りする際の持参領にしていただき、そこに残せばいいのです。
 そうすれば実質的には公国の軍事力として残すことができます」

「エドアルドがそこまで考えてくれていたのに、余は何も分かっていなかった。
 余だけではとても公国を守りきる事などできないと思い知った」

「なにを申されますか、公王陛下。
 私が知る王侯貴族の中では、公王陛下が一番能力が優れておられます。
 人格に至っては、比べる事もできない立派な方でございます。
 公王陛下なら、私などが居なくても、公国を護るどころか繫栄させられます」

「他の王侯貴族が愚かすぎるだけで、比べる意味などない。
 それに、エドアルドが比べているのは、この国の王侯貴族だけであろう。
 他国の優秀な指導者と比べれば、余は為政者として劣っているのではないか。
 エドアルドが他国に婿入りした時、余は一人でそのような者と競わねばならん。
 エドアルドは婿入りした国から余を助けると言ってくれるだろうが、それではエドアルドを不忠者にしてしまう」

「恐れながら申し上げさせて頂きます。
 公王陛下の人徳は多くの臣下から忠誠を得ておられます。
 彼らが全力で支えてくれれば、他国の優秀な指導者が相手でも、よほどの事がない限り後れを取るようなことはありません」

「……マリアが調べてくれ分かったのだが、いま公国を支えてくれている孤児や平民出身の重臣、騎士、兵士の大半がエドアルドについていくと言っている。
 そのような状態では、とても今のような統治は不可能だ」

「確かに、私個人に忠誠を誓ってくれている者はいます。
 ですが、今は閑職にいますが、優秀な家臣は数多くいます。
 代々アウレリウス・ジェノバ公爵家に忠誠を尽くしてきた、譜代の家臣がいます。
 公爵家に寄生するような者は全て処分しました。
 今残っている者は、閑職に追いやられても、腐る事なく公爵家のために働き続ける忠義の臣でございます。
 彼らが公王陛下を支え、公国を繁栄させてくれます」

「そこまでやってくれていたのか、ありがとう、エドアルド。
 だが、今更このような事を申すのは身勝手極まりないと分かってはいるが、前言を翻して方針を変えたいのだが、できないであろうか」

「私を他国に婿入りさせる事なく、公国に残れと言う事でございますか」

「そうだ、無理か」

「正直難しいと言わざるをえません。
 国としての信用を著しく損なう事になってしまいます」

「そうか、だったら絶対にとは言わん。
 だが、この国の、いや、マリアの不利にならない範囲で、残れる策を考えてもらえないだろうか」

「承りました、マリアお嬢様に一番利があるように、安全を確保できる方法を最優先にさせていただきます」
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