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第一章
第1話:婚約破棄
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帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年1月1日・ロディー視点
ロディー15歳
王城で1番広い謁見の間に多くの王侯貴族が集まっている。
俺を含めた、昨年15歳になった王侯貴族の子弟が最前列だ。
俺以外の連中は緊張に青くなっている。
中には震えている者すらいる。
「マーガデール男爵家三男、ジョン、前にでろ」
大神官が1番序列の低い貴族、男爵家の子供を呼ぶ。
床、天井、四方の壁に刻まれた魔法陣を使って神与スキルを鑑定するのだ。
この広い謁見の間はそのためだけにあると言っていい。
「はっ、い」
とてつもなく緊張しているのか、まともな返事ができていない。
まあ、マーガデール男爵家の現状を考えれば仕方がない。
長男も次男も武術系のスキルが得られなくて、最前線送りになって死んだ。
最後の男子であるジョンが武術系スキルを得られなければ男系直系が絶える。
「ジョンの神与スキルは農民だ!」
ザワザワザワザワ
「騒ぐな、神の思し召しだぞ、静かにしろ」
マクシミヌス王が私語をする王侯貴族を注意した。
もう何十年も行われている大切な選別の儀だ。
下級貴族の後継者がいなくなるからと言って騒ぐほどの事でもない。
王家唯一の後継者である王太女が、武術系スキルを得られないくらいでないと、騒ぐ価値などない。
★★★★★★
「トラースト公爵家長男、ロディー、前にでろ」
いよいよ俺の番だ。
「はい!」
これまでの鑑定結果は、例年通り10人に1人くらいが武術系スキルを得ている。
「ロディーの神与スキルは農民だ」
ザワザワザワザワ
「なんてことなの、私に恥をかかせるなんて!
なにが神童よ!
なにが100年に1人の逸材よ!
軍師や将軍どころか、剣士や槍士ですらないじゃないの!
破棄よ、農民などと婚約していられないわ!
このような下民との婚約は破棄よ!」
俺の婚約者であるフランチェスカ王太女が悪口雑言の限りをつくしている。
母親と同じで品性の欠片もない。
長らく子供に恵まれなかった国王マクシミヌス4世が、身分に関係なく国中から女性を集めて連日連夜子作りに励み、48歳にして初めて恵まれた王太女だ。
「なにを騒いでおるのだ、フランチェスカ。
そのようにはしたなく騒がなくても、武術系スキルを得られなかった王侯貴族の子弟は、最前線送りになると決まっておる」
口では王太女をたしなめているが、その表情を見れば愛情にあふれている。
そんな調子で、来年王太女が武術スキル以外を神与されたどうする気だ?
王家王国の定めた法律通り、王太女を最前線送りにできるのか?
不正をしようとしても無理だぞ。
「そうだな、トラースト公爵」
国王が俺の祖父に言葉をかけた。
武術系スキルを神与された王族の中で、国王以外で唯一生き残った者。
王位争いによる内乱と武術系スキルを得られなかった者を粛清してきた結果だ。
「はい、王侯貴族が武術系スキルを得ていなければいけないのは当然の事です。
農民のような恥ずべきスキルを神与されたロディーが、王太女殿下の婚約者であったはずがありません。
王太女殿下の婚約者は最初からルキウスでした」
トラースト公爵が俺と王太女の婚約など最初からなかったと言い切った。
そのトラースト公爵は俺の祖父で国王の弟になる。
だから、俺から見れば国王は大伯父にあたるが、肉親の情など一切ない。
「そうか、わかっているのならそれでよい。
では、神与の儀式はこれで終わる」
「お待ちください、国王陛下。
とても大切な事を決めておかなければなりません。
そうでなければ、アルテリア王国が滅びかねません」
神与の儀式を終わらせようとしていた国王を祖父が制止した。
愚かな者なら、孫である俺の減刑を頼むと思うだろう。
私語を始めた貴族連中は、そう思っているのだろう。
だが、バリバリの武闘派である祖父が俺の減刑を頼むはずがない。
「なんだ、余は忙しいのだ」
「分かっていて誤魔化すのは止めていただきたい。
フランチェスカ王太女殿下が、武術系スキルを神与されなかった時の事を、今のうちに話し合っておかなければいけません。
国王陛下が神殿に圧力をかけている事、多くの貴族が知っているのですぞ!」
ありゃりゃ、祖父の忠誠心にも困ったモノだ。
黙って国王に不正をさせて、殺してしまえば自分が王になれるものを。
王城に多くの密偵を送り込んでいる事を教えたら、大切な手駒を殺されるぞ。
「トラースト公爵、余が神殿に圧力をかけて、神与の儀式で不正をしようとしていると言うのか!」
いや、圧力をかけていた事も、今誤魔化そうとしている事なんてバレバレだから。
「はい、多くの神官から助けを求める声が届いております。
私だけでなく、多くの貴族家にも届いている事を知っておられるのですか?」
あちゃあ、そんな事を口にしたら、自分まで貴族たちの信望を失うぞ。
それでなくても、さっきの言葉で密偵狩りが行われて、貴族家が送り込んでいた密偵まで一緒に殺されるのが理解できないのか?
