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34話

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 人手不足です。
 信用信頼できる家臣が全く足りません。
 王家の直轄領が倍増しています。
 父時代の公爵直轄領と比べれば、数百倍です。
 信用信頼できる家臣が不足するのは当たり前なのです。

「女王陛下、この者たちを公爵家の家臣に加える事を提案させていただきます」

「分かりました。
 フェルドナンドの眼で確かめた者たちです。
 間違いなどないと信じています。
 それぞれの能力と性格に応じて役目に付けてください」

 私は女王になりましたが、同時に多くの爵位も持っています。
 その中にはファンケン公爵家の爵位があり、ファンケン公爵領の領主でもあり、その支配と指示もしなければいけません。
 表向きファンケン公爵家の家臣筆頭はリポン侯爵フェルドナンドです。
 フェルドナンドの提案に従った、多くの家臣を新規に召し抱えました。

 本来なら貴族士族は魔力持ちでなければいけません。
 ですがそれは形式になってしまっています。
 士族でも最下級の徒士の多くは、魔力を持っていません。
 特に貴族に仕える陪臣徒士は魔力がなくて普通です。
 家格に相応しい魔力を持たない者が爵位を継いでいる事もあります。
 さすがに全く魔力を持たない者が貴族になっている事はりませんが。

「マイロードケーニギン。
 この者たちを王家の家臣に加える事を提案させていただきます」

「ですがエヴァ。
 この者たちは魔力を持っていないではありませんか。
 徒士とはいえ王家直属です。
 貴族家の陪臣徒士のように、魔力をなしを召し抱えるわけにはいきません」

「確かに理想はその通りございます。
 ですが旧モンザ領に送る役人が全くおりません。
 この者たちは、ファンケン公爵家の家臣として、内政の才能を証明した者たちでございます。
 武官まで魔力なしを召し抱えるのは問題ですが、内政専門の文官ならよいのではないでしょうか?」

 これも三文芝居です。
 すでに三人で話し合った結果です。
 エヴァが直接会って確かめ、フェルドナンドが魔術で確認した、魔力なしの不可触民を、王家の家臣とするための芝居です。
 やっていて内心恥ずかしいですが、そんな素振りを見せてはいけません。
 全員が真相を知っている嘘を平気で口にして、下手糞な芝居をするのも、王侯貴族の役目であり責任なのです。

「ですが護りはどうするのですか。
 敵、隣国の軍勢や魔獣が攻めてきた時に、民を護るのも内政官の仕事ですよ」

「魔道具を貸与します。
 お貸し魔道具として、防御魔法と攻撃魔法の魔術書を貸し与えます」

「分かりました。
 それなら認めましょう」
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