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征夷大将軍

第220話:一八四四年、冬季戦は避けて。

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 徳川軍は冬季戦にも備えてはいたが、無理をさせる気は最初からなかった。
 ナポレオンやヒットラーの失敗を知っていて無理するのは愚者でしかない。
 十分な補給を行った上で、占領した都市で厳冬期を過ごさせることにしていた。
 オスマン帝国もナポレオンの失敗は知っていたのだろう。
 俺の諫言に従ってウィーン包囲を解き占領都市で越冬することになった。

 積雪が多く冬の厳しい場所は自然休戦となったが、問題はそれなりの雪が降り寒さも厳しいのだが、十分な補給があれば無理せず戦争を続けられる場所だった。
 それがジブラルタル海峡戦線とペルシア帝国戦線だった。
 スペインとモロッコのジブラルタル海峡戦線と、ペルシア帝国戦線が激しい戦いとなっていたが、エミエー銃と砲車を装備した徳川軍が連戦連勝をしていた。
 特に腐敗したペルシア帝国は、自分達が奇襲に成功して無人の野を行くように侵攻している心算が、鉄壁の包囲を受けて壊滅的な損害を受けていた。

 異教徒という理由で破壊と略奪、殺戮と凌辱を目的に集まったペルシア帝国の貴族や士族兵士が相手だ、手加減する必要など全くなかった。
 こちらが想定していた戦場に誘い込んだのだ。
 大砲や大筒、大型火箭やエミエー銃の十字砲火を受けることになった。
 こちらとしては何時蜂起するか分からない捕虜などできれば取りたくない。
 総大将が降伏の合図を出す前にできるだけ殺しておきたかった。
 
 ペルシア帝国軍二十万をほぼ皆殺しにできた。
 宣戦布告もせずに侵攻してくるような奴らにかける情けなどない。
 生き残った連中も大半が戦争神経症になっている。
 後は戦力が激減したペルシア帝国を攻め滅ぼすだけだ。
 モハンマド・シャーが降伏して亡命したいというのなら、イギリスのインドに亡命させてインド侵攻の大義名分にさせてもらう。

 ペルシア帝国に敗れたイスマーイール派のアーガー・ハーン一世はインドに逃亡して莫大な富を得て力を回復させている。
 モハンマド・シャーが同じようにインドに逃亡する可能性は非常に高い。

 徳川軍がペルシア帝国を滅ぼし勝てる事は確実だ。
 問題は勝った後でどのように統治していくかだ。
 北アメリカのネイティブの時と同じように、部族や宗教によって自治村や自治藩を設けて内部争いをさせない事だ。

 資金援助をして内部闘争をさせたイスマーイール派とバーブ教徒と優遇しなければいけないが、だからといってあまり優遇し過ぎるとイスラム教シーア派十二イマーム派との争いになってしまう。
 彼らが争う事のないように、自治村や自治藩の間には徳川家の直轄領や三百諸侯や幕臣の領地を挟まなければいけない。
 単に戦って勝つよりも後々の統治の方が難しい。
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