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2話

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「なにを躊躇されておられるのですか、王太子殿下。
 私がご助力いたします。
 レオルナなど殿下が斬り捨ててしまわれればいいのです」

「ドゼル侯爵……」

 国王が思わずつぶやいて、顔を青ざめさせています。
 今までドゼル侯爵の妹を批判していたのです。
 王太子を操る事ができるのなら、王は弑逆されるかもしれません。
 ロキ神の加護は、王族が一人でも生きていればいいのですから。

 それにしても、ここまで国王陛下を無視しますか、ドゼル侯爵ルーセン卿。
 武力で王家を圧倒し、好き勝手している極悪人。
 王家にロキ神の守護がなければ、とうに王家を滅ぼして、自分が国王になっていた事でしょう。

「大丈夫なのか?
 父王陛下はダメだと申されたぞ」

「なにを弱気な事を申しておられるのです。
 王太子はこの国を継がれる御方でございます。
 陛下がどうもされても、自分の考えをお持ちになればいいのです。
 そして断じて行われればいいのです」

 ドゼル侯爵が王太子をそそのかしています。
 王太子がバカで身勝手なら、国王を殺して王太子を戴冠させるでしょう。
 問題は、王太子が父親の国王を殺してでも戴冠したいと思っているかです。
 いえ、バカな王太子なら、自分がドゼル侯爵の言い成りなったら、国王が殺される事を理解していない可能性があります。

「そうね、王太子さえ味方にできれば、国王陛下を弑逆できるものね。
 そうしてイルレク王太子をそそのかして私を殺せば、神々の戦い引き起こして、この世界を滅ぼす事ができるものね」

「なに?
 本当かドゼル侯爵?!
 そのような事は絶対に許さんぞ!」

「おお、我が愛する息子イルレク。
 お前がそう言ってくれるなら、まだまだこの国は安泰だ」

 国王が感激しています。
 確かに普通なら王位を狙って骨肉の争いをする王族が、国王を愛し護ろうとしているのですから、うれしい事でしょう。
 でも、能力の低い者に王位を譲ろうとするのは、いかがなものでしょう。

「王太子殿下も国王陛下も、何か勘違いをされているのではありませんか?
 この国が安泰なのは、王族の方々がいてくださるからです。
 その事を知らない者は、貴族も庶民も関係なく、ただ一人もいません。
 レオルナの嘘に騙されてはいけませんぞ」

 空々しことを言っていますね。
 国王自身が殺されると思っていたのです。
 だからこそあれほど顔を青ざめさせていたのです。
 今さら言い訳しても、今までやってきた事をなかったことにはできません。
 問題は王太子がバカ過ぎて、ドゼル侯爵の嘘を鵜呑みにするかもしれません。
 ここはバカでも分かるように話してあげなければなりませんね。
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