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第一章
第76話:恩義・リアナ視点
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「ありがとう、ありがとうございます、聖王陛下。
この御恩は終生忘れません。
王太子にも王太孫にも、子々孫々忠誠を誓わせます」
グラハム王国のパトリック国王が頭を地につけんばかりに礼を言っています。
同じ王に対する態度とは思えない心からの感謝の気持ちです。
ですがもう老齢の王です。
普通なら約束した事など当てになりません。
次代の国王の心一つで簡単にひっくり返るモノです。
ですがこの国に関しては大丈夫でしょう。
四〇歳を軽く越えている王太子のウィリアム殿下も同じように頭を下げています。
二〇歳を越えている王太孫のデイヴィッド殿下も同じように頭を下げています。
グラハム王家は兄上様に三代は忠誠を誓う事でしょう。
「こんなに感謝していただければ治療した甲斐があります。
ただ一つだけ大きな問題があります。
モーガン王女は今日完璧に治りました。
その分今日から新たな人生が始まります。
色々な事を覚え体力もついてきます。
親身になって教え導く存在が必要になります。
しかしながら実の母である王妃殿下はすでに亡くなっておられるとか。
誰か適任の方はおられますか」
「おお、それは大丈夫でございます、聖王陛下。
モーガンが生まれた時から重大な病なのは分かっておりました。
私も亡き王妃も年を取ってから設けた子、後々の事を考えて乳母と傅役、薬師と侍女を選んでおります。
その者達は今日までよくモーガンの世話をしてくれております。
これからも変わらず親身になって世話をしてくれる事と思います」
「ではパトリック国王、その者達に会って今後の事を話したいのです。
これからのモーガン王女は、多くの若者と同じように動く事も考える事もできるようになります。
これまでのように全て臣下が御世話したのでは成長の妨げになります。
心を鬼にしてモーガン王女に頑張ってもらわなければならない事もあります。
その点について教えておきたいのです」
兄上様が本当に親切しています。
兄上様のお優しだとは分かっていますが、少々焼けます。
治療前のモーガン殿はお世辞にも美人とは言えませんでした。
ですが治療後のモーガン殿は、信じられないほど美しくなりました。
治療に関して嫉妬するなどいけない事だとは分かっています。
分かっていますが心穏やかではいられません。
「おお、おお、おお、ありがたい、本当に有難い。
直ぐに急いでここに来させますので、いえ、客室に参りましょう。
このままここに聖王陛下にいていただくのは失礼な事でした。
どうか、どうか、こちらに来てください」
老王が兄上様の手を取らんばかりに案内します。
聖王陛下ですか、兄上様に相応しい尊称ですね。
早速家臣達に使わせましょう。
この御恩は終生忘れません。
王太子にも王太孫にも、子々孫々忠誠を誓わせます」
グラハム王国のパトリック国王が頭を地につけんばかりに礼を言っています。
同じ王に対する態度とは思えない心からの感謝の気持ちです。
ですがもう老齢の王です。
普通なら約束した事など当てになりません。
次代の国王の心一つで簡単にひっくり返るモノです。
ですがこの国に関しては大丈夫でしょう。
四〇歳を軽く越えている王太子のウィリアム殿下も同じように頭を下げています。
二〇歳を越えている王太孫のデイヴィッド殿下も同じように頭を下げています。
グラハム王家は兄上様に三代は忠誠を誓う事でしょう。
「こんなに感謝していただければ治療した甲斐があります。
ただ一つだけ大きな問題があります。
モーガン王女は今日完璧に治りました。
その分今日から新たな人生が始まります。
色々な事を覚え体力もついてきます。
親身になって教え導く存在が必要になります。
しかしながら実の母である王妃殿下はすでに亡くなっておられるとか。
誰か適任の方はおられますか」
「おお、それは大丈夫でございます、聖王陛下。
モーガンが生まれた時から重大な病なのは分かっておりました。
私も亡き王妃も年を取ってから設けた子、後々の事を考えて乳母と傅役、薬師と侍女を選んでおります。
その者達は今日までよくモーガンの世話をしてくれております。
これからも変わらず親身になって世話をしてくれる事と思います」
「ではパトリック国王、その者達に会って今後の事を話したいのです。
これからのモーガン王女は、多くの若者と同じように動く事も考える事もできるようになります。
これまでのように全て臣下が御世話したのでは成長の妨げになります。
心を鬼にしてモーガン王女に頑張ってもらわなければならない事もあります。
その点について教えておきたいのです」
兄上様が本当に親切しています。
兄上様のお優しだとは分かっていますが、少々焼けます。
治療前のモーガン殿はお世辞にも美人とは言えませんでした。
ですが治療後のモーガン殿は、信じられないほど美しくなりました。
治療に関して嫉妬するなどいけない事だとは分かっています。
分かっていますが心穏やかではいられません。
「おお、おお、おお、ありがたい、本当に有難い。
直ぐに急いでここに来させますので、いえ、客室に参りましょう。
このままここに聖王陛下にいていただくのは失礼な事でした。
どうか、どうか、こちらに来てください」
老王が兄上様の手を取らんばかりに案内します。
聖王陛下ですか、兄上様に相応しい尊称ですね。
早速家臣達に使わせましょう。
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