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3話

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「私も聖女オリビアを愛している。
 絶対に聖女オリビアを幸せにしてみせる。
 同じ守護神月神を奉じる私の方が、聖女オリビアに相応しい。
 他国の別の神を奉じるブルーノ殿下には黙っていていただこう!」

「なんだと?!
 先に求婚したのは私だ!
 後から割り切んできて勝手な事を言うな!」

「いいや、待ってもらおうか!
 私の方が聖女オリビアに相応しい!
 なんといっても、同じ治癒の魔法を使うのだ。
 人殺しの技を磨くような野蛮人はご遠慮していただこう!」

 なんと?!
 リゼル大公国のベニート大公子まで求婚合戦に加わってきました。
 確かに武人よりは、治癒魔術師のベニート様の方が、無理矢理政略結婚させられるなら、まだ受け入れやすいですが、結婚しなくてすむという選択ができるのなら、それが一番うれしいのです。

「いいや、待ってもらおう!
 相応しいというのなら、同じ月神を奉じて月神殿で修業し、同じ孤児で幼馴染、同じ神殿で育った私が一番相応しい!」

 ああ、なんて事でしょう。
 同じ同じと連呼して、私に相応しい事を言い立てているのは、月神殿の魔導師長バルトロです。
 確かに同じように神殿前に捨てられていましたし、物心ついたころから一緒で、とても気心が知れています。
 でも、恋人とか、そんな感じではないのです。

「いいや、待ってもらおう!
 やはり男は力よ
 女を護れてこその男だ!
 その点俺は、身体強化ができる王国無双の剛力騎士。
 戦斧を使わせたら誰にも負けん!
 さあ、誰が聖女オリビアに相応しいか、この場で戦って証明しよう!」

 ああ、今度はミズン城伯ドナテッロです。
 単純な武勇なら王国随一と評判の、身長二百十センチの巨漢騎士です。
 他国に寝返りそうな侯爵家を見張るため、城伯の地位を与えられた、国王の信頼厚い好漢でもあります。
 今も邪気などなく、私に相応しい漢を決闘で選ぼうとしています。

「いいや、待ってもらおう。
 同じ神を奉じ、この国に残ってもらうのに、辺境伯夫人や城伯夫人では申し訳ないではないか。
 今迄は義理とはいえ兄妹だし、王太子殿下の婚約者だから我慢していたが、こうなれば本心を口にしても許されるだろう。
 私、アルトリア公爵家のダニエルは、ずっと聖女オリビアを愛していました。
 月神様、私が聖女オリビアに相応しくないのなら、雷を撃って殺してください」

「まてまてまて!
 俺だ、俺こそが相応しいのだ。
 月神様、聖女オリビアに相応しい漢を選んでくれ!」

 ああ、会場中で男達が同じことを大声で叫んでいます。
 月神様!
 どうか私をこの国から逃がしてください!
 
(それはできないな。
 この場からは逃がしてあげるけど、自由にはさせてあげられないよ。
 君は僕とずっと一緒に暮らすのさ)

 私は、神々の列に加えられ、月神様の妻となりました。
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