上 下
169 / 230
エルフ皇国・桐の街・パヴロヴナ

魔虫料理1

しおりを挟む
ナーポリ近郊の秘密キャンプ地近くの森

「斃さないのか?」

「う~ん、なんか引っかかるんだよね」

「ふん、あんな不味い奴は、さっさと斃してしまうべきなのだ。スライムよりは、奴が食べている魔虫や魔獣の方がよほど美味いのだぞ」

「魔虫は美味いのか?」

「以前ミノルが喰わせてくれた、海老と言う奴と同じ味がする。そうだ! 今日は海老を喰わせろ!」

「馬鹿言うんじゃない! あんな高い料理を、リュウのような大喰らいに食わせるほどの貯金なんてないぞ」

「貯金? 獲物を狩ってくるから、それを売ればよかろう」

「あ! 忘れていた」

「ふむ? 何を忘れてたのだ?」

「ドローン配送でダイオウイカを売りに出していたけど、あれ売れたかどうか確認していなかった」

「やれやれ、もうどうでもよかったのではないのか?」

「ははははは、忘れていただけだよセイ」

「それをどうでもよいと言うのだ」

「まあ、そうかもしれないな。まあ、それはいいじゃないか。とにかく、売れているかどうか見てみるよ」

「その前にスライムを斃してしまえ、そうでないと喰える獲物や売れる獲物が無駄になるぞ!」

「分かったよ、即死系の魔法なら魔力無駄にならないし、料理の材料としての試作にも使えるだろ」

「即死系の魔法があっているのは認めるが、スライムを喰う気はないからな」

「万が一美味しく作れても、リュウには絶対食べさせないからな」

 なんか引っかかるんだけど、それが料理の材料なのか、他に理由があるのか分からないんだよね。

「うぬぅぅぅぅぅ、構わんぞ! スライムが美味しくなるなど絶対に有り得ん!」

「そうだよな、なんか引っかかるんだけど、美味しくなりそうな気はしないよな。でもまあね、殺生する以上は、出来るだけ活用しないといけないよな」

「ふん、その辺は好きにするがよかろう」

「メガ・デス!」

 俺が千頭規模の死魔法を唱えると、屑野菜に集まった魔虫や魔獣にスライムを加えた一団が、死屍累々の状況となった。どうしても食べたい訳では無いのだけど、美味しくなるかどうかくらいは試してみよう。

 俺は格段にレベルアップしたリサーチ魔法を使い、殺した魔虫や魔獣にスライムが美味しいかどうか調べてみた。そうしたら、魔虫は4つの味群に大別できることが分かった。

1:小エビなどの甲殻類系味
2:ナッツなどの豆系味
3:甘味のあるクリーミー系味
4:その他独特な味系

 今回はまずエビ・カニに似た1の魔虫を、さらに詳しくリサーチ魔法で調べてみた。

1:甘めかつ薄味のエビ・カニ群(ミミズ系)
2:薄味のエビ・カニ食感(ゴキブリ系)
3:雑味のあるエビ味(鈍いゴキブリ系)
4:雑味のあるカニ味(コオロギ系)

1:素揚げでエビのポップコーン風味
2:チリソースで炒めたりピザの具材でエビ・カニ食感のプレーン風味
3:素揚げで苦味のあるエビ
4:煮ると出汁もとれる苦味のあるカニ味

 リサーチ魔法が、俺の指示次第で随分使える魔法になっている!

 甲殻類系味に分類されたミミズ系の魔虫を、この場で素揚にして少し塩を振って試食してみた。

「美味い! リサーチ魔法通り小海老の唐揚に近いな」

「本当か主? ちょっと食べさせてくれ」

「いいぞ、どうだ?」

「本当だ! 以前主が食べさせてくれた小海老の唐揚に近い!」

「食べたいミャ、直ぐに食べたいミャ」

「よしよし、ジャイアント・ホワイトホエールの脂で揚げてやるからな」

 俺は旨味とレベル差による美味しさを加える為、日本のサラダ油ではなく、ラードやヘッドと同じように、ジャイアント・ホワイトホエール油で揚げてみることにした。

「待てないみゃ、今ある分だけでも食べたいミャ」

「よしよし、じゃあこれを食べてみなさい」

「美味しいみゃ! ジャイアント・ホワイトホエールの方が美味しいけど、これは初めて食べる味ミャ!」

「そうかそうか、それはよかった。今度この世界にいるエビやカニを捕まえて料理してあげるからね」

「早く食べたいミャ、明日食べたいミャ」

「そうかそうか、明日は無理かもしれないけれど、出来るだけ早く捕まえてあげるからね」

「早くミャ!」

「うぬぅぅぅぅぅ」

 リュウの唸り声は無視!

