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征東大将軍

第169話:一八三八年、予言の念押し

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 昨年の正月に予言をしていた三つの火事を再び注意した。

 天保九年の大坂伊達町の大火「伊達町焼」
 長崎天保九年の長崎小川町の大火。
 天保九年江戸日本橋小田原町の大火。

 皆で注意していれば大火が防げるのは分かっていた。
 問題は油断や謀略だが、尾張徳川家の処分を見れば誰も馬鹿な真似はしない。
 それにもう歴史も大きく変わっている。
 天保の凶作は作付けする穀物を変えたので不作ですんだ。
 食糧輸入を行い各藩に支援を行う事で、天保の大飢饉は起きていない。

 大塩平八郎は俺が抜擢して松前藩に取り込んだから、大塩平八郎の乱が起きず「大塩焼け」と呼ばれる兵火が大阪で起きる事もない。

 だがそれを喜んでいるだけでは征東大将軍の責任は果たせない。
 世界各地で松前藩士たちが戦ってくれているのだ。
 今この時も死傷する藩士がいるのだ。
 なのに俺は鉄砲玉の飛んでこない日本でぬくぬくとしているのだ。
 安全な場所にいる分、やれることを精一杯しなければいけない。

 冬だから雪で身動きの取れない所では訓練と生産に力を入れてもらう。
 だが雪の少ない地方では出征の準備をしてもらわなければいけない。
 いや、参戦を希望した西日本諸藩にはアメリカに渡ってもらう。
 艦艇の建造は順調に進んでいる。
 海軍将兵も士官さえ経験豊富な者を付ければ遭難する事もない。

 問題は航路どうするかだった。
 今までは夏場にアリューシャン列島沿いに航海していた。
 だが海軍士官が育ち航海術が上達してきたのなら、ハワイ航路を使いたい。
 少しでも早くアメリカに着くためなら補給なして西海岸に向かえばいい。

 だがそれはあまりに無謀だから、伊豆諸島から小笠原諸島を抜け、南鳥島、ウェーク島、ミッドウェー島、ハワイ諸島を経由してアメリカに行くべきだろう。
 南鳥島、ウェーク島、ミッドウェー島の領有を主張するには実績も必要だ。
 ハワイを松前藩に併合する気はないが、白人に取られるのは嫌だ。
 キリスト教化を止められるのなら止める。
 それが無理ならせめて白人の移民を制限する。

 それと北米の状況がこのまま有利に推移するのなら、更に領土を切り取る。
 メキシコがこのまま無抵抗でいるのなら、カリフォルニア半島を併合する。
 将来の漁業資源を考えればどうしても欲しい。
 それと西シエラマドレ山脈の東側、カルフォルニア湾沿岸を占領したい。
 カリフォルニア湾を完全に内湾内海にできるなら、絶好の海軍根拠地にできる。
 もう俺は完全な領土欲に燃えた侵略者だな。

 なら侵略者らしく欲深く行こう。
 アラスカとカルフォルニア共和国を陸路で行き来できるように、英領北アメリカ、将来のカナダを切り取る。
 カナダのユニコーン州とブリティッシュコロンビア州を切り取る。
 いや、白人の決めた境界線で決めてはいけないない。
 ネイティブの意見と河川や山脈を考慮して攻め取る場所を決めよう。

 だが一応の目標は定めておいた方がいいな。
 最低目標は海岸線の完全確保だ。
 最大目標はマッケンジー川とアサバスカ川より東の確保だな。
 さて、どこまでやれるかどうか。
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