上 下
13 / 230
召喚

白虎

しおりを挟む
 ジャグジーの中から顔を上に向けると、真っ白で大きな虎が宙に浮かんでいるではないか!

「ほう、なかなかの強さだな」

 セイが念話では無く言葉にして話し出した!

「セイ、コイツは何者だい?」

「コイツとは偉そうに言ってくれるな、小僧」

「名前を知らないのでな、何と呼べばいいか分からないんだよ」

「我が一族は白虎(びゃっこ)と呼ばれている」

「じゃあ白虎さん、何の用があるんだい?」

「うむ、我ら一族は綺麗好きでよく水浴びをするのだが、特に温泉が大好きなんだ。我はこの辺りを縄張りにしているのだが、生憎(あいにく)温泉が湧かぬ土地だったのだが、久し振りに温泉の香りがしたので入りたくなったのだ」

「あちゃ~、有馬温泉の素を入れたのが悪かったのか?」

「温泉を作る薬があるのか?」

「ああ、俺の固有魔法なら色々な温泉を再現する薬を配送させる事ができる」

「礼はする、その湯に入らせてもらいたいのだが?」

「分かった、俺は小さい方に移動するから、白虎は大きい方に入ってくれ」

「うむ、有り難い」
 
 いきなりやって来た純白の大きな大きな虎は、御湯が一杯に入っていた大きい方の湯船に入った。体積が大きい分、俺で丁度よかった御湯が溢(あふ)れて勿体無(もったいな)いが、そこは仕方がない所だろう。

「入ると一段と香りがよくなり温泉気分が強まるな、これで酒があれば言う事無いのだがな」

「おいおいおい、虎の姿で温泉酒を飲むのか?」

「うむ、他の者から奪い取った酒を温泉の縁(ふち)にぶちまけ、それを啜(すす)り舐(な)めるのが温泉入浴の醍醐味よ!」

「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な奴だな、俺の風呂を使うのなら人様から奪い取った物を飲み食いするなよ」

「ふん、俺様の勝手だろうが! だがまあなんだ、そこの生命の大樹に逆らうほど命知らずではないから、御前の言う事は聞いてやる。それにここは地面より高いから、酒を飲もうと思えば一旦温泉を出なければならん」

「ほんと仕方のない奴だな、まあ温泉酒が好きなのなら仕方がない、飲ませてやる。その代わり入泉料(にゅうせんりょう)と酒代として、美味しい獣かモンスターを狩るんだぞ」

「酒を飲ませてくれるのか?! 約束しよう、明日はとびっきり美味しいモンスターを狩って来てやる!」

「今用意するから待っていろ」

 まずはジャグジーに浮かべる桶が必要だよな、どうせなら多めに買っておこう。

特大さわら湯桶(27cm×12・5cm)×10×3640=36400
大ひのき湯桶(24cm×11cm)×10×4350=43500
小ひのき湯桶(21cm×11cm)×10×3680=36800

 特大の湯桶をジャグジーに浮べて、中に酒を満たした小の湯桶を入れれば、白虎も入浴しながら酒が飲めるだろう。肝心の酒選びだが、下戸(げこ)の俺に酒の善し悪しなど分からん!

 有名どころの酒を買っておけばよかろう、検索して1番上に来るのは?

山口県産・磨き二割三分・純米大吟醸・1800ml:10800

 次は?

新潟県産・銘酒3本飲み比べセット・720ml×3:4213

 3番目はニューヨークで大成功した日本食レストランが新潟の蔵元に作らせた酒か!

新潟県産・純米大吟醸・1500ml:3780

 4番目は佐渡の酒屋さんが、佐渡新潟の地酒を6本詰め合わせた物だな。2本は2番目の銘酒3本飲み比べセットと被るけど、俺でも知ってる有名な酒だから大丈夫だろう。それに等級や磨きが違う酒かも知れない。

佐渡新潟産・銘酒2佐渡地酒6・300ml×6種:3980

 5番目は甕に入った吟醸生酒か

新潟県産・吟醸生酒・1800ml:6995

 6番目はモンドセレクションの金賞受賞の特選大吟醸酒か、しかも3番目のニューヨークレストランが作らせた酒と同じ蔵元だな。

新潟県産・特選大吟醸・720ml:5400

 7番目はメンドクサイから、被ってもいいから一升瓶のセットを買おう。新潟県産日本酒飲み比べセット、また同じ酒が入っているけどラベルによって等級が違うようだ、値段も違うし大丈夫だろう。

新潟県産・普通酒3・本醸造酒1・純米酒1・1800ml×5:10800

 ありゃりゃ、最初の酒を湯桶に入れて白虎に飲ませてやったんだけど、最後の酒を注文し終わる頃には、4番目の300ml詰めの酒を半分飲み干している!

 魔法か念動力かは分からないけど、器用に酒瓶を宙に浮かせては栓を抜き、酒を飲みほした湯桶に注いでいる。虎の癖に御機嫌に鼻歌まで歌うとは、温泉を楽しんでいるおっさんと変わらないな。

 俺は注文の間湯船に浸かっていたので湯当たりしそうだ!

「俺はこれで上がるからな、後は勝手に飲んで楽しんでくれ」

「おう! ありがとよ!」

 豪快な奴だが、約束通り美味いモンスターを狩ってきてくれれば助かる。まあこのまま飲み逃げ去れても、セイがくれた途方もない財産があるから買い物に困ることもないし、狩りもセイの魔法支援とアドバイスがあれば問題無いだろう。

 俺も喉が渇いたから、瓶入りの成分無調整の低温殺菌牛乳を飲もう!

埼玉県産・成分無調整の低温殺菌牛乳・900ml×10:6430
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!

青空一夏
ファンタジー
 婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。  私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。  ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、 「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」  と、言い出した。  さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。  怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?  さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定) ※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です) ※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。 ※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

処理中です...