「……神官のたわ言を、王である余の言葉よりも信じると言うのか!」
いや、もう国王に信望など残っていないから。
国王が子供を得るために女狩りをしたせいで、多くの貴族が後継者を生ませられないだけでなく、食糧を生産する農家まで後継者が激減しているから。
「国王陛下がフランチェスカ王太女殿下を溺愛されている事は、王侯貴族だけでなく国中も者が知っております。
そのフランチェスカ王太女殿下を助けるためなら、どのような手段でも使うであろうことは、簡単に想像できる事です」
「……余は馬鹿ではない。
これまで多くの王侯貴族が神与の儀式に従って、可愛い子や孫を死地に送ってきた事くらい理解しておる。
不正を行ってフランチェスカを助けようとすれば、全ての貴族を敵に回し、トラースト公爵が王位に就く事くらい分かっておる」
いや、馬鹿だから、今までの言動から馬鹿だとしか思えないから。
もし俺が国王なら、武術系スキル偏重の国法を改正するから。
いきなりだと反感を生むから、後継者だけは武術系スキル必須を続けるけど、それ以外のスキルを得た者を実質死刑の最前線送りにはしないから。
「分かっていただいていればいいのです。
私も息子も陛下に刃を突き立て首を刎ねたくはございませんから」
まあ、いい、庶民として平凡に生きた前世の記憶と知識のある俺には、国民の生命と財産を背負うような覚悟などないから。
事前に準備しておいたように、さっさと逃げだして自由に生きるから。
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民・レベル1
一般スキル:戦闘術レベル9
剣術 レベル9
槍術 レベル9
戦斧術レベル9
弓術 レベル9
石弓術レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル9
調教術レベル9
:魔術
:生産術レベル9
木工 レベル9
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル9
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル9
石工 レベル9
「基本能力」
HP: 95
魔力:1823874
命力:1198327
筋力: 92
体力: 91
知性: 10087
精神: 4582
速力: 97
器用: 90
運 : 94
魅力: 90
ロディー15歳
王城で1番広い謁見の間に多くの王侯貴族が集まっている。
俺を含めた、昨年15歳になった王侯貴族の子弟が最前列だ。
俺以外の連中は緊張に青くなっている。
中には震えている者すらいる。
「マーガデール男爵家三男、ジョン、前にでろ」
大神官が1番序列の低い貴族、男爵家の子供を呼ぶ。
床、天井、四方の壁に刻まれた魔法陣を使って神与スキルを鑑定するのだ。
この広い謁見の間はそのためだけにあると言っていい。
「はっ、い」
とてつもなく緊張しているのか、まともな返事ができていない。
まあ、マーガデール男爵家の現状を考えれば仕方がない。
長男も次男も武術系のスキルが得られなくて、最前線送りになって死んだ。
最後の男子であるジョンが武術系スキルを得られなければ男系直系が絶える。
「ジョンの神与スキルは農民だ!」
ザワザワザワザワ
「騒ぐな、神の思し召しだぞ、静かにしろ」
マクシミヌス王が私語をする王侯貴族を注意した。
もう何十年も行われている大切な選別の儀だ。
下級貴族の後継者がいなくなるからと言って騒ぐほどの事でもない。
王家唯一の後継者である王太女が、武術系スキルを得られないくらいでないと、騒ぐ価値などない。
★★★★★★
「トラースト公爵家長男、ロディー、前にでろ」
いよいよ俺の番だ。
「はい!」
これまでの鑑定結果は、例年通り10人に1人くらいが武術系スキルを得ている。
「ロディーの神与スキルは農民だ」
ザワザワザワザワ
「なんてことなの、私に恥をかかせるなんて!
なにが神童よ!
なにが100年に1人の逸材よ!
軍師や将軍どころか、剣士や槍士ですらないじゃないの!
破棄よ、農民などと婚約していられないわ!
このような下民との婚約は破棄よ!」
俺の婚約者であるフランチェスカ王太女が悪口雑言の限りをつくしている。
母親と同じで品性の欠片もない。
長らく子供に恵まれなかった国王マクシミヌス4世が、身分に関係なく国中から女性を集めて連日連夜子作りに励み、48歳にして初めて恵まれた王太女だ。
「なにを騒いでおるのだ、フランチェスカ。
そのようにはしたなく騒がなくても、武術系スキルを得られなかった王侯貴族の子弟は、最前線送りになると決まっておる」
口では王太女をたしなめているが、その表情を見れば愛情にあふれている。
そんな調子で、来年王太女が武術スキル以外を神与されたどうする気だ?
