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第2章

第29話:奇襲

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 スニルラ王国の貴族連合軍がゴブリンの大集落に奇襲をかけたが、その結果は惨憺たるもので、貴族連合軍の大惨敗となった。

 父のシャルマン公爵は、ゴブリンに殺されるように送った俺の側近達が大手柄を立てた上に、王国騎士として取立てられたことに内心激怒していた。

 しかも飾りの心算だった3男のローガンが、大手柄を立てた戦いの総大将として評価され、次男ジャスワンの家督継承の邪魔になり始めている。

 とても危険だと分かっていても、ジャスワンをこの戦いの総大将にしなければいけない状況を、シャルマン公爵自身が作ってしまっていた。

 前回は、死なせたい家臣と死んでもいい派閥貴族だけで軍を編成したシャルマン公爵が、今度はジャスワンのために派閥の全貴族に総動員を命じた。

 だがその所為で、領主軍の質が著しく低下してしまっていた。
 無理矢理動員された、普段は農民や職人でしかない領民兵が数多くいたからだ。

 しかもクイハン公爵をはじめとする敵対派閥の領主軍も、リークン公爵家に対抗して参陣していたから、貴族連合軍は連携が悪いどころか足を引っ張り合っていた。

 足並みがそろわない進撃をゴブリンの斥候に発見され、正面と背後から同時攻撃をしかけられてしまったのだ。

 強制動員されていた領民兵の一部が恐怖のあまり逃亡してしまったから、周りに不安と恐怖が伝播してしまい、全面敗走となってしまった。

 普通ならそのまま皆殺しになる所だが、そこに俺がゴブリンの大集落に奇襲をかけて、ずっと気になっていたダンジョンを手に入れようとした。

 10万匹規模のゴブリンを養えるダンジョンはなんとしてでも手に入れたかった。
 ロードを次の段階に進化させるためには、莫大な量の食事と経験値を稼ぐための敵がどうしても必要だった。

「ロード、やる事はいつも通りだよ。
 スライムに斃せる程度のゴブリンは、取り込んでスライムに与えてくれ。
 ビッグに斃せるゴブリンも、いつも通り取り込んでくれ。
 ビックでも危険だと判断したゴブリンだけをロードが斃してくれ。
 斃したゴブリンの死体は、ベビーやリトルの食事に与えてくれ」

 ロードは俺の身勝手な命令を喜んで承諾してくれた。
 それだけで心が温かくなる。

 別に言葉にして命じなくても、心に思うだけで伝わる絆が俺とロードの間にはあるのだが、人間の言葉を覚えさせて会話をする事は絶対に諦めない。
 いつか必ず話せるようになると信じている。

 食事だけでベビーをスライムにまで成長させる。
 弱いゴブリンを斃させてレベル2まで成長させる。

 レベル2のスライムを、レベル1のスライムと100匹のベビースライムに分裂させる。

 1万匹のベビーをスライムにまで成長させるだけで、合体統合させればもう1匹のロードを創り出すことができるのだ。

 レベル5にまで成長させたビッグスライムは、5匹が合体統合する事でヒュージスライムに進化する事は確認できた。

 後は単体のビッグスライムが、合体統合ではなく経験値を稼ぐことでヒュージスライムに進化できるのかは、これから検証しなければいけない。
 そのために1度も合体統合させていないビッグスライムも育てているのだ。
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