上 下
8 / 37
第一章

第2話:検証実験

しおりを挟む
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年1月1日・ロディー視点
ロディー15歳

 農民スキルしか得られなかった俺は、もうトラースト公爵家の者ではないようで、王都の公爵邸には入れてもらえなかった。
 家臣や上級使用人は公爵邸内に部屋をもらっているのに、俺は下級使用人の中でも最底辺の者が住む小屋に押し込められた。

「ロディー様、大丈夫でございますか?」
「このような物しかございませんが、お食べになられますか?」
「料理長が隙を見て食事を届けてくれるとの事でございます」

 これまで家臣や使用人に傍若無人に振舞っていたら、俺が一族扱いされなくなったとたん、密かに殺されていたかもしれない。
 だが俺は馬鹿ではないので、こんな時の為に普段から家臣や使用人を大切にしていたので、色々と親切にしてもらえるのだ。

「ありがとう、助かるよ。
 でも無理はしないでくれ、俺のために君たちが叱られると胸が痛む。
 ああ、ただこれからの為に少し試したい事があるから、屋敷の畑を使わせてくれ」

 普段の行いのお陰で、すんなりと畑を貸してもらえた。
 万が一公爵家が王都屋敷で籠城する事を考えて、敷地の中には畑がある。
 だがこの時代の畑は三圃式農法なので、三分の一が休耕地になっている。
 その休耕地に鍬を入れて、農民スキルでどれくらい耕せるか試すのだ。

「ほう、魔力で鍬を発現できるのか」

 思わず口に出してしまうほど驚いた。
 武術系スキルは魔力で武器を発現できるので、同じように魔力で農具を発現できるのかどうか試したのだが、同じようにできた。
 前世のアニメやラノベの知識がどれくらい応用できるか試してみた。

 鍬や鋤はもちろん、農薬をまくジョウロまで魔力で発現できた。
 剣や槍や弓は無理だが、剣鉈や斧を発現させる事ができる。
 最悪の場合は魔力剣鉈や魔力斧で戦う事ができる。
 生れてからこれまで色々と試してきたが、これは新しい発見だ。

 神与スキルは無限にレベルアップできる。
 だが一般スキルはレベル9までの制限がある。
 だがレベル9までなら覚える事ができるのだ。
 だから俺は公爵家長男の立場を活用して覚えられる限りのスキルを学んでいた。

「さて、アニメやラノベのように、農具を大きくできるかな?」

 俺は今まで思い描いていた鍬を10倍の大きさで想像してみた。
 発現している鍬の大きさが10倍になった。
 鍬を振るうと10倍の広さの土を耕す事ができた。
 消耗する魔力も10倍になったが、大した問題ではない。

「魔力を蓄えていてよかった」

 俺は前世の知識を活用して魔力を蓄えていた。
 東洋医学の経絡経穴とアーユルヴェーダと西洋医学に知識を活用した。
 食べた物を消化器で吸収して体内に取り込み、経絡経穴に流して魔力にする。
 創り出した莫大な魔力は亜空間化した魔力器官に蓄えてある。

「あるラノベでは、想像するだけで種蒔きができていたよな」

 俺は新たに耕す土地で小麦を育てたいとか陸稲を育てたいとか考えた。
 この世界にない、とても甘くて美味しイチゴを育てたいとも考えた。
 成功したか失敗したかは、不思議と感覚で分かった。
 何故か魔力が消費される時の感じで分かるのだ。

「品種改良もできるのだろうか?」

 俺が食べていた米は水田で作られたものだ。
 畑で同じ物が育つとは思えない。
 この世界でも育つ品種に改良しなければいけない。
 だから、この世界でも育つ品種改良がされていると考えて鍬をふるった。

「ロディー様、料理長が食事を運んできてくださいました」

 2時間ほど畑で試行錯誤していると、下級使用人の1人が呼びに来てくれた。
 料理長が祖父と祖母の目を盗んで用意してくれた食事を無駄にはできない。
 亜空間化した肝臓に栄養分を蓄えているから、1年や2年食べなくても平気だが、他人の思いやりを無駄にするような冷血漢ではない。

「ありがとう、食べさせてもらうよ」

 そう返事をした時に思いついた事がある。
 この世界の魔力は神与スキルがないと外部に放出できない。
 だが、体内でならいくらでも作り活用する事ができた。
 だったら脳内にだけステータス画面を表示できるのではないか?

「脳内ステータス画面オープン」

 やれてしまった。
 脳内に自分のステータスを表示する事ができた。
 朝王城で表示されたステータスと、農民スキルを使って実際に農業をした後のステータスがどれくらい違うのか?

『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民・レベル1
 付属スキル:耕種農業レベル1
         耕作  レベル29
         種蒔き レベル19
         品種改良レベル10
         剣鉈術 レベル9
         戦斧術 レベル9
 一般スキル:戦闘術レベル9
        剣術 レベル9
        槍術 レベル9
        戦斧術レベル9
        弓術 レベル9
        石弓術レベル9
        拳術 レベル9
        脚術 レベル9
        柔術 レベル9
        戦術 レベル9
        馬術 レベル9
        調教術レベル9
      :魔術
      :生産術レベル9
        木工 レベル9
        絵画 レベル9
        習字 レベル9
        算術 レベル9
        料理 レベル9
        刺繍 レベル9
        裁縫 レベル9
        大工 レベル9
        石工 レベル9

「基本能力」
HP:    298
魔力:1823874
命力:1198327
筋力:    295  
体力:    293 
知性:  10087  
精神:   4582  
速力:    296
器用:    290
運 :    293
魅力:    290
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

1000億円の遺産があります、異世界に

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。 19話10万字の完結作です。 『異世界で人生やり直し』 佐藤直太朗は夢の中で見ず知らずに金髪老女に話しかけられた。 とんでもなく居丈高な態度で、普通の人間なら聞く気になれない話し方だった。 しかも異世界に千億もの遺産があると言う荒唐無稽な話だった。 普通の人間なら絶対に信じない話だ。 それでなくても弟と手を組んだ伯母に陥れられた直太朗は人間不信となっていた。 だから完全拒否の態度で応答した。 その態度に苛立った金髪に老女は、強硬手段に出た。 無理矢理直太朗を異世界に召喚したのだった。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

処理中です...