王家王国の定めた法律通り、王太女を最前線送りにできるのか?
不正をしようとしても無理だぞ。
「そうだな、トラースト公爵」
国王が俺の祖父に言葉をかけた。
武術系スキルを神与された王族の中で、国王以外で唯一生き残った者。
王位争いによる内乱と武術系スキルを得られなかった者を粛清してきた結果だ。
「はい、王侯貴族が武術系スキルを得ていなければいけないのは当然の事です。
農民のような恥ずべきスキルを神与されたロディーが、王太女殿下の婚約者であったはずがありません。
王太女殿下の婚約者は最初からルキウスでした」
トラースト公爵が俺と王太女の婚約など最初からなかったと言い切った。
そのトラースト公爵は俺の祖父で国王の弟になる。
だから、俺から見れば国王は大伯父にあたるが、肉親の情など一切ない。
「そうか、わかっているのならそれでよい。
では、神与の儀式はこれで終わる」
「お待ちください、国王陛下。
とても大切な事を決めておかなければなりません。
そうでなければ、アルテリア王国が滅びかねません」
神与の儀式を終わらせようとしていた国王を祖父が制止した。
愚かな者なら、孫である俺の減刑を頼むと思うだろう。
私語を始めた貴族連中は、そう思っているのだろう。
だが、バリバリの武闘派である祖父が俺の減刑を頼むはずがない。
「なんだ、余は忙しいのだ」
「分かっていて誤魔化すのは止めていただきたい。
フランチェスカ王太女殿下が、武術系スキルを神与されなかった時の事を、今のうちに話し合っておかなければいけません。
国王陛下が神殿に圧力をかけている事、多くの貴族が知っているのですぞ!」
ありゃりゃ、祖父の忠誠心にも困ったモノだ。
黙って国王に不正をさせて、殺してしまえば自分が王になれるものを。
王城に多くの密偵を送り込んでいる事を教えたら、大切な手駒を殺されるぞ。
「トラースト公爵、余が神殿に圧力をかけて、神与の儀式で不正をしようとしていると言うのか!」
いや、圧力をかけていた事も、今誤魔化そうとしている事なんてバレバレだから。
「はい、多くの神官から助けを求める声が届いております。
私だけでなく、多くの貴族家にも届いている事を知っておられるのですか?」
あちゃあ、そんな事を口にしたら、自分まで貴族たちの信望を失うぞ。
それでなくても、さっきの言葉で密偵狩りが行われて、貴族家が送り込んでいた密偵まで一緒に殺されるのが理解できないのか?
「……神官のたわ言を、王である余の言葉よりも信じると言うのか!」
いや、もう国王に信望など残っていないから。
国王が子供を得るために女狩りをしたせいで、多くの貴族が後継者を生ませられないだけでなく、食糧を生産する農家まで後継者が激減しているから。
「国王陛下がフランチェスカ王太女殿下を溺愛されている事は、王侯貴族だけでなく国中も者が知っております。
そのフランチェスカ王太女殿下を助けるためなら、どのような手段でも使うであろうことは、簡単に想像できる事です」
「……余は馬鹿ではない。
これまで多くの王侯貴族が神与の儀式に従って、可愛い子や孫を死地に送ってきた事くらい理解しておる。
不正を行ってフランチェスカを助けようとすれば、全ての貴族を敵に回し、トラースト公爵が王位に就く事くらい分かっておる」
いや、馬鹿だから、今までの言動から馬鹿だとしか思えないから。
もし俺が国王なら、武術系スキル偏重の国法を改正するから。
いきなりだと反感を生むから、後継者だけは武術系スキル必須を続けるけど、それ以外のスキルを得た者を実質死刑の最前線送りにはしないから。
「分かっていただいていればいいのです。
私も息子も陛下に刃を突き立て首を刎ねたくはございませんから」
まあ、いい、庶民として平凡に生きた前世の記憶と知識のある俺には、国民の生命と財産を背負うような覚悟などないから。
事前に準備しておいたように、さっさと逃げだして自由に生きるから。
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民・レベル1
一般スキル:戦闘術レベル9
剣術 レベル9
槍術 レベル9
戦斧術レベル9
弓術 レベル9
石弓術レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル9
調教術レベル9
:魔術
:生産術レベル9
木工 レベル9
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル9
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル9
石工 レベル9
「基本能力」
HP: 95
魔力:1823874
命力:1198327
筋力: 92
体力: 91
知性: 10087
精神: 4582
速力: 97
器用: 90
運 : 94
魅力: 90
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