「余にも喰わせるのだ!」

「俺の料理にケチをつける奴に喰わせる料理は無いね!」

「余はミノルの料理にケチをつけた訳では無い! あくまでスライムが食べるに値しないと言っただけだ!」

「だが俺が試作してみると言ったなら、いつも俺の料理を食べているのなら、試食に付き合う義務があるだろう」

「うぬぅぅぅぅぅ」

「どうなんだ、魔虫料理を食べてスライム料理も食べるのか? それともスライム料理を食べないから、今後二度と俺の料理を食べないようにするのか、はっきりこの場で約束するんだ」

「なんだ? その今後二度とミノルの料理を食べないと言う無理無体は!」

「四の五のうるさいぞ! どっちにするんだ?」

「喰えばいいのだろう、喰えば! 余直々にスライム料理の試食に付き合ってやる」

「最初から素直にそう言えばいいんだよ、さあ、喰ってみろ」

「うぉぉぉぉ! 美味いぞ、以前食べた日本とやらの海老料理も美味しかったが、この料理はそれ以上の美味しさだ!」

「本当に美味しいぞ主、これを食べたらさっきの素揚げはもう喰えんぞ」

「ほんとうミャ、さっきよりも美味しいみゃ、次からはこれだけ食べたいミャ」

「そうかそうか、やっぱり日本のサラダ油も美味しいけど、レベルの高いジャイアント・ホワイトホエールの脂を使う方が、格段に美味しくなるんだな。次はちょっと大人の味にして、辛い料理にして見るな。リュウ、セイ、白虎、俺の真似して料理してみてくれ」

「うぬぅぅぅぅぅ、仕方あるまい」

「任せておけ」

「え~、食べるのに専念させてくれよ、主」

「白虎!」

「ゴメンナサイ、ごめんなさい、御免なさい!」

 セイと白虎は、何時もの突っ込みをやらないと落ち着かないのかね?

「虫のチリソース炒め」
1:薄味のエビ・カニ食感(ゴキブリ系)虫:適量
2:塩  :適量
3:片栗粉:適量
4:料理酒:適量
5:チリソース:適量

1:薄味のエビ・カニ食感に分類された虫群を茹でる
2:茹でた後で片栗粉・塩・酒を入れて1と和える
3:焦げる直前まで揚げる
4:チリソースと軽く炒めて完成

 この世界の素材でチリソースも完成させなければならないな。

「これは美味しいかな?」

「美味しいみゃ! ちょっと辛いけど美味しみゃ!」

「主! 俺にはこの辛さが丁度いい刺激だ!」

「美味いぞ美味い! 余にはもっともっと辛くしてくれ!」

 リュウがもっと辛くしてくれと言ったので、雑味のあるエビ味(鈍いゴキブリ系)でも大丈夫と判断し、ジャイアント・ホワイトホエール脂で素揚げにして、ハバネロソースやジョロキアソース、他にもタバスコソースやニンニク七味を組み合わせて振りかけてあげた。

 アグネスには辛すぎるので、素揚げしてマヨネーズやタルタルソースを用意してあげたが、リュウや白虎も欲しがってしまった。仕方がないので、以前買い置きしていた調味料類を、全部アイテムボックスから取り出して自由に使わせた。

 最後に雑味のあるカニ味(コオロギ系)を塩茹でにしようかと思ったのだが、1度ジャイアント・ホワイトホエール脂とのコラボを食べたら、ただの塩茹ででは絶対満足しないと判断し、全部唐揚や素揚げにして食べてもらうことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

処理中です...