上 下
49 / 53
第1章

第49話:合衆国の威信

しおりを挟む
 僕はロシアや合衆国の事は忘れて訓練に集中していた。
 おばあちゃんはもちろん、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃん、親族の人たちからも色々な技や魔術の手ほどきを受けた。

 家の本流であるお父さんとお母さんが身に付けていない、親族が切り札として隠していた技や魔術まで教えてもらえた。

 レベルアップも忘れずに、技と魔術を学ぶようにしていたので、ビキダンジョンでモンスターと戦った時とは比べ物にならないくらい強くなった。

 強くはなったけれど、ロシアの陸軍と空軍が、全力でモンスターを倒そうとした砲撃や爆撃を考えると、確実に勝てる自信はなかった。

 少しでもお父さんとお母さんの役に立ちたくて、具体的な方法がないので、基礎的な部分を全てコツコツと鍛えレベルアップを重ねた。

「竜也のファンがやってくれたよ!」

 ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんに訓練してもらっていると、おばあちゃんが満面の笑みを浮かべてやってきた。

「僕のファン?」

「ああ、そうだよ、竜也のファンが合衆国を動かしてくれたんだよ!」

「僕のファンなんて大した数いないよ、深雪お姉さんのファンと間違えていない?」

「相変わらずそっち方面は苦手のようだね!」

「そっち方面て何だよ」

「中学生になったばかりじゃしかたがないか」

「なんだよ、よくやっているとほめてくれたじゃないか」

「ああ、トレジャーハンターとしてはよくやっている。
 だが普通の男としてはまだまだだね」

「なんだよ、普通の男って!
 僕は世界一のトレジャーハンターになれたらそれでいいんだ!」

「やれ、やれ、困った子だよ」

「聖子さん、話の続きを聞かせてくれないか?」

 話が横道にそれたおばあちゃんに、ひいおじいちゃんは聞き返した。

「申し訳ありません、お父さん」

「聖子さんが竜也を心配する気持ちは良く分かる。
 だが、この件は私たちも気になっているのだよ、早く話してくれ」

「はい、お父さん。
 竜也のファンが世界中の国でデモを起こしてくれたのです。
 特に合衆国の平和団体によるデモが激しくて、ビキダンジョンを放置しておけなくなりました」

「聖子さんのうれしそうな表情を見ると、単に竜也がビキダンジョンに行けるようになったのではないようだね?」

「はい、竜也に手柄を取られるのを恐れたのでしょう。
 国内の冒険者を総動員して、ビキンダンジョンのモンスターを討伐するようです」

「ほう、自由と平等を旗印にしている合衆国が、国民に死ねと強制したのか?」
 
「国内の冒険者には法外な参加報酬と討伐報酬の2つを出しました。
 討伐に参加した他国の冒険者には、合衆国の市民権を与えるそうです」

「金で冒険者のほほを張ったか、合衆国らしいやり口だな」

「はい、ですか、現実的ではあります」

「それで、何人くらい集まりそうなのだ?」

「レベルや能力にこだわらなければ1万人は集まりそうです」

「難民やゴロツキと変わらない者まで掻き集めるのか?」

「弾除けや時間稼ぎには使えると思っているようです」

「最低だな、じゃましてやりたいが、竜也のためには飲み込むしかないか?」

「その点は安心して良いと思います。
 合衆国はそのように発表しましたが、人権団体が猛烈に反対していますので、この件に関してはまだまだ混乱が続きます」

「それも竜也のファンが動いてくれているのか?

「はい、それはもう、私が驚くくらい熱心に」

「何かお礼をしなければいけないな」

 ひいおじいちゃんの言葉を聞いて、脇と背中に嫌な汗が流れた。
 こんな事は、4年前に死にかけた以来だ。

 ☆世界的アイドル冒険者、鈴木深雪ファンクラブのライン

Benno:サイレントリュウヤが合衆国を動かしてくれた。
  :今も動かし続けてくれている!

Kenneth:いや、これこそ合衆国の良心だ!

豚キムチ:けっ、合衆国人の身勝手な正義なんてクソくらいだ!

みゆき命:合衆国は50の州に分裂して小国に成り下がれ!

Benno:冗談なら笑えるが、2人とも本気で言ってやがる。

ノンバア:私も内心では同じことを思っていたわ。

ゆうご:合衆国の分裂、日本にとって良いのか悪いのか……

Rafael:新生ロシアと同盟できたら、中華にも対抗できるぞ。

Kenneth:ありえない、合衆国が分裂するなどありえない!

豚キムチ:ふん、竜也君を利用した合衆国を許すな、サイレントリュウヤ!

みゆき命:合衆国を分裂させて竜也君を守れ、サイレントリュウヤ!

藤河太郎:2人が支離滅裂な事を言いだしたぞ。

雷伝五郎:ロシア美少女の話は何所に行った?

Kenneth:合衆国はロシアを新たな州に加えて世界を統一するのだ!

豚キムチ:ふん、盗人猛々しいわ、侵略者はヨーロッパに帰れ!

みゆき命:新大陸はネイティブアメリカンに返せ!

Benno:おい、止めろ、ここに政治的な思想信条を持ち込むな。

ノンバア:そうよ、ここはみゆき姫をほめたたえる場所よ。

ゆうご:そうだな、ここはもっと心安らぐ場所だった。

藤河太郎:俺たちは本来の目的を見失っていたようだ。

雷伝五郎:みゆき姫も活動を中止してしまっている。

Rafael:タカラブネファミリーに迎え入れられたというウワサはあるが……
 
Kenneth:みゆき姫、みゆき姫をもう一度見てみたい!

豚キムチ:ルナ、ルナ、やはりロシア美少女よりもルナを愛でたい!

みゆき命:……竜也に恋したみゆき姫よりも葵の方が美しい。
   :あの幼い姿態がたまりません!

Benno:追放しろ、みゆき命を今すぎ追放しろ!

ノンバア:だったらBennoが管理者に連絡しなさいよ。

ゆうご:そうだな、ここは公の場所じゃない、仲間内の遊び場だ。

Rafael:なあ、そろそろここも潮時だと言う話に戻そうよ。

藤河太郎:サイレントリュウヤが合衆国を動かしてくれたみたいだし……

雷伝五郎:そうだな、今日で最後にするか。

ノンバア:私は今日で最後にするわよ。

Benno:俺もここに来るのは今日で最後にする。

★★★★★★

 作者です。

 作品を読んでいただきありがとうございます。

 作品のお気に入り登録や感想が作者のモチベーションに繋がります。

 作品のお気に入り登録をお願いします。

 <(_ _)>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

処理中です...