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21話

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「フェルドナンド卿。
 今ふとおもったのですが、食糧生産で使っている魔力は、フェルドナンド卿の魔力の何割にあたるのですか?」

「一割程度でございます」

 めまいがしました!
 その場に崩れ落ちそうになりました!
 なんたる非常識な魔力量なのでしょう。
 私だって公爵に相応しい魔力を持っているのです。
 いえ、王族にだって引けをとらないと自負しています。
 しかし、その私が足元にも及ばない魔力量を保有しているなんて!

「全ての魔力を私のために使ってくれるとのことでしたが、余分な魔力はどうしているのですか?」

「魔術巻物や魔術書、魔晶石の製作に使っております。
 私が居なくなった後の事も考え、備蓄用に製作しております」

 再度めまいがしました!
 今度こそ、その場に崩れ落ちそうになりました!
 フェルドナンド卿の魔力を全て使って制作した魔術巻物、魔術書、魔晶石。
 どれくらいの数があり、どれほどの価値があるのでしょう?
 どれほど驚こうとも、当主として茫然自失になるわけにはいきません。
 気力を総動員して確認しなければいけない事があります。

「製作してくれている魔術巻物と魔術書には、促成と豊穣の魔法もあるのですか?」

「そこまではできません。
 製作しているのは、一般的に出回っている魔法の魔術巻物と魔術書に限らせていただいております」

「当然ですね。
 それでもとても高価で助かります。
 それと、そうですね、率直に献策してもらいます。
 フェルドナンド卿の魔力で実現可能な、公爵家に最も役に立つ政策は何ですか?」

「ふむ、そうですね。
 私に未開地の一部を領地に与えて、毎年税を払わせることでございますね」

「フェルドナンド卿が我が家に仕えてくれる期間は、一年だったはずですか?」

「はい。
 常にお側近くに仕え、身命を賭して働かせていただくのは一年です。
 ですが閣下のお陰で世襲可能な伯爵位を手に入れることができました。
 更に領地を賜れば、家臣として仕える必要があります。
 もっとも、学院の教師としての務めがありますので、今と同じように仕える事はできません。
 精々弟子に領地を管理させて税を納め、いざという時に軍役を務めるくらいです」

「家臣には軍役はありますが、税を納める義務はありませんよ」

「最初に領地を賜るときに、そういう契約にしておけば問題ありません。
 それに、私は学院にいて満足に閣下に仕えることができません。
 そこ代わりに税を納めるのは当然でございます」

「税は何割でどれくらいの量になりますか?」

「拝領できる未開地の広さによりますが、今実験で使っている農地と同じ広さでしたら、取高は二四〇万石。
 税額は九六万石くらいですね」

 頭が、割れるように痛い!
 公爵領の総生産高が百万石少し、納められる税額が四〇万石少しなのですよ!
 それを毎年九六万石も税を納めるというのですか!
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