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第一章
第17話:最悪(ジークフリート視点)
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神歴五六九年睦月七日:王都郊外・ジークフリート視点
おぼっちゃまな魔術師団副師団長達を捕らえてから二日が過ぎたが、ロイセン王国からの追撃が来ない。
まあ、マリア達が調べてくれた情報から考えれば、第三騎士団と魔術師団が壊滅状態なら、王都にはもう追撃に出せる戦力がない。
これから気をつけなければいけないのは、まだ助けられていない平民出身の第三騎士団員の家族が人質に取られる事。
もう一つは、冒険者達の家族で人質に取られている人達の事。
ウラッハ辺境伯家から送り込まれている密偵が助け出してくれるとは思うが、他人の仕事に完全依存するのは性に合わない。
出来るだけ自分自身でやりたいし、他人に任せるよりはクランメンバーにやらせたが、ウラッハ辺境伯家の者なら身内と言えない訳ではない。
ここは自分の性分を抑えて他人を信じるべきだろう。
そこを割り切ったとしても、まだまだ頭の痛い問題が残っている。
遅々として移動速度が上がらないのは、家族を人質に取られている冒険者の心情が反映されているのか、足弱な高位貴族を人質にしているからか?
王都からの追撃はなくても、もう何度か戦わなければいけないのは明らかだ。
問題は北竜山脈と南竜森林の護りについている騎士団の実力だ。
流石に高位貴族の指定席になっていた近衛騎士団や第三騎士団ほど、戦闘力が低い役立たずではないだろう。
まあ、魔境を護っている騎士団が役立たずだったとしても、北竜山脈と南竜森林に入って狩りをしている冒険者や猟師は、かなり戦闘力があるはずだ。
一般的な冒険者や猟師が相手なら、ケガをさせる事もなく捕縛できる。
問題は俺に匹敵するような実力者がいた場合だ。
実力者が金に目が眩んで襲ってきた場合は、手加減できずに殺してしまうかもしれないし、流れ弾で味方に死傷者が出てしまうかもしれない。
「まあ、足のまめが潰れて血が出ているではありませんか!
我慢せずに言ってくだされば直ぐに治癒魔術をかけましたのに?」
「とんでもありません!
この程度の事で公爵令嬢に治癒魔術を使っていただくわけにはいきません。
まめが潰れるくらい、冒険者をやっていればよくある事です」
「遠慮する事はありませんよ。
そのわずかなまめの傷の所為で、戦闘で後れを取るようなことがあれば、私が捕らえられてしまうかもしれないのです。
さあ、遠慮なさらずに治癒魔術を受けてください」
「いえ、本当に大丈夫です。
俺の事より、馬に乗せて頂いている女子供を見てやってください。
初めて馬に乗っているので、もしかしたらお尻の皮がずる剥けになっているかもしれません」
「まあ、それはいけません!
貴女方、お尻が痛くなっていませんか?
子供達のお尻は大丈夫ですか?!」
しまった、迂闊だった!
昔の事なので、自分が初めて乗馬した時の事を忘れていた。
あの当時、教育用の馬に振り落とされ、痛い思いをした記憶が強すぎて、乗馬に熱中し過ぎてお尻の皮がめくれた事を忘れていた!
