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3章
58話ハンザ視点
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マイヤー王国に送られた我々は、半ば追放です。
戦力が一人でも欲しいマイヤー王国ですから、表だった差別はされませんが、明らかに警戒され、良民が住んでいる場所には入れてもらいません。
今のマイヤー王国の状態で、民の支持を失って一揆でも起こされたら、たちまちゲラン王国の侵攻を許すでしょうから、仕方がない事です。
ですが、港街に入った途端に領主の館に押し込まれ、ゲラン王国との最前線に移動する際も、領主館や砦以外は宿泊が許されず、野営が多くて疲労が蓄積してしまいました。
まあ、最前線の城が堅固だったのが救いです。
それに、メイソン殿が想像以上に優秀です。
大軍によるゲラン王国軍の侵攻を、寡兵を率いて度々撃退しています。
私も負けておられません。
「メイソン殿。
明日の作戦を教えていただきたい」
「特に変わった策はありませんよ。
砦に籠って戦うだけです」
メイソン殿はそう言いますが、その籠城が一味違います。
地下道を駆使して背後から奇襲するなんて、今まで聞いた事もありません。
もっとも、半ば追放の我々に秘策を教えてくれるはずもありません。
一人でも間者が入り込んでいたら、秘策が敵に漏れてしまいます。
情けない話ですが、指揮官である私が、裏切り者がいないと断言できないのです。
メイソン殿に信じてもらえないのも当然です。
ですが逆に言えば、私を通じて間者に偽情報を流し、罠に嵌める事も可能です。
「必要だと思われるなら、遠慮せずに出陣を命じて頂きたい。
名誉回復のために命を賭けて戦います」
「そんな気負わなくて大丈夫ですよ。
開戦当初は砦の整備が不十分で、損害を覚悟して討って出る事もありましたが、いまでは守りに徹する事ができます。
無理に危険を犯すよりも、確実堅実に護りきりましょう。
下手に討って出て損害を受けたら、苦労して意気消沈させた敵に勢いを与えてしまいますから」
「余計な事を口にしてしまいました。
開戦当初に苦労されたメイソン殿の成果を台無しにする心算など無いのです」
「分かっていますよ。
手柄を立てて再婚の成果としたいのですね。
ですが死んだ人間には、摂政殿下を助ける事も、生まれてくる子供を助ける事もできませんよ。
まずは何が何でも生き残る事。
臆病だと言われようが、卑怯だと謗られようが、生きて戻るのが最優先ですよ」
本気で言ってくれているのが分かります。
私は焦っていたのでしょうか?
それを見透かされていたのでしょうか?
本当に信じていいのでしょうか?
戦力が一人でも欲しいマイヤー王国ですから、表だった差別はされませんが、明らかに警戒され、良民が住んでいる場所には入れてもらいません。
今のマイヤー王国の状態で、民の支持を失って一揆でも起こされたら、たちまちゲラン王国の侵攻を許すでしょうから、仕方がない事です。
ですが、港街に入った途端に領主の館に押し込まれ、ゲラン王国との最前線に移動する際も、領主館や砦以外は宿泊が許されず、野営が多くて疲労が蓄積してしまいました。
まあ、最前線の城が堅固だったのが救いです。
それに、メイソン殿が想像以上に優秀です。
大軍によるゲラン王国軍の侵攻を、寡兵を率いて度々撃退しています。
私も負けておられません。
「メイソン殿。
明日の作戦を教えていただきたい」
「特に変わった策はありませんよ。
砦に籠って戦うだけです」
メイソン殿はそう言いますが、その籠城が一味違います。
地下道を駆使して背後から奇襲するなんて、今まで聞いた事もありません。
もっとも、半ば追放の我々に秘策を教えてくれるはずもありません。
一人でも間者が入り込んでいたら、秘策が敵に漏れてしまいます。
情けない話ですが、指揮官である私が、裏切り者がいないと断言できないのです。
メイソン殿に信じてもらえないのも当然です。
ですが逆に言えば、私を通じて間者に偽情報を流し、罠に嵌める事も可能です。
「必要だと思われるなら、遠慮せずに出陣を命じて頂きたい。
名誉回復のために命を賭けて戦います」
「そんな気負わなくて大丈夫ですよ。
開戦当初は砦の整備が不十分で、損害を覚悟して討って出る事もありましたが、いまでは守りに徹する事ができます。
無理に危険を犯すよりも、確実堅実に護りきりましょう。
下手に討って出て損害を受けたら、苦労して意気消沈させた敵に勢いを与えてしまいますから」
「余計な事を口にしてしまいました。
開戦当初に苦労されたメイソン殿の成果を台無しにする心算など無いのです」
「分かっていますよ。
手柄を立てて再婚の成果としたいのですね。
ですが死んだ人間には、摂政殿下を助ける事も、生まれてくる子供を助ける事もできませんよ。
まずは何が何でも生き残る事。
臆病だと言われようが、卑怯だと謗られようが、生きて戻るのが最優先ですよ」
本気で言ってくれているのが分かります。
私は焦っていたのでしょうか?
それを見透かされていたのでしょうか?
本当に信じていいのでしょうか?
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