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征夷副大将軍

第105話一八三一年、蝦夷新田藩

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 遠藤胤統とは、祖父と父と胤昌叔父も交えて真剣に話し合った。
 遠藤胤統は俺の予言は信じてくれたが、藩主として無嗣改易に備えないわけにはいかないと、率直に言ってくれたので、俺も条件を詰めやすかった。
 もっとはっきりと言ってくれたのは、遠藤胤統から養子縁組を解消すれば、武士としての約定を破ったことになり、面目を失い評判が落ちるという事だった。

 だから養嗣子としての立場を松平鎮三郎改め遠藤鎮三郎に譲り、胤昌叔父は遠藤胤統の娘とは離婚せずに蝦夷新田藩の藩主とすることにした。
 もし俺の予言が外れ、遠藤胤統が跡継ぎの男子を設けずに死んだ場合は、胤昌叔父が近江三上藩遠藤家を継ぎ、遠藤鎮三郎は松前松平家の蝦夷新田はを継ぐことを約束した。

 さて、新たに立藩する蝦夷新田藩なのだが、その石高は五万石とした。
 万が一、本家に後継者がなく蝦夷新田藩から後継者がでたとしても、藩内新田藩の場合は領地を幕府に取り上げられる事はなく、本家に戻される。
 まあ、よほどの事がない限り親藩の分家や新田藩が潰されることはない。
 高須藩が水戸徳川家から後継者を得て存続したように、血縁や将軍家の係累から後継者が送られるのだ。

 遠藤胤統にしても悪くない話だと思う。
 自分の娘が藩内新田藩とはいえ五万石の正室になれる。
 もう子供が生まれるとは思えないが、万が一男子に恵まれれば五万石の藩主だ。
 何より大きいのは、俺と父、二人の大老参与に貸しを作れることだ。
 これは幕府で出世するにしても藩主として領地を治めるにしても、絶大な後押しになるのだ。

 新田藩に五万石は多過ぎるという考えもあるが、できれば胤昌叔父には幕府の役職に就いてもらい、能力を証明して将来は老中に就任して欲しいと思っている。
 高須四兄弟の叔父で、義父遠藤胤統の薫陶を受けて育っているのだから、きっと優秀な人間だったと思うのだ。
 諸大名や幕臣が就任を嫌がる持ち出しの多い役目なら、胤昌叔父が就任してもやっかまれたり恨まれたりしないと思うのだ。

「高須松平家の役職と血統」
松平義和 :高須松平家四万石当主
松平義建 :尾張徳川家六十一万九千石当主
松平容敬 :会津松平家二十三万石当主
松平胤昌 :蝦夷新田藩五万石藩主
松平斉恕 :松前松平家二九万五千余石
徳川秀之助:尾張徳川家世子(史実の徳川慶勝)
松平寧四郎:高須松平家世子(史実の松平武成)
松平整三郎:尾張徳川家・高須松平家・松前松平家の予備(史実では夭折)
遠藤鎮三郎:三上遠藤家養嗣子

「松前松平家の石高」
蝦夷地 :十万石格
琉球  :十二万石
対馬国 :六二六九石
多禰国 :大隅諸島(種子島と屋久島)六二八五石
    :奄美諸島(鬼界島・大島・徳之島・沖良部島・与論島)三万二八二八石
    :沖大東島、南大東島、北大東島・尖閣諸島(無高)
    :小計三万九一一三石
小笠原国:小笠原諸島三万石
    :南鳥島、ミッドウェー諸島、ウェーク島、ジョンストン島(無高)
    :小計三万石
 合計  :二九万五三八二石
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