冒険者の聖女

克全

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2話

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「ありがとうございます。
 お陰様で明日からまた狩りができます」

「いえ、いえ、どういたしまして。
 ちゃんと礼金は頂きましたからね」

 冒険者パーティー、ドラゴンファングが差し出した金の中から、大銀貨小銀貨併せて一万セント分の治療費をもらいました。
 最初に差し出してくれた金額の半分程度です。
 神殿や開業治癒術師の支払いの半額になります。
 そう考えれば、最初にテーブル差し出した金額も、一般的な治療費を考えて丁度いい金額だったのですね。
 さす海千山千の冒険者です。

「いえ、通常の半額で治していただいたこと、噛み千切られる前と全く同じように動く事、神殿や開業治癒術師の治療を受けたこともありますが、これほど完璧に治していただけたのは初めてです」

 困りましたね。
 そんな評判を立てられたら、追手に気付かれてしまいます。
 ここは口止めしておくべきですね。

「高評価をしてもらえるのはうれしいですが、あまり虚名が広まると、神殿や開業治癒術師と不要な争いが起こることになります。
 そんなことになったら、私はここから逃げ出さないといけなくなります。
 あまりお世辞は言わないでくださいね」

「いや、お世辞などではなくて」

「おい!
 黙ってろ、ロイド。
 お前が余計な事を口にすれば、カミラ殿が殺されるかもしれないんだぞ。
 もうちょっと考えて話せ、このバカが!」

「誰がバカだ!
 これでも色々考えているんだ」

「考えてその程度か!
 カミラ殿が言われた事も、俺が言ったことも、まだ分からんと言うのか?!」

「いや、分からんわけではないが……」

「だったら黙ってろ愚か者!
 カミラ殿に何かあれば、お前が余計な事を口にした所為だぞ!
 お前がカミラ殿を殺すのだぞ!
 お前は命の恩人を殺したいのか?!」

「そうではない、そうではなくてだな……」

「もう黙ってろ!
 カミラ殿に何かあったら、俺がお前を殺すぞ!」

 あれ、あれ、あれ。
 私が治療した盾役の男は、少々間が抜けた天然のようですね。
 どれほど口止めしても、必ず調子に乗って喋ってしまいますね。
 これは何か起こる前にここを出て行くことになりそうです、
 かさばる荷物は処分して、身軽な状態にしておきましょう。

「申し訳ありません、カミラ殿。
 このバカが何か話しそうになったら、俺が必ず止めますから」

 私が治療した盾役はロイドというようですね。
 槍使いの男が本気で怒っています。
 何度も同じように余計な事を口にして問題を起こしたのでしょう。
 まあ、私には関係がない事です。
 ただ釘は刺しておきましょう。

「いえ、いえ、もう大丈夫ですよ。
 ロイドさんの口が軽いようですから。
 私も命は惜しいので、明日にもこの街から出ることにします」
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