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第一章
第5話:調査報告
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帝国歴222年4月11日:最高級ホテル
最高級ホテルのスイートルームのベッドに、幼女と少女が並んで眠っている。
昏々と眠る2人以外には誰もいない。
漢はもう1つのベッドルームで冒険者風の男達を話していた。
「幼女は本人が言っていた通り、王都でも指折りの商家の娘でした。
家の者達は秘密にしていましたが、家人から聞き出した話では、最近雇い入れた御者見習いが賊を引き込んだようです」
冒険者風の男が、ミア達を助けた漢に報告する。
「幼女はこのまま家に返せばいいだろう」
「はい、準備しておきます」
「問題は娘の方だ。
隠しきれない気品がある」
「シモーネ様、あの方が噂の公爵令嬢のようでございます」
「ほんとうか、本当に公爵令嬢が商家で下女奉公しているのか?」
「本国で聞いていた以上に酷い状況のようでございます」
「ベネディクトゥス王は一代で国を復興させた英傑ではないのか?」
「ベネディクトゥス陛下が一代の英傑なのは間違いないのですが、肉親の情が強いようで、庶弟の散財を見逃しているようでございます」
「身内に甘いと言うのなら、姪であるミアを護るべきだろう!」
「シモーネ様、ベネディクトゥス陛下も身内にまでは密偵を送れないのでしょう。
そんな事をするのは、身内を信じていない、恥ずべき行動だと思っておられるのかもしれません」
「そんなちっぽけな自尊心の為に姪を餓死させるのか?
愚かとしか言いようがないな!」
「シモーネ様、この世に欠点のない者などいません。
ベネディクトゥス陛下の身内に甘いという欠点は、確かに愚かではありますが、父王が荒廃させた国を復興させた功績に比べれば、大した事ではありません。
その事はシモーネ様も理解されておられたではありませんか」
「本国で話だけ聞くのと、実際に痩せ衰えたミアを見るのとは違う。
それに本国で聞いていたのは、ミアが社交でデビューさせてもらえないと言うだけで、食べ物も与えられずに下女奉公させられているとは聞いていなかった!」
「その点に関しましては、調査不足をお詫びさせていただきます」
「お前が謝ってもミアの苦しんだ時間は戻ってこない!
それよりも、どうすればミアを助けられるかを考えろ!」
「まずはミア嬢の体力を回復させる事を優先されませんか?」
「ミアの現状をベネディクトゥス王に見せつけて、両親と妹に厳罰を与えるように命じるべきではないのか?」
「幾らシモーネ様でも、ベネディクトゥス陛下に家臣を処罰するように命じるのは、難しいと思われます
まして処罰する相手は、半分とは言えベネディクトゥス陛下と血の繋がった弟でございます」
「それではカタ―ニョ公爵達を処分できないではないか!」
「落ち着いでください、シモーネ様らしくありませんぞ」
「これが落ち着いていられるか!
ミアは我らが一瞬でも遅かったら死んでいたのだぞ!
いや、もう数日遅かったら、今回の件に関係なく餓死していたのだぞ!」
「分かりました、ミア嬢の現状は我らが大使館を通じで厳重に抗議いたします。
その上でベネディクトゥス陛下のなされようを確かめられてください。
シモーネ様がどうしても許せないと申されるのでしたら、我らも覚悟を決めて行動させていただきます」
「……分かった、私も少々冷静さを欠いていたようだ。
私もベネディクトゥス王を殺したいわけではない。
そんな事をしてしまったら、やっと平穏が訪れたグレコ王国がまた荒れる。
私が許せないのは、ミアの父親と母親、そして妹だ。
ミアを哀しませる事なく連中を処罰する方法を考えてくれ」
「お任せください、極悪非道な連中には、必ずその言動に相応しい罰を与えてご覧に入れます」
最高級ホテルのスイートルームのベッドに、幼女と少女が並んで眠っている。
昏々と眠る2人以外には誰もいない。
漢はもう1つのベッドルームで冒険者風の男達を話していた。
「幼女は本人が言っていた通り、王都でも指折りの商家の娘でした。
家の者達は秘密にしていましたが、家人から聞き出した話では、最近雇い入れた御者見習いが賊を引き込んだようです」
冒険者風の男が、ミア達を助けた漢に報告する。
「幼女はこのまま家に返せばいいだろう」
「はい、準備しておきます」
「問題は娘の方だ。
隠しきれない気品がある」
「シモーネ様、あの方が噂の公爵令嬢のようでございます」
「ほんとうか、本当に公爵令嬢が商家で下女奉公しているのか?」
「本国で聞いていた以上に酷い状況のようでございます」
「ベネディクトゥス王は一代で国を復興させた英傑ではないのか?」
「ベネディクトゥス陛下が一代の英傑なのは間違いないのですが、肉親の情が強いようで、庶弟の散財を見逃しているようでございます」
「身内に甘いと言うのなら、姪であるミアを護るべきだろう!」
「シモーネ様、ベネディクトゥス陛下も身内にまでは密偵を送れないのでしょう。
そんな事をするのは、身内を信じていない、恥ずべき行動だと思っておられるのかもしれません」
「そんなちっぽけな自尊心の為に姪を餓死させるのか?
愚かとしか言いようがないな!」
「シモーネ様、この世に欠点のない者などいません。
ベネディクトゥス陛下の身内に甘いという欠点は、確かに愚かではありますが、父王が荒廃させた国を復興させた功績に比べれば、大した事ではありません。
その事はシモーネ様も理解されておられたではありませんか」
「本国で話だけ聞くのと、実際に痩せ衰えたミアを見るのとは違う。
それに本国で聞いていたのは、ミアが社交でデビューさせてもらえないと言うだけで、食べ物も与えられずに下女奉公させられているとは聞いていなかった!」
「その点に関しましては、調査不足をお詫びさせていただきます」
「お前が謝ってもミアの苦しんだ時間は戻ってこない!
それよりも、どうすればミアを助けられるかを考えろ!」
「まずはミア嬢の体力を回復させる事を優先されませんか?」
「ミアの現状をベネディクトゥス王に見せつけて、両親と妹に厳罰を与えるように命じるべきではないのか?」
「幾らシモーネ様でも、ベネディクトゥス陛下に家臣を処罰するように命じるのは、難しいと思われます
まして処罰する相手は、半分とは言えベネディクトゥス陛下と血の繋がった弟でございます」
「それではカタ―ニョ公爵達を処分できないではないか!」
「落ち着いでください、シモーネ様らしくありませんぞ」
「これが落ち着いていられるか!
ミアは我らが一瞬でも遅かったら死んでいたのだぞ!
いや、もう数日遅かったら、今回の件に関係なく餓死していたのだぞ!」
「分かりました、ミア嬢の現状は我らが大使館を通じで厳重に抗議いたします。
その上でベネディクトゥス陛下のなされようを確かめられてください。
シモーネ様がどうしても許せないと申されるのでしたら、我らも覚悟を決めて行動させていただきます」
「……分かった、私も少々冷静さを欠いていたようだ。
私もベネディクトゥス王を殺したいわけではない。
そんな事をしてしまったら、やっと平穏が訪れたグレコ王国がまた荒れる。
私が許せないのは、ミアの父親と母親、そして妹だ。
ミアを哀しませる事なく連中を処罰する方法を考えてくれ」
「お任せください、極悪非道な連中には、必ずその言動に相応しい罰を与えてご覧に入れます」
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