冒険者の聖女

克全

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5話

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「残念ですが私は蘇生術は使えないのです。
 ただ本当に死んでしまわれたのか、仮死なのかを確かめますね。
 ああ、皆さんの治療は終わりましたから、帰ってください。
 旦那さんは覚悟してくださいね。
 本当に奥さんが亡くなられていたら、奥さんがアンデットにならないように、聖なる術を施さないといけません。
 何をしておられるのですか?!
 人の不幸を見るのがそれほど楽しいのですか!
 少しは奥さんを亡くされた気持ちを察して、出て行くのが人の道ですよ!」

 私の叱責を聞いて、ロイド達はそそくさと出て行きました。
 これで本音で話せます。
 しかし、もうこの都市に留まるわけにはいきませんね。
 今が潮時なのでしょう。
 だったら、遠慮も手加減もいりません。

「さて、誰もいなくなったので、本音で話しましょう。
 私が蘇生術が使えるという噂が広まれば、貴族や神殿が私を囲い込んで、ここにいられなくなるのは分かりますね?
 奥さんを助けたことを秘密にできますか?
 もし誰かに聞かれたら、自分でエイル神様に祈ったら、助けていただけたと言えますか?」

「言います!
 誰に聞かれてもそう言います。
 だから女房を助けてやってください。
 これはあるだけのお金です。
 とてもこんな金額では足らない事は分かっています。
 だから」

「ああ、いいですよ。
 お礼は払えるだけでいいですよ。
 このお金の半分を頂きます。
 奴隷はここを逃げる時に足手まといになるのです。
 だから貴男も奥さんも奴隷にする気はありません。
 分かりますね」

「……はい……」

 男にも私の言いたいことが分かったのでしょう。
 男も馬鹿ではないので、私が改めて話した事で、冒険者街で流れている噂が、必ず貴族や神殿の耳に入る事が理解できたのです。

「では、始めますね。
 私カミラは守護神エイル様に祈り乞い願います。
 この方の魂をこの世界に戻し、心身を癒し、蘇らせてください。
 私カミラは守護神エイル様に祈り乞い願います
 この方の魂をこの世界に戻し、心身を癒し、蘇らせてください」

 私は必至でこの奥さんを蘇らせて欲しいと、守護神エイル様にお願いしました。
 普通の神官では、神様に願いを届ける事などできません。
 神の世界まで自分の願いを届けるには、莫大な魔力が必要になるのです。
 この世界に満ち溢れている、神々のお力を、魔力を使って利用させてもらう普通の魔術と、私の蘇生術は根本的に違うのです。

 まあ、この世界に満ち溢れている神のお力の中には、蘇生術もあるのです。
 それを莫大な魔力を使って利用する方法もあります。
 でも私は、守護神エイル様に聖女に選んでいただいているので、エイル神様に直接祈り願う方が、魔力も使わず簡単に蘇生術も使えるのです。
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