「エマ嬢、御婦人方は、どれだけ痛くても露天でお尻は出せないでしょう。
直ぐにテントを用意しますので、そこで女子供の診察と治療をお願いします」
冒険者の家族にしてみれば、命懸けの逃避行なので、少々の痛い痒いは我慢してしまうのを忘れていた。
俺が聞くと失礼になるので、冒険者である家族から聞いてもらうか、女性のエマ嬢に聞いてもらったが、やはりお尻の痛いのを我慢していたようだ。
胸が痛かったのは、お尻が痛いと言ってくずる子供をなだめるのに、自分が抱く事で子供を助けた分、大きくお尻の皮がずる剥けた母親が数多くいた事だった。
本当に俺はがさつで抜けている。
本当なら移動に支障をきたすくらいの大問題なのだが、エマ嬢が魔力を惜しまず全て女子供を治療してくれたので、全体の足を止めずにすんだ。
もちろん、女子供を乗せた馬達はかなり遅れる事になってしまったが……
「卑しい平民の治療などせず、高貴な我々の治療をしろ!」
あまり痛い思いをしていないおぼっちゃま副師団長が、自分の立場をわきまえない、愚かで腹立たしい言葉を吐きやがった。
余りに腹が立ったので、俺が直々に躾けてやろうとしたのだが、その前に常に嫌われ役を買って出てくれるヴァレリオが、粗相王子の指を引き千切ってくれた。
正直な話し、王子の指を引き千切るのは遣り過ぎのような気がするのだが、常々ウラッハ兄妹に甘過ぎると叱られているので、言葉をぐっと飲みこんだ。
ようは、誰が何をしようと、俺が最後の責任を負えばいいだけの話だ。
ウラッハ兄妹だけでなく、この逃避行に参加してくれている者達がやった事は、全て指揮官である俺が責任を取ればいい。
俺の本意と違っていたとしても、結果が全てであり、暴走を許してしまったとしたら、指揮官である俺が責任を取らなければいけない。
ただ、まあ、冒険者達が粗相王子達に危害を加える事はないだろう。
万が一この逃避行が失敗した場合、或いはロイセン王国に寝返ろうと思った場合、粗相王子達に危害を加えていたら冒険者達も身動きができない。
家族や自分の命を大切にする冒険者なら、臨機応変に裏切る事もある。
それに、どのような処罰や逆恨みも畏れず、一国の王子の指を引き千切るほど腹が座っているのは、ウラッハ兄妹以外にいない。
ウラッハ兄妹が王子の指を引き千切るのも、長姉を殺されている可能性がとても高いから、恨みを晴らしたい気持ちはよく分かる。
俺だって血は繋がっていなくてもこれだけ腹が立っているのだ。
ただの乳姉弟と言う奴もいるだろうが、俺にとってアンジェリカ乳姉さんは実の兄弟と同等なのだ。
「もうこれで大丈夫ですよ。
ですがこれからも馬に乗らなければいけません。
少しでも痛みが出たら、我慢せずに言ってください。
世間的には貴重な治癒魔術ですが、私にとっては当たり前の力です。
千人でも二千人でも治せますから」
エマ嬢が最後の母子の治療を終えてくれた。
鞍ずれで剥けた尻の皮を治す事になるなんて、考えた事もなかっただろう。
俺も全く想定していなかった。
「エマ嬢、朝から治療に奔走してくださり感謝いたします」
「お礼など無用ですわ、英雄騎士様。
何でもさせてくださいと言ったのは私です。
それに、ケガをしている母子を見て何もしないなんてありえません。
普通に生まれ育った人間なら、できる限りの事をして当然です」
「「「「「……」」」」」
側で聞いていた人質の粗相王子達が、憎しみの籠った視線を送ってくる。
流石に三度も指を引き千切られた後だから、余計な事を言う奴はいない。
だが言葉にしない分、恨み辛みが視線に籠っている。
エマ嬢もその気配に気がついたのか、無意識に振り向いて驚いている。
粘着質で理不尽な逆恨みの視線が信じられないのだろう。
エマ嬢のような、無菌状態で育てられたお嬢様には耐え難い視線だろう。
「エマ嬢、こいつらの事は気にされないでください。
人間の情もなければ王侯貴族の誇りもない、甘やかされて何も躾けられずに育った、身体が大きなだけの三歳児です。
言葉で言っても分からないので、痛みを与えて覚えさせないと、他人を傷つけ殺してしまうのです」
「王子が他人の痛みの分からない身勝手な人だと言う事は、王城での一件で身に染みて理解しています。
王子の取り巻き、五人衆も同じような者達なのでしょう」
「王子の五人衆ですか?
王子同等の愚か者が五人もいると言う事ですね?
