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第一章

第27話:マライーニ王家の凋落

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 食糧高騰が始まって一カ月、マライーニ王家は民の信用を完全に失ってしまった。
 これまで中産階級と表現できた王都の土地所有者が、高騰する食糧を購入できなくなり、土地や家財を売り払わなければいけない状態となり、ついに暴動を起こした。
 王都駐留の騎士団や徒士団が直ぐに鎮圧したが、民と王家の関係は最悪の状態となり、王家のために命懸けで戦おうとする民はほとんどいないだろう。

「兄上様、このままでは王都の民が飢え死にしてしまいます。
 助けてやる事はできないのですか」

 リアナが目に一杯の涙を貯めながら訴えてくる。
 俺とリアナは王都にいるのだが、王家は全く手だししてこない。
 俺とリアナが自由に領地との間を移動している事を知っているので、王国軍で奇襲をかけても無駄だと分かっているのだ。
 そんな事をしてもマライーニ王家の国際的な評判が低下するだけで、無意味だという事くらいは分かるようだ。

「できない事はないけど、リアナに表に出てもらうことになる。
 今までのように私が庇ってあげられなくなる。
 リアナを利用しようとするモノたち、特に獣のような色目を使ってくるモノたち相手に、真っ向から立ち向かってもらうことになる。
 時にはそんなモノを叩き潰して殺さなければいけない事もあるだろう。
 その覚悟がリアナにあるのかい」

「ございます、大丈夫でございます。
 私も色々と思う所があり、お兄様とは呼ばず、兄上様と呼ぶようにしてきました。
 これが私の兄上様に頼り切らない覚悟でございます」

 確かに最近のリアナは、お兄様ではなく兄上様と呼ぶようになっていた。
 少々寂しく思っていたが、女の子の成長は早いし、ラゼル公爵家の令嬢リアナではなく、貴族家の当主として扱われることが多くなったせいだと思っていた。
 兄離れの決意だとは思ってもいなかった。
 これほどのショックを受けるとは、自分でも意外だし正直情けない。
 リアナには少しでも早く一人前になって欲しいと思っていたはずなのに。

「分かった、では王都で大々的な移民の募集を行おう。
 矢面に立つのはロスリン侯爵のリアナになる。
 民からは全く認められていないが、王侯貴族や大商人は徐々にルナネを聖女だと認め称える始めているから、それを叩き潰してマライーニ王家の追及を防ぐ。
 余計な戦争を引き起こして、民を苦しめるわけにはいかないからね」

 何も準備をせずに移民を募集して王都の民をロスリン侯爵に移動させようとしたら、マライーニ王家は必ず邪魔しようとするだろう。
 今回の食糧高騰には、穀物を扱う大商人だけではなく奴隷商人も加わっていて、王都の民を奴隷に落として売り払おうとしている。
 彼らから賄賂を受け取っているサリー王妃は、軍を動員してでも邪魔をしてくる。
 そいリアナに説明して、俺が事前に整えていた準備の仕上げをする事にした。
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