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第19話14日目の出来事2

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「そろそろ頃合いではありませんか、母上」

「そうですね。
 これでもう王太子を取り巻く者は一人もいないわ。
 私達以外わね!」

 モドイド公爵夫人イザベルと、次女で極悪非道なジェスナは、冷酷な眼で盗賊に襲撃される王太子一行を見ていた。
 何とか動けるようにはなったが、醜悪としか表現できない容姿となったジェスナでは、もう二度と王太子の寵愛を得ることはできない。
 だがイザベルもジェスナも諦めなかった。
 王太子を一人きりにして、幽閉してしまえばいいのだ。

 そう考えた二人は、遷都をすればこういう結果になると分かっていたにもかかわらず、王太子の好き勝手にさせた。
 夫で父親のモドイド公爵ライリダ卿も同じ考えだった。
 だが、イザベルとジェスナはモドイド公爵と協力しているわけではない。
 イザベルはモドイド公爵に殴られた恨みを忘れていなかった。

 だから殺したかったのだが、殺してしまったら、もう生きた形で利用できない。
 そこで薬で正気を失わせて、操り人形にしていた。
 元々この薬は、将来王太子や国王に使う事を前提に用意していたものだ。
 まさか夫であり父親であるモドイド公爵に使うことになるとは、イザベルもジェスナも思ってもいなかったが、使う事を躊躇うような優しさなど欠片もない。

 そしてモドイド公爵家の全権を手に入れた二人は、公爵軍を全力動員して、王太子を助け出したが、直ぐに薬を使ってモドイド公爵と同様の操り人形にした。
 早い話が廃人にする毒薬を使ったのだ。
 王太子を確保した二人は、新都には向かわなかった。
 新都では二人の権力が絶対ではない。
 だから二人が絶対権力者として力を振るえる、モドイド公爵家の領都に向かった。

 だがただ向かったのではない。
 更なる権力強化を目指して、王太子一行を襲った山賊盗賊を討伐した。
 だがこれもただ討伐したのではない。
 近隣領主が恐れ震えあがるほどの、残虐非道な処刑を行ったのだ。
 そして奪われた王家の財宝の一部を取り返した。

 だがそれでも終わらないのがイザベルもジェスナだ。
 二人は王太子一行を襲わなかった貴族士族に、王太子の名を騙って勅命を出した。
 王太子を襲った謀叛人を討伐しろという、討伐命令を出したのだ。
 それもただの命令ではない。
 討伐命令を受けた貴族士族が、欲で奮い立つような命令だった。
 しかも二人にも莫大な利益が転がり込む命令でもあった。

 大前提として王家の財宝を回収して献上しなければいけない。
 だが結局献上品はイザベルとジェスナの物となる。
 だが、王太子襲った罪で討伐された貴族士族の領地と私財の半分は、王太子に味方して討伐した貴族士族に分け与えられる。
 もっとも残りの半分は王太子の物、いや、イザベルもジェスナのモノになる。
 ロナンデル王国は戦国乱世となった。
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