初めて聞きました、名前を教えてもらえませんか?」
「ごめんなさい、私も先ほどジョルジャから聞いたばかりなのです。
情けない話しなのですが、社交界の事は全く知らないのです」
「ジョルジャ殿、五人衆の事を教えてくれますか?」
常にエマ嬢を護っている護衛衆の一人、誰よりも強者の気配を放っている女性に聞いてみた。
「はい、何でもお聞きください」
「先ずは五人衆の名前と地位を教えてください」
「既に英雄騎士様が二人捕らえておられます。
第三騎士団の団長であるエルンストは、近衛騎士団長クーノ・フライヘル・フォン・エルツ・リューベナッハの長男です。
エルンストの実力は大した事ありませんが、クーノは王家騎士の身分から実力で騎士団長になり、宮中男爵に取立てられた実力者です。
老王が側から離さないと思いますが、王都に残っている近衛騎士を率いて追撃してきたら、英雄騎士様が援軍に向かうまでは軍馬達が一方的に叩かれそうです」
ほう、辺境伯が送った最強の護衛であるジョルジャがそこまで言う実力者なのか。
だが、実力もない息子を騎士団長に据えるのなら、戦闘力があるだけで、人格は最低という事だな。
「流石によく調べておられますね」
「表面に出ている情報だけを集めていて、アンジェリカ様の襲撃とお嬢様に仕掛けられた罠を見抜く事ができませんでした。
辺境伯閣下にアンジェリカ様とお嬢様の護りを任されていたのに、このような結果になってしまい、お恥ずかしい限りです」
心から反省して俺に頭を下げて謝るか……
やはりジョルジャは俺達の正体に気がついているな。
「どれほど気をつけていても、相手に上回られてしまう事はあります。
特に相手が国と大陸を跨ぐ教団となれば、勝てなくてもしかたがない。
そんな事より、他の五人衆の事を教えてください。
これからどうやってエマ嬢を護り、アンジェリカ夫人を探し出して救うのかを考えなければいけないのです。
二人捕らえていると言うもう一人は、副師団長の事ですか?」
「はい、マックス・フォン・シュトラハヴィッツ魔術師団師団長の長男、フランクがもう一人の五人衆です」
「他の三人は……」
「ギャアアアアア!」
「口を塞げ、息をするな」
「どくだ、毒がまかれているぞ」
「ギャアアアアア!」
「もう一人の五人衆がやってきたようです」
おぼっちゃまな魔術師団副師団長達を捕らえてから二日が過ぎたが、ロイセン王国からの追撃が来ない。
まあ、マリア達が調べてくれた情報から考えれば、第三騎士団と魔術師団が壊滅状態なら、王都にはもう追撃に出せる戦力がない。
これから気をつけなければいけないのは、まだ助けられていない平民出身の第三騎士団員の家族が人質に取られる事。
もう一つは、冒険者達の家族で人質に取られている人達の事。
ウラッハ辺境伯家から送り込まれている密偵が助け出してくれるとは思うが、他人の仕事に完全依存するのは性に合わない。
出来るだけ自分自身でやりたいし、他人に任せるよりはクランメンバーにやらせたが、ウラッハ辺境伯家の者なら身内と言えない訳ではない。
ここは自分の性分を抑えて他人を信じるべきだろう。
そこを割り切ったとしても、まだまだ頭の痛い問題が残っている。
遅々として移動速度が上がらないのは、家族を人質に取られている冒険者の心情が反映されているのか、足弱な高位貴族を人質にしているからか?
王都からの追撃はなくても、もう何度か戦わなければいけないのは明らかだ。
問題は北竜山脈と南竜森林の護りについている騎士団の実力だ。
流石に高位貴族の指定席になっていた近衛騎士団や第三騎士団ほど、戦闘力が低い役立たずではないだろう。
まあ、魔境を護っている騎士団が役立たずだったとしても、北竜山脈と南竜森林に入って狩りをしている冒険者や猟師は、かなり戦闘力があるはずだ。
一般的な冒険者や猟師が相手なら、ケガをさせる事もなく捕縛できる。
問題は俺に匹敵するような実力者がいた場合だ。
実力者が金に目が眩んで襲ってきた場合は、手加減できずに殺してしまうかもしれないし、流れ弾で味方に死傷者が出てしまうかもしれない。
「まあ、足のまめが潰れて血が出ているではありませんか!
