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4話

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「以上の内容で許してやるか、リヴァン男爵」

「はい、十分でございます、王太子殿下。
 王太子殿下のお陰でリヴァン男爵家とエミリーの面目は保たれました」

 ありがたいことです。
 王太子殿下は、徹底的にブリーダルベイン侯爵を追い詰めてくださいました。
 廃坑になった銀鉱山の賠償金は、我が家が想定していた年間産出領の五倍を、三十年分という途方もない金額でした。
 富裕で有名なブリーダルベイン侯爵でも、簡単に払える金額ではありません。

 ですから王家が肩代わりして払ってくださることになりました。
 ブリーダルベイン侯爵は、毎年王家に肩代わりしてもらった借金を、元利合わせて返済しなければなりません。
 その負担は長くブリーダルベイン侯爵家にのしかかることになるでしょう。

 ですがそれだけではないのです。
 リヴァン男爵家と私の名誉を傷つけた賠償金があります。
 王太子殿下はブリーダルベイン侯爵家を徹底的に叩くつもりのようです。
 元々目障りな存在だったのかもしれません。
 ブリーダルベイン侯爵家を潰すことが、王家の方針だったのかもしれません。

 リヴァン男爵家の名誉を損なった代償として、ブリーダルベイン侯爵の大切な資金源である、金鉱山を取り上げたのです。
 あまりにも厳しい決定でした。
 周りの者たちも驚愕していました。
 ブリーダルベイン侯爵もさすがに考え直してもらおうとしました。

 ですがギリギリ口を閉ざしました。
 考え直しを願い出ようとした直後、王太子殿下が嬉しそうに笑ったのです。
 背筋が凍えそうになるほど酷薄な笑みでした。
 ブリーダルベイン侯爵が願い出たら、その場で斬り殺されていたでしょう。
 それは私だけでなく、多くの者が感じとっていたようです。

 その後は淡々と条件が整えられました。
 ブリーダルベイン侯爵が王太子殿下にお伺いを立て、王太子殿下がそれを承認されるだけの場になりました。
 金鉱山と周辺の領地はリヴァン男爵家のモノとなり、海に面した交易と塩田で栄える港町が私の領地になりました。

「すべてが決まったな。
 ブリーダルベイン侯爵、その方もヘイスティングズ伯爵とダニエルに賠償を求めるがいい。
 それくらいは温情として認めてやる」

 王太子殿下は本当に恐ろしい方です。
 いえ、とてもお優しい方です。
 ブリーダルベイン侯爵家とヘイスティングズ伯爵家を争わせて、恨みが直接王家やリヴァン男爵家に向かないように考えてられます。
 完全に恨みがそれるわけではなりませんが、分散されるのは確かでしょう。

「ああ、それとリヴァン男爵とエミリー嬢に頼みたいことがある」
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