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第一章

第33話:瀕死・ダーシィ戦闘侍女視点

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「兄上様、どうしたしましょう、デイビット王子が死にかけておられます。
 イニス王国の家臣達もいきり立っております。
 このままではラゼル公爵家とイニス王国の戦争になってしまいます」

 リアナ様がまるで自分が悪いように涙声になっています。
 ですがリアナ様が悪いわけではありません。
 全部紳士の礼儀をわきまえないデイビット王子が悪いのです。
 リアナ様が話し終えられるまでは、差し出がましい事はできませんが、リアナ様が話し終えられたら全てをぶちまけてやります。

「慌てなくてもいいよ、リアナ。
 戦わなければいけない時には、私が先頭に立って戦うから、何も心配いらない。
 それに、そもそも何の理由もなくデイビット王子にケガをさせるはずがない。
 リアナ自身がデイビット王子をケガさせるはずがないから、護衛のバロンか戦闘侍女のダーシィが、リアナを護るために仕方なくやったのだろう。
 ならばこちらに落ち度など全くない、むしろこちらから無礼を咎めて戦争をしかけるべきことだよ、リアナが気にする事でも心配する事でもないよ」

「でも、兄上様」

 キャメロン様の愛情と自信に満ちた言葉を受けて、リアナ様の緊張の糸が切れたのでしょう、さめざめと泣きだされました。
 流石はキャメロン様です、まるで見てこられたような洞察力です。
 外道のデイビット王子は、私達リアナ様の護衛や側近を無理矢理部屋から出して、リアナ様を手籠めにしようとしたのです。
 許し難い破廉恥ですが、それでもリアナ様は相手が王族なので争いにならないように、やんわりとお断りしていたのに、それをあの腐れ外道わ!

「ダーシィ、もうリアナの直臣になった君に命令するのは筋違いなのだが、君にリアナの名誉を護る重大な役目を任せたいのだが、受けてくれるかね」

 キャメロン様のお言葉に無意識に背筋の伸びました。
 どのような役目を与えられるか、だいたい想像がつきます。
 緊張で震えだしそうな身体を、日々の鍛錬で鍛えた身体と精神力で抑え込みます。
 予測されるあまりの大役に、怖気付きそうになる心を叱咤激励して、返事が震えないよう気合を入れます。

「はい、覚悟はできております」

「では、今回デイビット王子がリアナに恥知らずな暴行を行おうとした事を正式に非難し、ロスリン侯爵から正式な宣戦布告を行ってくれ。
 今この城に滞在している全ての王侯貴族にも、同様の宣言を行ってくれ。
 リアナはデイビット王子の襲われそうになったのが心労となり、病の床に伏しているとも伝えてくれ。
 ダーシィにはバロンを八頭つけるから、そのうちに四頭をイニス王国に送り込み、全ての王侯貴族を根絶やしにすると宣言してきてくれ」

 キャメロン様は冷静に淡々と話しておられますが、御心に怒りの炎が燃え盛っているのが見えるようです。
 よほど性根を据えて詫びなければ、イニス王国は滅びることになります。
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