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第一章

第11話:戴冠と常冠

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 翌月の原石競売会前に、俺は国王と王妃に呼び出された。
 国王も切り出しで継ぎ目のない王冠が欲しいというのだ。
 結局ここでも激しい交渉があって、今回は日常的に使用する王冠用の原石を献上して、来月に戴冠式に使う特別な王冠用の原石を献上することになった。
 ししてその度に陞爵させる約束を取り付けた。
 口約束だが、今後も献上品が欲しい国王と王妃が約束を破る事はないだろう。

「うむ、見事なモノだな、本当に来月にはこれ以上の物を献上できるのだな」

 国王は結構疑い深い性格のようだが、それも仕方がない。
 俺は自由自在に原石を創り出せるが、普通は自然の産物だ。
 創り出せる事は絶対の秘密だから、適当な嘘が必要になる。

「絶対とは申し上げれませんが、私は発見した鉱山には、大きな宝石の鉱床が存在しますので、まず大丈夫だと思われます。
 ですが急いで掘りだそうとすると原石に傷をつけてしまいます。
 熟練の職人に、慎重に上から順番に掘り出させなければいけません。
 時に順序が逆になったり、遅れたりする事があるかもしれませんが、時をいただければ献上は可能でございます」

 国王が少し安心したような表情になった。
 よほど切り出しで継ぎ目のない戴冠式用の王冠が欲しのだろう。
 もう自分が戴冠式に使う事はないから、カミーユ王太子への愛なのかもしれない。
 少し焦らして、先にカミーユ王太子用の常冠を献上した方がいいのだろう。
 基本爵位と領地の広さや人口は関係ないが、開拓の成功で叙爵される場合にはある程度の基準があるから、その点も使って陞爵させる。

「それと陛下、ポルワース男爵領の開拓が進み、軒数が一万軒を超え、人口も一万二千人を超えました。
 これは王家の子爵陞爵基準を満たしております。
 ラゼル子爵位をラゼル伯爵位に陞爵するだけでなく、ポルワース男爵位をポルワース子爵位としていただきたいのです」

 この願いが聞き届けられたら、ラゼル公爵家の従属爵位は以前と同じになるから、両親に文句を言われる筋合いはなくなる。
 リアナをラゼル公爵家から切り離して、ゴードン女侯爵にする事も可能だ。
 カミーユ王太子がルナネ聖女に誑かされる兆候が見えたら、早々に婚約を解消させて、ゴードン侯爵位でもラゼル侯爵位でもいいから、侯爵位を継承させればいい。
 リアナが女侯爵となったら、婚約解消の傷があっても求婚者がいるだろう。
 それよりも、偽装結婚させて好きな男と愛し合えるようにしてやった方がいいか。
 いや、俺がずっと護ってやればいいことだ。

「ラゼル公爵家の従属爵位」
一:ラゼル侯爵・ラゼル伯爵・ラゼル子爵
二:ラゼル侯爵・ラゼル子爵・ヘプバーン男爵・スコット男爵
三:ラゼル侯爵・ラゼル伯爵・ヘプバーン男爵・スコット男爵
「キャメロン所有の爵位」
一:ゴードン侯爵・ポルワース男爵・ロロ男爵
二:ゴードン侯爵・ポルワース子爵・ロロ男爵
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