我慢せずに言ってくだされば直ぐに治癒魔術をかけましたのに?」
「とんでもありません!
この程度の事で公爵令嬢に治癒魔術を使っていただくわけにはいきません。
まめが潰れるくらい、冒険者をやっていればよくある事です」
「遠慮する事はありませんよ。
そのわずかなまめの傷の所為で、戦闘で後れを取るようなことがあれば、私が捕らえられてしまうかもしれないのです。
さあ、遠慮なさらずに治癒魔術を受けてください」
「いえ、本当に大丈夫です。
俺の事より、馬に乗せて頂いている女子供を見てやってください。
初めて馬に乗っているので、もしかしたらお尻の皮がずる剥けになっているかもしれません」
「まあ、それはいけません!
貴女方、お尻が痛くなっていませんか?
子供達のお尻は大丈夫ですか?!」
しまった、迂闊だった!
昔の事なので、自分が初めて乗馬した時の事を忘れていた。
あの当時、教育用の馬に振り落とされ、痛い思いをした記憶が強すぎて、乗馬に熱中し過ぎてお尻の皮がめくれた事を忘れていた!
「エマ嬢、御婦人方は、どれだけ痛くても露天でお尻は出せないでしょう。
直ぐにテントを用意しますので、そこで女子供の診察と治療をお願いします」
冒険者の家族にしてみれば、命懸けの逃避行なので、少々の痛い痒いは我慢してしまうのを忘れていた。
俺が聞くと失礼になるので、冒険者である家族から聞いてもらうか、女性のエマ嬢に聞いてもらったが、やはりお尻の痛いのを我慢していたようだ。
胸が痛かったのは、お尻が痛いと言ってくずる子供をなだめるのに、自分が抱く事で子供を助けた分、大きくお尻の皮がずる剥けた母親が数多くいた事だった。
本当に俺はがさつで抜けている。
本当なら移動に支障をきたすくらいの大問題なのだが、エマ嬢が魔力を惜しまず全て女子供を治療してくれたので、全体の足を止めずにすんだ。
もちろん、女子供を乗せた馬達はかなり遅れる事になってしまったが……
「卑しい平民の治療などせず、高貴な我々の治療をしろ!」
あまり痛い思いをしていないおぼっちゃま副師団長が、自分の立場をわきまえない、愚かで腹立たしい言葉を吐きやがった。
余りに腹が立ったので、俺が直々に躾けてやろうとしたのだが、その前に常に嫌われ役を買って出てくれるヴァレリオが、粗相王子の指を引き千切ってくれた。
正直な話し、王子の指を引き千切るのは遣り過ぎのような気がするのだが、常々ウラッハ兄妹に甘過ぎると叱られているので、言葉をぐっと飲みこんだ。
ようは、誰が何をしようと、俺が最後の責任を負えばいいだけの話だ。
ウラッハ兄妹だけでなく、この逃避行に参加してくれている者達がやった事は、全て指揮官である俺が責任を取ればいい。
俺の本意と違っていたとしても、結果が全てであり、暴走を許してしまったとしたら、指揮官である俺が責任を取らなければいけない。
ただ、まあ、冒険者達が粗相王子達に危害を加える事はないだろう。
万が一この逃避行が失敗した場合、或いはロイセン王国に寝返ろうと思った場合、粗相王子達に危害を加えていたら冒険者達も身動きができない。
家族や自分の命を大切にする冒険者なら、臨機応変に裏切る事もある。
それに、どのような処罰や逆恨みも畏れず、一国の王子の指を引き千切るほど腹が座っているのは、ウラッハ兄妹以外にいない。
ウラッハ兄妹が王子の指を引き千切るのも、長姉を殺されている可能性がとても高いから、恨みを晴らしたい気持ちはよく分かる。
俺だって血は繋がっていなくてもこれだけ腹が立っているのだ。
ただの乳姉弟と言う奴もいるだろうが、俺にとってアンジェリカ乳姉さんは実の兄弟と同等なのだ。
「もうこれで大丈夫ですよ。
ですがこれからも馬に乗らなければいけません。
少しでも痛みが出たら、我慢せずに言ってください。
世間的には貴重な治癒魔術ですが、私にとっては当たり前の力です。
千人でも二千人でも治せますから」
エマ嬢が最後の母子の治療を終えてくれた。
