スライム従魔司というスキルが神与されたので、王太女との婚約は破棄され、実家からは追放され、刺客を放たれた。

第４章

第86話：意見具申・カチュア王太女視点

「差し出がましいようですが、意見具申させていただきます」

　私達の話し合いにサクラが加わってきました。
　リドワーン様から尋ねられてもいないのに、サクラから話しかけるのはとても珍しい事です。

　サクラもこの件はとても重大だと判断したのでしょう。
　或いは何か名案があるのかもしれません。

「リドワーン様、今より多めのスライムを分裂させます。
　カチュア王太女殿下を運んだロードスライムのうち、１万頭のスライムを１００万頭のベビースライムに分裂させます。
　彼らをスライムのまで成長させればいいと思います」

　ええっと、サクラの言っている事が可能だとしたら、１００万頭がサクラと合体統合したら、サクラはいったいどのような状況になるのでしょうか。

　リドワーン様から教えていただいた今までの常識から考えれば、レベル１０のキングスライムになるか、キングスライムの上位種に進化するかになります。
　キングスライムの上位種なんて、想像もできません。

「サクラの意見を採用するとしたら、恐ろしいほどの食糧が必要になる。
　とてもではないがそんな事は実現不可能だぞ。
　この国の生き物を全て食べる気か。
　いや、岩や砂、木々や草花でもベビースライムをスライムに成長させられるな」

　リドワーン様とサクラは何を話しているのでしょうか。
　サクラの意見具申を受けて、リドワーン様は何か気がつかれたようです。

　ですが私にはそれが何なのか全く思いつきません。
　私はまだまだリドワーン様の妻に相応しい能力を持っていません。
　サクラとフェリシティに学ばなければいけない事がたくさんあります。

「はい、リドワーン様が思い浮かべておられる通りです。
　１００万頭のベビースライムは、岩や土、木々や草花を食べるだけでスライムに成長することができるのです。
　生物を食べるほど早く成長する事はできませんが、荒地を真直ぐ深く食べ進めれば、いずれは大地の力をふんだんに含んだ所まで行くことができます。
　大魔境から運ばれる食糧をそのまま利用してベビースライムをスライムに成長させれば、岩や砂を食べて成長させているベビースライムとは別に、今までと同じ早さでスライムを増やすことも可能です。
　それに今の私には、ロックスライムとサンドスライム、ウッドスライムとグラススライムの能力を身に着けています。
　私から分離したスライムは全員同じ能力スキルを引き継いでいます。
　彼らに守備を任せれば、ベビースライム達が殺される不安もありません」

「確かにその通りだ。
　本体のサクラに大雑把に道をつくってもらい、仕上げをベビースライムに食べさせながらやる事は可能だな。
　だが即断する事はできないから、今しばらく待ってくれ」

　リドワーン様が即断できないくらい難しい事なのですね。
　私ならこの状況でどう決断したでしょうか。