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3章
59話メイソン視点
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ハンザ殿が随分と焦っています。
まあ今の状況では仕方ないですね。
以前の私なら、ハンザ殿を羨ましく妬ましく思っていたでしょう。
アルフィン殿下と結婚できて、実質王配となっていたのですから。
でも今の私は、自分でも意外なほど冷静です。
妻を迎え、いえ、婿入りできたというほうが正確でしょうか?
それが国を出るときに考えていた状況と違って、とても幸せな結婚生活だったから、心がとても満たされています。
まあ心配ではあります。
妻が側にいない、抱きしめ口づけできないことは、不満でもあります。
ですが妻を護っているという実感があります。
毎日のように妻からの手紙が届きます。
ホワイト王国に疎開して、アルフィン殿下に手厚く保護されていると確信できています。
ですが、ハンザ殿が率いてきたドレイク王国義勇軍には困ります。
いえ、むしろ邪魔ですね。
どれほど数がいても、烏合の衆では役に立ちません。
まあ、籠城戦ならば少しは役に立ちますが、野戦では全く使えません。
恐怖に駆られて勝負どころで逃げ出したりしたら、恐怖に耐えて踏ん張ってくれている将兵の根性が切れてしまい、友崩れや裏崩れを起こしてしまいます。
ハンザ殿が謎かけしたように、ドレイク王国義勇軍に入り込んでいる間者を利用するという方法もありますが、確実に有効的に使えるとは限りません。
それに使いどころも難しいです。
籠城戦に徹している場合は、間者を利用する方法は限られています。
敵が十万を超える大軍を投入して、乾坤一擲の勝負をかけた時くらいです。
「敵です!
敵の大軍が押し寄せています!」
「数はどれくらいだ?」
「正確な数は分かりません。
ですが事前の情報と土埃を考えれば、一万の騎馬軍団が三つは来襲してきます」
やれやれ、余計なことを考えたから敵が押し寄せてきたのかもしれませんね。
以前からこの城を見張り間断なく攻撃していた敵軍が三万。
それに加えて最低三万ですか、いえ、勝負を賭けてきたのなら八万でしょう。
謀略を駆使して千を万に偽装することは可能です。
そして後方の部隊を油断させて、迂回奇襲を仕掛けるのは常套手段です。
ですがこの一帯に関しては不可能です。
断崖絶壁の山脈が横たわり、その間にある隘路だけが侵攻路です。
我々に隠れて間道を創り出している可能性はとても低いです。
そんな事をしても将兵を疲弊させるだけです。
それくらいなら、輸送部隊を整えて大迂回した方が勝ち目があります。
問題はゲラン王国が方針変更してきた原因です。
ゲラン王国内に問題が起こったのなら、犠牲を覚悟で、暗殺や破壊活動が得意な工作部隊を投入すべきでしょう。
ホワイト王国を基軸にした国際関係の変化なら、それに応じて同盟関係を再構築する必要があります。
アルフィン様とハンザ殿の離婚が、ここにきて大きな影響を与えたのでしょうか?
まあ今の状況では仕方ないですね。
以前の私なら、ハンザ殿を羨ましく妬ましく思っていたでしょう。
アルフィン殿下と結婚できて、実質王配となっていたのですから。
でも今の私は、自分でも意外なほど冷静です。
妻を迎え、いえ、婿入りできたというほうが正確でしょうか?
それが国を出るときに考えていた状況と違って、とても幸せな結婚生活だったから、心がとても満たされています。
まあ心配ではあります。
妻が側にいない、抱きしめ口づけできないことは、不満でもあります。
ですが妻を護っているという実感があります。
毎日のように妻からの手紙が届きます。
ホワイト王国に疎開して、アルフィン殿下に手厚く保護されていると確信できています。
ですが、ハンザ殿が率いてきたドレイク王国義勇軍には困ります。
いえ、むしろ邪魔ですね。
どれほど数がいても、烏合の衆では役に立ちません。
まあ、籠城戦ならば少しは役に立ちますが、野戦では全く使えません。
恐怖に駆られて勝負どころで逃げ出したりしたら、恐怖に耐えて踏ん張ってくれている将兵の根性が切れてしまい、友崩れや裏崩れを起こしてしまいます。
ハンザ殿が謎かけしたように、ドレイク王国義勇軍に入り込んでいる間者を利用するという方法もありますが、確実に有効的に使えるとは限りません。
それに使いどころも難しいです。
籠城戦に徹している場合は、間者を利用する方法は限られています。
敵が十万を超える大軍を投入して、乾坤一擲の勝負をかけた時くらいです。
「敵です!
敵の大軍が押し寄せています!」
「数はどれくらいだ?」
「正確な数は分かりません。
ですが事前の情報と土埃を考えれば、一万の騎馬軍団が三つは来襲してきます」
やれやれ、余計なことを考えたから敵が押し寄せてきたのかもしれませんね。
以前からこの城を見張り間断なく攻撃していた敵軍が三万。
それに加えて最低三万ですか、いえ、勝負を賭けてきたのなら八万でしょう。
謀略を駆使して千を万に偽装することは可能です。
そして後方の部隊を油断させて、迂回奇襲を仕掛けるのは常套手段です。
ですがこの一帯に関しては不可能です。
断崖絶壁の山脈が横たわり、その間にある隘路だけが侵攻路です。
我々に隠れて間道を創り出している可能性はとても低いです。
そんな事をしても将兵を疲弊させるだけです。
それくらいなら、輸送部隊を整えて大迂回した方が勝ち目があります。
問題はゲラン王国が方針変更してきた原因です。
ゲラン王国内に問題が起こったのなら、犠牲を覚悟で、暗殺や破壊活動が得意な工作部隊を投入すべきでしょう。
ホワイト王国を基軸にした国際関係の変化なら、それに応じて同盟関係を再構築する必要があります。
アルフィン様とハンザ殿の離婚が、ここにきて大きな影響を与えたのでしょうか?
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