鞍ずれで剥けた尻の皮を治す事になるなんて、考えた事もなかっただろう。
俺も全く想定していなかった。
「エマ嬢、朝から治療に奔走してくださり感謝いたします」
「お礼など無用ですわ、英雄騎士様。
何でもさせてくださいと言ったのは私です。
それに、ケガをしている母子を見て何もしないなんてありえません。
普通に生まれ育った人間なら、できる限りの事をして当然です」
「「「「「……」」」」」
側で聞いていた人質の粗相王子達が、憎しみの籠った視線を送ってくる。
流石に三度も指を引き千切られた後だから、余計な事を言う奴はいない。
だが言葉にしない分、恨み辛みが視線に籠っている。
エマ嬢もその気配に気がついたのか、無意識に振り向いて驚いている。
粘着質で理不尽な逆恨みの視線が信じられないのだろう。
エマ嬢のような、無菌状態で育てられたお嬢様には耐え難い視線だろう。
「エマ嬢、こいつらの事は気にされないでください。
人間の情もなければ王侯貴族の誇りもない、甘やかされて何も躾けられずに育った、身体が大きなだけの三歳児です。
言葉で言っても分からないので、痛みを与えて覚えさせないと、他人を傷つけ殺してしまうのです」
「王子が他人の痛みの分からない身勝手な人だと言う事は、王城での一件で身に染みて理解しています。
王子の取り巻き、五人衆も同じような者達なのでしょう」
「王子の五人衆ですか?
王子同等の愚か者が五人もいると言う事ですね?
初めて聞きました、名前を教えてもらえませんか?」
「ごめんなさい、私も先ほどジョルジャから聞いたばかりなのです。
情けない話しなのですが、社交界の事は全く知らないのです」
「ジョルジャ殿、五人衆の事を教えてくれますか?」
常にエマ嬢を護っている護衛衆の一人、誰よりも強者の気配を放っている女性に聞いてみた。
「はい、何でもお聞きください」
「先ずは五人衆の名前と地位を教えてください」
「既に英雄騎士様が二人捕らえておられます。
第三騎士団の団長であるエルンストは、近衛騎士団長クーノ・フライヘル・フォン・エルツ・リューベナッハの長男です。
エルンストの実力は大した事ありませんが、クーノは王家騎士の身分から実力で騎士団長になり、宮中男爵に取立てられた実力者です。
老王が側から離さないと思いますが、王都に残っている近衛騎士を率いて追撃してきたら、英雄騎士様が援軍に向かうまでは軍馬達が一方的に叩かれそうです」
ほう、辺境伯が送った最強の護衛であるジョルジャがそこまで言う実力者なのか。
だが、実力もない息子を騎士団長に据えるのなら、戦闘力があるだけで、人格は最低という事だな。
「流石によく調べておられますね」
「表面に出ている情報だけを集めていて、アンジェリカ様の襲撃とお嬢様に仕掛けられた罠を見抜く事ができませんでした。
辺境伯閣下にアンジェリカ様とお嬢様の護りを任されていたのに、このような結果になってしまい、お恥ずかしい限りです」
心から反省して俺に頭を下げて謝るか……
やはりジョルジャは俺達の正体に気がついているな。
「どれほど気をつけていても、相手に上回られてしまう事はあります。
特に相手が国と大陸を跨ぐ教団となれば、勝てなくてもしかたがない。
そんな事より、他の五人衆の事を教えてください。
これからどうやってエマ嬢を護り、アンジェリカ夫人を探し出して救うのかを考えなければいけないのです。
二人捕らえていると言うもう一人は、副師団長の事ですか?」
「はい、マックス・フォン・シュトラハヴィッツ魔術師団師団長の長男、フランクがもう一人の五人衆です」
「他の三人は……」
「ギャアアアアア!」
「口を塞げ、息をするな」
「どくだ、毒がまかれているぞ」
「ギャアアアアア!」
「もう一人の五人衆がやってきたようです」
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