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28話

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「お見合いの申し込みでございます、マイロードケーニギン」

「またですか。
 今度は誰ですか?」

「モンザ王家のビルド王弟殿下でございます、マイロードケーニギン」

「ビルド王弟は以前調べていましたね。
 確かどうしようもないくらい性格が悪いのでしたね?
 国王と王太子を殺して自分が王位に就こうとしていたのではありませんか?」

「はい、その通りでございます、マイロードケーニギン」

 エヴァが私の敬称を変えました。
 マイロードはそのままですが、その後に女王と入れるようになりました。
 今ではエヴァも侯爵閣下なのですが、その姿勢は男爵の頃と変わりません。
 まあそれはいいです。
 そのうち慣れるでしょう。
 問題は嫌になるくらい増えたお見合いの対策です。

「さて、個別の話はあとでするにして、基本方針を話し合いましょう。
 エヴァはどうするべきだと思いますか?
 それと今はマイロードケーニギンは禁止です。
 いいですね」

「分かりました。
 しばらくは当たり障りのない返事をすべきかと思われます」

「理由は」

「まだこの国の基盤が定まっておりません。
 やる気になれば、全ての貴族が連合しても、討ち果たす事は可能ですが、それではフェルドナンド殿が表に出てしまいます。
 今は国内貴族にも隣国にも、自分たちの家から王配を送り込めるかもしれない、そう思わせておく方が、争いを防げると思われます」

「その間に軍備と兵力を固めろというのですね」

「はい。
 フェルドナンド殿の力を表にだすことなく、国内貴族と隣国を抑えるとなると、表に出る装備に差をつけ、単純に兵力を増やすしかありません」

「どれくらいの装備を整えられますか?」

「御貸し鎧として、鋼鉄を超える魔獣の革鎧を用意することができます。
 今まではファンケン公爵家の職人しか使えませんでしたが、今は王家の職人も活用することができます。
 魔熊、魔虎、魔狼、魔猪など、種族によって微妙に防御力は違いますが、少なくとも鋼鉄の剣程度なら完璧に防ぐことができます」

「何領完成させることができますか?」

「一年後には五千の魔獣革鎧を用意できます」

「魔獣牙剣はどうですか?」

「これは量産が可能です。
 もともと魔獣の牙や骨だけで剣や槍を作る事はできません。
 切っ先だけを魔獣素材にして、他の部分は鋼鉄で造りますが、使い方を誤らなければ、鋼鉄の完全鎧を貫通することができます。
 剣が七千振り、槍も七千筋そろえることができます。
 これをお貸し武器とします」

「完全武装の騎士五千騎と武器だけを装備した予備二千騎ですか。
 もう少し数を増やしたいですね」

「マイロードケーニギンの切り札でございます。
 急いで不良品を造るわけにはいきません。
 信用信頼できる職人は探し続けますが、これ以上は諦めてください」

「分かりました。
 話がそれてしまいましたね。
 話をお見合いの件に戻しましょう」
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