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第一章

7話第三者視点

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「待て、ランドン。
 一つだけ確認しておきたい。
 魔獣の大暴走が近いのだな」

「はい、ケイデン殿下」

 今まで黙っていた、第二王子のケイデンが口を挟んだ。
 余程の覚悟なのだろう。
 引き締まった表情で、真直ぐにランドンの眼を見ている。
 魔眼とも言えるランドンの眼を見ても怯んでいない。

「ならば鉱山はどうなっている。
 手を付けていないのではないか?」

「はい。
 今は魔獣対策で手一杯でございます。
 今鉱山に人手を割いても、大暴走までに武器にする事はできません。
 今はできるだけ早く武具を完成させなければなりません。
 先の暴走で狩った魔獣の素材を武器化するだけで精一杯です」

「ならば、鉱山を独占したいわけではないのだな。
 先の使者は、資金援助も物資援助も断ってきたが、私利私欲で鉱山を独占する訳ではないのだな?」

「そのような気は全くございません。
 資金援助ができないのは、大暴走に備えて資金の全てを投入しているからです。
 物資援助ができないのも同じです。
 使者の言葉足らずを謝らせていただきます」

「嘘だ!
 全て嘘だ!
 コックス辺境伯は謀叛を企んでいるのだ!
 ギーターボック王国と内通しているのだ!」

「兄上は黙っていてください!
 では、王家や諸侯が、採掘した鉱物の半分を収めるから、三鉱山を採掘させて欲しいと言ったら、コックス辺境伯は認めてくれるのか?」

「それは私がお答えさせていただきます。
 コックス辺境伯令嬢キャロラインの名に誓って御約束したします。
 人手を出して頂けるのなら、三鉱山の共同開発を御約束いたします」

「嘘だ!
 全て嘘だ!
 この場限りの口約束だ!
 キャロラインを無事に帰したら、ギーターボック王国と協力して挟撃を謀るぞ。
 この場でキャロラインを人質にするのだ!」

「愚かな事を申されるな!
 魔獣の事はコックス辺境伯家が誰より一番知っているのだ。
 その言葉を信じなくて何が主君か!
 三鉱山の共同開発を認めてくれるのなら、王家も貴族家も助かるのですぞ。
 それを女の色香に迷い、血迷ったことを申されるな!」

「弟の分際で生意気な!
 斬れ、ケイデンを斬れ!
 今日から余が王だ!
 父上には隠居して頂く。
 ケイデンを斬ってキャロラインを人質にしろ!
 恩賞は望みのままぞ!」

 馬鹿でした。
 完全な自滅です。
 一部の騎士と貴族が動きかけましたが、大半が動かないので思いとどまりました。

「おのれ、死ね」

 王太子がケイデンに斬りかかりました。
 剣技とも言えない無様な動きですが、剣には猛毒が塗られていました。
 剣が僅かでもケイデンに触れたら、即死してしまいます。
 
「謀叛人、死ね!」
 
 あわやと言う時に、ランドンとグレイスが割って入り、王太子とエミリアを四つに斬り分けました。
 上段で真っ二つに斬った返す刀で、胴を上下に両断したのです。
 余りに激烈な剣技に、謁見の間は水を打ったように静まりました。
 この場にいる誰もが、ランドンとグレイスだけは敵にしたくないと思いました。

 後の話は簡単でした。
 全ての罪を王太子とエミリアが被り、トライオン伯爵家は謹慎だけで済みました。
 全ての領地から、コックス辺境伯領に出稼ぎの人間が入りました。
 コックス辺境伯は戦力の全てを大暴走に備える事だ出来るようになりました。
 魔獣の大暴走の話は別の機会に。
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