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6話

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「やれ!
 裸にひんむいて、床に押さえつけろ!」

「「「「「はい!」」」」」

(闇の神具を発動しなさい)

 ツクヨミ神のお言葉が届きました!
 ロキ神の守護を破ってお言葉を届けてくださいました。
 反射的に魔法袋から月詠太刀を取り出してすらりと抜くと、一面が真っ暗になりましたが、私の眼は夜目が利くようになっているので、全く不自由はありません。

「うわ?!」
「なんだ、なんだ、なんだ?!」
「何も見えんぞ」
「ギャアアアアア」
「敵だ!」
「女が斬り付けてきたぞ」
「殺せ!
 殺してしまえ!」

(今のうちです。
 今のうちに中庭に出て逃げるのです)

 助かりました。
 三柱の神様から加護を受けていますが、ロキ神に対抗できるのはツクヨミ神だけで、他の二柱の神様では対抗できないのです。
 それでも、ロキ神の力が満ちているこの国では、圧倒的に不利だそうです。

 ツクヨミ神の神具、月詠太刀の力がロキ神に封じられる前に、できるだけ遠くに逃げなければ、貞操を守れません。
 貞操を守るためには、自害を選ぶしかなくなります。
 母上の敵を討つ前に、死ぬわけにはいきません。
 敵に、ドゼル侯爵に背中を見せるのは忸怩たるおもいですが、仇討ちも生き残ってこそできるのです。

 それに、卑怯な裏切り者達、不忠者達は、自分の行いを恥じているからこそ、疑心暗鬼になるのででしょう。
 事もあろうに、裏切り者同士で殺し合いを始めてくれました。
 この機に乗じてドゼル侯爵を殺したい気持ちでいっぱいですが、自分が死傷することなく、必ずドゼル侯爵を討てると断言できません。
 どれほど悔しくても、ここは逃げるしかないのです。

 私は後ろ髪の引かれる思いで逃げ出しました。
 中庭を突き切り、もう一度王宮内に入り、宮殿の外に出られるように、迷路のような通路を間違える事なく、一直線に抜けました。

「王太子殿下に追放刑にされました。
 このまま国外に出ていきます。
 通過させてください」
 
「そうですか……
 最近は治安が悪くなっています。
 気を付けて行かれて下さい」

 私が嘘をついて城門を抜けようとすると、門番が親切に言葉をかけてくれました。
 まだこの国も完全に腐っている訳ではないのですね。
 身分の低い者ほど、まだ良識を保っているのかもしれません。
 こんな善良な人達が、王家や下劣な高位貴族に為に、苦しむことがなければいいのですが、虚しい願いなのでしょうね。
 この国の滅びは、約束されてしまっているのかもしれません。
 ロキ神の本性を、ツクヨミ神から教えていただいた私には、諦めの気持ちしかありません。
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