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3話

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「嘘を言うのもたいがいにになさい、ドゼル侯爵ルーセン卿。
 ではなぜ国王陛下がここまで怯えているのです。
 ルーセン卿のいない所でだけ、コンスの批判をするのです。
 すべて貴男が国王陛下を恐れさせたからでしょう。
 王太子殿下とアーダの間に子供が生まれて、自分が外戚なれたら、王太子殿下も弑逆するつもりでしょ!」

「おや、おや、おや。
 不義密通を重ねる淫売が、自分の事を糊塗しようと、我が娘に無実の罪を着せようとしていますね。
 ねえ、イルレク王太子殿下」

「……ああ……」

 守護神様の教えてくださったことに間違いはないようですね。
 ここは一気呵成に攻め込んで、有利な状況を創り出さなければいきません。
 私が追い追い詰めたら、口封じに殺そうとするでしょう。
 での何もしなくても、殺されてしまいます。
 少しでもルーセンの勢力を抑えなければいけません。

「これで分かったのではありませんか、王太子殿下。
 自分がやっている事とルーセン卿の言っている事、嘘なのは分かったでしょ。
 まったく信用できませんよ。
 国王陛下を弑逆しようとしているのは本当です。
 自分達の不利になる罪はごまかして隠蔽するのです。
 国王陛下を弑逆をしようとしていた事も、ないと嘘を言ってるのです。
 騙されて父親を殺すのですか?」

「ふっふっふっふっふっ。
 淫売の命惜しさの嘘に騙されるほど、王太子殿下はバカではないのだよ。
 まず最初に淫売のお前が王太子殿下を裏切ったのが悪いのだよ。
 それをロキ神殿の聖女であるアーダがお慰めしていた。
 その間に真実の愛が芽生えたのだよ。
 ねえ、王太子殿下」

「そうだ、私はバカではない。
 ルーセンの言う通り、私とアーダは愛し合っているのだ。
 そもそも最初にお前が私を裏切ったのが悪いのだ。
 ルーセンもアーダもまったく悪くない。
 国王陛下弑逆も、お前の妄想でしかない」

 ああ、ああ、ああ。
 国王陛下が眼に見えて落胆していますね。
 王太子に自分を殺す気がない事が分かって、愛情がある事が分かって、心から喜んでいたのに、あまりのバカさ加減に期待がしぼんでしまったのでしょう。
 確かにこのようなバカでは、ルーセンにいいように操られてしまいます。

 まあ、王家が滅ぼうと栄えようと私の知ったことではありません。
 大切に思う家族も血族も友人も、ただ一人もいません。
 王家が殺し合う事にも、父親であるタイランが殺される事にも、心は動きません。
 でも、逃げるにしても戦うにしても、ドゼル侯爵がゲドルナ王家を圧倒している今の状況ではいけませんね。
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