144 / 238
征東大将軍
第144話:一八三六年、予言ではなく打ち明け
しおりを挟む
今年も予言は何もなかった。
俺の記憶にある前世の災害は一八三八年だから来年話せばいい。
それよりも今年はもっと大事な事を三百諸侯に話さなければいけない。
何より征夷大将軍の徳川家慶に今の世界情勢を話さなければいけない。
病で昨年末に祖父が亡くなり、俺を護る大きな力が一つなくなった。
それによって覚悟が定まったという点が大きい。
祖父の晩年の暴走には色々と悩まされたが、そのお陰で思いがけない有利な状況が生まれているのは間違いない。
亡き祖父の想いに応えるためにも、積極的に動くことにしたのだ。
「大樹殿、これが今私が占領もしくは同盟を組んでいる領域です」
俺は徳川家慶に各国が支配下に置いている所を色分けした世界地図を見せながら、自分が支配下に置いている地域を示した。
分かり易いようにサンソン図法で描いた畳四畳分の巨大地図だ。
ただ平面図では本質的な状態が分からないので、地球儀も用意してある。
両方を使えば距離と広さを理解し、補給の困難さも少しは分かってもらえるかもしれないと、事前に準備しておいたのだ。
「なんと、これほどの広大な領地を、こんな遠方まで攻め取ったと申されるか」
徳川家慶が心から驚いているが、それも当然かもしれない。
分かり易いように、畳四畳分の日本地図も用意してある。
蝦夷と樺太と千島も描いて、幕府の直轄領と三百諸侯の領地もできるだけ詳しく描いてあるが、小さな飛び地までは描き切れていないのはご愛敬だ。
だがこれで俺と幕府の実力差が一目瞭然となる。
「今戦場となっている場所は南蛮列強の一角なのですか、巫覡殿」
俺もそうだが、徳川家慶も俺を呼びかける時には気を使う。
ほぼ官位では同格の俺との敬称には互いに気を使ってしまうのだ。
俺は年長で先任で一族の長者である徳川家慶を大樹と敬って呼んでいるが、徳川家慶は俺の事を東照神君の巫覡として敬ってくれている。
征東大将軍として敬られると色々困るのだ。
まだ幕臣の中には俺に反感を持つ者が少なからずいるから。
「はい、この辺りで戦いを激化させれば、南蛮列強が日ノ本に圧力をかける時期を遅らせる事が可能だと考え、新規召し抱えや陣借りを集めて戦っております。
問題は、このままだとこの辺りの領地を得るのが、清国人や韃靼人ばかりになってしまうという事です。
私としては、日ノ本の民にも大きな領地を与えたいのですが、松前藩だけでは人数兵力が足りなさすぎるのです。
そこで三百諸侯と幕臣の中に、領地替えを受けてでもこの地に行こうとする者がいないか確かめたいのです、大樹殿は如何思われますか」
俺の記憶にある前世の災害は一八三八年だから来年話せばいい。
それよりも今年はもっと大事な事を三百諸侯に話さなければいけない。
何より征夷大将軍の徳川家慶に今の世界情勢を話さなければいけない。
病で昨年末に祖父が亡くなり、俺を護る大きな力が一つなくなった。
それによって覚悟が定まったという点が大きい。
祖父の晩年の暴走には色々と悩まされたが、そのお陰で思いがけない有利な状況が生まれているのは間違いない。
亡き祖父の想いに応えるためにも、積極的に動くことにしたのだ。
「大樹殿、これが今私が占領もしくは同盟を組んでいる領域です」
俺は徳川家慶に各国が支配下に置いている所を色分けした世界地図を見せながら、自分が支配下に置いている地域を示した。
分かり易いようにサンソン図法で描いた畳四畳分の巨大地図だ。
ただ平面図では本質的な状態が分からないので、地球儀も用意してある。
両方を使えば距離と広さを理解し、補給の困難さも少しは分かってもらえるかもしれないと、事前に準備しておいたのだ。
「なんと、これほどの広大な領地を、こんな遠方まで攻め取ったと申されるか」
徳川家慶が心から驚いているが、それも当然かもしれない。
分かり易いように、畳四畳分の日本地図も用意してある。
蝦夷と樺太と千島も描いて、幕府の直轄領と三百諸侯の領地もできるだけ詳しく描いてあるが、小さな飛び地までは描き切れていないのはご愛敬だ。
だがこれで俺と幕府の実力差が一目瞭然となる。
「今戦場となっている場所は南蛮列強の一角なのですか、巫覡殿」
俺もそうだが、徳川家慶も俺を呼びかける時には気を使う。
ほぼ官位では同格の俺との敬称には互いに気を使ってしまうのだ。
俺は年長で先任で一族の長者である徳川家慶を大樹と敬って呼んでいるが、徳川家慶は俺の事を東照神君の巫覡として敬ってくれている。
征東大将軍として敬られると色々困るのだ。
まだ幕臣の中には俺に反感を持つ者が少なからずいるから。
「はい、この辺りで戦いを激化させれば、南蛮列強が日ノ本に圧力をかける時期を遅らせる事が可能だと考え、新規召し抱えや陣借りを集めて戦っております。
問題は、このままだとこの辺りの領地を得るのが、清国人や韃靼人ばかりになってしまうという事です。
私としては、日ノ本の民にも大きな領地を与えたいのですが、松前藩だけでは人数兵力が足りなさすぎるのです。
そこで三百諸侯と幕臣の中に、領地替えを受けてでもこの地に行こうとする者がいないか確かめたいのです、大樹殿は如何思われますか」
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる
紫楼
ファンタジー
もうじき結婚式と言うところで人生初彼女が嫁になると、打ち合わせを兼ねたデートの帰りに彼女が変な光に包まれた。
慌てて手を伸ばしたら横からトラックが。
目が覚めたらちょっとヤサグレ感満載の女神さまに出会った。
何やら俺のデータを確認した後、「結婚寸前とか初彼女とか昇進したばっかりと気の毒すぎる」とか言われて、ラノベにありがちな異世界転生をさせてもらうことに。
なんでも言えって言われたので、外見とか欲しい物を全て悩みに悩んで決めていると「お前めんどくさいやつだな」って呆れられた。
だけど、俺の呟きや頭の中を鑑みて良い感じにカスタマイズされて、いざ転生。
さて、どう楽しもうか?
わりと人生不遇だったオッさんが理想(偏った)モリモリなチートでおもしろ楽しく好きに遊んで暮らすだけのお話。
中味オッさんで趣味が偏っているので、昔過ぎるネタや下ネタも出てきます。
主人公はタバコと酒が好きですが、喫煙と飲酒を推奨はしてません。
作者の適当世界の適当設定。
現在の日本の法律とか守ったりしないので、頭を豆腐よりやわらかく、なんでも楽しめる人向けです。
オッさん、タバコも酒も女も好きです。
論理感はゆるくなってると思われ。
誤字脱字マンなのですみません。
たまに寝ぼけて打ってたりします。
この作品は、不定期連載です。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる