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征東大将軍
第141話:一八三五年、ペルシャとトルコ
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最重要な問題の一つが、トルコの前にガージャール朝ペルシャの現状だ。
ペルシャは黒海の東岸からコーカサス山脈の南麓にあるカルトリ・カヘティ王国を巡ってロシアやトルコと長年戦ってきた。
カルトリ・カヘティ王国は前世のジャージア国の辺りにある。
何度も触れているコーカサス戦争の場所になる。
一八三五年現在はロシア領になっているが、各地の独立運動が激しく泥沼の内乱になっているが、ロシア優勢に傾いている。
ガージャール朝ペルシャは、初代のアーカー・ムハンマド・ハーンが幼少時に去勢されていたために子供がなく、一族で後継者争いをしてしまい、戦力と経済力を消耗した事が外征能力を著しく低下させてしまっていた。
しかも二代目以降からは、ハーレムで生まれた多くの子供を各地に分封し、任地で地方宮廷を創り土着の部族長らと関係を深る政治体制だった。
これによって土着の部族長による直接叛乱は抑えられたが、国王の代替わりごとに独立心の強い王子が内乱を起こし国力を低下させる原因となっていた。
王族の誰かが王位を継げるものの、外国からの侵攻には弱い体制だと思う。
一八二六年に始まった第二次ロシア・ペルシア戦争で敗北したガージャール朝ペルシャは、一八二八年にトルコマーンチャーイ条約を締結させられていた。
この条約は、北アゼルバイジャンとアルメニアをロシアに割譲すること、ロシアの領事裁判権を認めること、カスピ海におけるロシア軍艦の独占通行権を認めること、五百万トゥーマーンの賠償金を支払うことなど、本条約の十六ヶ条のほか、商業に関しても九ヶ条が定められていた。
トルコマーンチャーイ条約は完全な不平等条約であり、この条約を皮切りに他の西欧列強とも不平等条約を締結させられていたガージャール朝ペルシャは、復仇の機会を伺っているという、俺が同盟に誘うには最適の状態だった。
少なくとも恨み骨髄に徹するロシアを相手に俺が戦っている時に、背後から襲ってロシアに利するような真似をする可能性は極端に低かった。
利益や領地を約束すれば、味方になる可能性が高い状態だった。
さて、ここでいよいよトルコの話になる。
ロシアをトルコが引き付けていてくれているからこそ、俺は有利にシベリアを切り取ることができたのだ。
これからもロシアの目と主力をトルコが引き付けてくれるのなら、相当な軍事支援をしてもいいと思っていた。
現地司令官もその考えに沿って動いてくれていた。
それがエジプトとトルコ戦争の戦争の帰趨を大きく変えていた。
史実では、エジプト太守のムハンマド・アリーが、ギリシア独立戦争でトルコに味方して支援出兵した代償に、シリアの領有権を宗主国であるトルコに要求して一八三一年にシリアを占領した事で始まっていた。
もしトルコがロシアに勝っていたら、エジプトは戦争に踏み切らなかっただろうし、ロシアからの賠償金がトルコからエジプトに支払われてもいただろう。
近代的でよく訓練されていたエジプト軍は、トルコ軍を圧倒してトルコ全域を制圧するかに見えたが、一八三三年にヨーロッパ列強諸国が介入して終戦させた。
ロシアがトルコを支配下に置き、地中海へ勢力を拡大させる事を警戒したイギリスとフランスとオーストリアが、トルコに干渉してシリアとアダナとクレタ島をエジプト領と認めキュタヒヤ条約を結ばせた。
一方ロシアは、トルコに軍事支援をするが、代償としてロシア艦隊のダーダネルス海峡とボスポラス海峡の独占的航海権を与えるウンキャル・スケレッシ条約を結んでいたのだが、この世界では……
ペルシャは黒海の東岸からコーカサス山脈の南麓にあるカルトリ・カヘティ王国を巡ってロシアやトルコと長年戦ってきた。
カルトリ・カヘティ王国は前世のジャージア国の辺りにある。
何度も触れているコーカサス戦争の場所になる。
一八三五年現在はロシア領になっているが、各地の独立運動が激しく泥沼の内乱になっているが、ロシア優勢に傾いている。
ガージャール朝ペルシャは、初代のアーカー・ムハンマド・ハーンが幼少時に去勢されていたために子供がなく、一族で後継者争いをしてしまい、戦力と経済力を消耗した事が外征能力を著しく低下させてしまっていた。
しかも二代目以降からは、ハーレムで生まれた多くの子供を各地に分封し、任地で地方宮廷を創り土着の部族長らと関係を深る政治体制だった。
これによって土着の部族長による直接叛乱は抑えられたが、国王の代替わりごとに独立心の強い王子が内乱を起こし国力を低下させる原因となっていた。
王族の誰かが王位を継げるものの、外国からの侵攻には弱い体制だと思う。
一八二六年に始まった第二次ロシア・ペルシア戦争で敗北したガージャール朝ペルシャは、一八二八年にトルコマーンチャーイ条約を締結させられていた。
この条約は、北アゼルバイジャンとアルメニアをロシアに割譲すること、ロシアの領事裁判権を認めること、カスピ海におけるロシア軍艦の独占通行権を認めること、五百万トゥーマーンの賠償金を支払うことなど、本条約の十六ヶ条のほか、商業に関しても九ヶ条が定められていた。
トルコマーンチャーイ条約は完全な不平等条約であり、この条約を皮切りに他の西欧列強とも不平等条約を締結させられていたガージャール朝ペルシャは、復仇の機会を伺っているという、俺が同盟に誘うには最適の状態だった。
少なくとも恨み骨髄に徹するロシアを相手に俺が戦っている時に、背後から襲ってロシアに利するような真似をする可能性は極端に低かった。
利益や領地を約束すれば、味方になる可能性が高い状態だった。
さて、ここでいよいよトルコの話になる。
ロシアをトルコが引き付けていてくれているからこそ、俺は有利にシベリアを切り取ることができたのだ。
これからもロシアの目と主力をトルコが引き付けてくれるのなら、相当な軍事支援をしてもいいと思っていた。
現地司令官もその考えに沿って動いてくれていた。
それがエジプトとトルコ戦争の戦争の帰趨を大きく変えていた。
史実では、エジプト太守のムハンマド・アリーが、ギリシア独立戦争でトルコに味方して支援出兵した代償に、シリアの領有権を宗主国であるトルコに要求して一八三一年にシリアを占領した事で始まっていた。
もしトルコがロシアに勝っていたら、エジプトは戦争に踏み切らなかっただろうし、ロシアからの賠償金がトルコからエジプトに支払われてもいただろう。
近代的でよく訓練されていたエジプト軍は、トルコ軍を圧倒してトルコ全域を制圧するかに見えたが、一八三三年にヨーロッパ列強諸国が介入して終戦させた。
ロシアがトルコを支配下に置き、地中海へ勢力を拡大させる事を警戒したイギリスとフランスとオーストリアが、トルコに干渉してシリアとアダナとクレタ島をエジプト領と認めキュタヒヤ条約を結ばせた。
一方ロシアは、トルコに軍事支援をするが、代償としてロシア艦隊のダーダネルス海峡とボスポラス海峡の独占的航海権を与えるウンキャル・スケレッシ条約を結んでいたのだが、この世界では……
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