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3章

60話

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「オンギャァ、オンギャァ、オンギャァ、オンギャァ」

 赤ちゃんの泣き声が謁見場に響き渡っています。
 ミルドレッド王国派の貴族が顔を引きつらせています。
 イルマンド公爵の愚行とオレイク陛下の英断が彼らを追い込みました。
 イルマンド公爵は私の夫になろうと、事もあろうに襲い掛かってきたのです。 
 それをハンザが残していってくれた側近が防いでくれました。
 イルマンド公爵の顔が潰れたトマトのようになるまでタコ殴りにして。
 隠そうとしても隠せない大醜聞です。
 ミルドレッド王国の我が国での評判は一気に悪くなりました。

 それに比べてドレイク王国のオレイク陛下は、私に不敬な言葉を吐いたヒルメス王子を処刑してくださいました。
 王位継承権第三位の王子を我が国との友好のために処刑してくれたのです。
 いえ、それだけではあります。
 ドレイク王国内でも有力な貴族であった、ヒルメス王子の伯父ゴーゼン侯爵と実母の側妃まで処刑してくださいました。
 ドレイク王国の我が国での評判は鰻登りです。

 その状況で私はハンザの子を出産しました。
 待望の男の子です!
 無事に育ってくれればこの国の王に戴冠してくれるでしょう。
 アーサーと名付けましたが、この子はホワイト家に幸福を運んでくれました。
 父王陛下が元気になってくれたのです。
 アーサー誕生を聞いた父王陛下は、ホワイト領から王都に駆けつけてくれました。
 心を病んでいた父王陛下が、アーサーを抱いて元気になってくださいました。
 玉座で健在をアピールしてくださったことで、ホワイト王国はグッと締まりました。

「皆も知っているように、色々と、本当に色々とありました」

 ミルドレッド王国の大使とミルドレッド王国派の貴族が顔面蒼白です。
 
「そこで、アーサーの父親であるハンザ殿にマイヤー王国から戻ってもらうことにしました」

「「「「「おおおおお!」」」」」

 謁見場がどよめくほどの歓声です。
 アーサーには確かな後見人、父親が必要だと我が国の貴族は認識しているのです。
 ハンザの母国であるドレイク王国レイク陛下は、信頼に値する人物だと認識されているのです。
 これはアーサーにとって何よりの支援になります。
 ホワイト王家にとっても福音といえるでしょう。
 問題は誰にハンザを迎えに行ってもらうかです。
 ハンザを殺したい人間は多いのです。
 生き残っているヒルメスの縁者は逆恨みしているでしょう。
 ドレイク王国の王位を狙っている他の王子達にとっても、ハンザは目障りです。
 大きな失敗をしたミルドレッド王国も当然狙ってくるでしょう。
 普通ならドレイク王国担当貴族のトマスを選ぶのでしょうが、トマスが他王子の派閥に取り込まれている可能性もあります。
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