上 下
2 / 9
第一章

第2話:対決

しおりを挟む
 殺す気です、アドルフは本気で私を殺す気です。
 私ももう意地を張ってはいられません。
 この世界に来る事で初めて得ることができた父親、彼のような立派な騎士になりたかったのですが、騎士に拘って殺されては全く意味がありませんね。
 ここは魔力に頼るしかないです。
 次善の策として父親のような立派な領主を目指す事にします。

「何をしている、アドルフ。
 一介の騎士の分際で、ファインズ辺境伯家の令嬢に手出しする事は許さんぞ」

 助かりました、カーカム男爵殿の侍女が助けに来てくれました。
 ですが、腐れ外道のアドルフなら侍女も一緒に殺そうとするかもしれません。
 その時は命を賭けても助けなければファインズ辺境伯家の面目が立ちません。
 もう悩んでいる場合ではありません。
 転生で得た魔力を自重せずに使いましょう。

「ほお、そちらこそ一介の侍女が大きな口を叩いてくれる。
 私はアドリーヌ夫人に頼まれて、ブリジット嬢に正騎士になるための鍛錬をしていたのだ、男爵家の侍女ごときが偉そうな口を叩くな。
 それに、ブリジット嬢は正騎士の私の名誉を傷つけるような事を口にした。
 私は正騎士の名誉にかけて決闘を申し込んだのだ。
 平民の侍女ごときが立ち入れる問題ではない、下がっていろ!」

「ふん、相手の強さも理解できない未熟者が偉そうな口を叩くな。
 だが私も最低のゴミクズの為にファインズ辺境伯家の名誉を汚す気はない。
 未熟者の空っぽの頭でも理解できるように説明してやる。
 感謝してありがたく思え」

「なんだと、俺様にケンカをうっているのか」

「私をお前のような弱い者いじめしかできない、ゴミクズ騎士と一緒にするな。
 なんで強い私が弱いお前にケンカを売らなければいけないんだ。
 そんな恥ずかしい事は絶対にやらん、ゴミクズ騎士と一緒にするな。
 私は男爵家の侍女ではなく、王家からブリジット嬢に付けられた正騎士資格を持つ侍女だ、お前のような金を積んで実力もないのに正騎士の地位を買ったのではない」

 なんですって、王家が遣わしてくれた侍女ですって。
 しかも王家が定めた厳格な騎士の地位を得ている本当の騎士とわ!
 女たらしのアドルフが後ろに下がっています。
 勝ち目がない事をようやく理解したのですね。
 それにしても王家が護衛を送って来てくれたのですね。
 いえ、目付なのかもしれませんね。
 辺境伯としての役目を果たせないファインズ家を処分するために……

「王家、ラティマー王家がブリジット嬢に護衛だと。
 聞いていない、私は何も聞いていないぞ。
 嘘をついても直ぐに分かるのだぞ。
 それに、意味がない、何の必要があって王家がブリジット嬢に護衛をつける」

「意味がないだと、愚かな。
 自分達のやっている事が王家にバレていないとでも思っていたのか。
 胸に手を当てて考えれば直ぐに分かる事だろう。
 なぜ、いま、王家が私をブリジット嬢の護衛に送ったかは、馬鹿でもわかるだろ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?

水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。 理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。 本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。 無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。 そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。 セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。 幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。 こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。 そして、ある日突然セレナからこう言われた。 「あー、あんた、もうクビにするから」 「え?」 「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」 「いえ、全くわかりませんけど……」 「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」 「いえ、してないんですけど……」 「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」 「……わかりました」 オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。 その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。 「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」 セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。 しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。 (馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)

伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家
恋愛
マトリカリア伯爵家は代々アドニス王国軍の衛生兵団長を務める治癒魔法の名門です。 神々に祝福されているマトリカリア家では長女として胸元に十字の聖痕を持った娘が必ず生まれます。 その娘が使う強力な治癒魔法の力で衛生兵をまとめ上げ王国に重用されてきました。 そのため、家督はその長女が代々受け継ぎ、魔力容量の多い男性を婿として迎えています。 しかし、今代のマトリカリア伯爵令嬢フリージアは聖痕を持って生まれたにも関わらず治癒魔法を使えません。 それでも両親に愛されて幸せに暮らしていました。 衛生兵団長を務めていた母カトレアが急に亡くなるまでは。 フリージアの父マトリカリア伯爵は、治癒魔法に関してマトリカリア伯爵家に次ぐ名門のハイドランジア侯爵家の未亡人アザレアを後妻として迎えました。 アザレアには女の連れ子がいました。連れ子のガーベラは聖痕こそありませんが治癒魔法の素質があり、治癒魔法を使えないフリージアは次第に肩身の狭い思いをすることになりました。 アザレアもガーベラも治癒魔法を使えないフリージアを見下して、まるで使用人のように扱います。 そしてガーベラが王国軍の衛生兵団入団試験に合格し王宮に勤め始めたのをきっかけに、父のマトリカリア伯爵すらフリージアを疎ましく思い始め、アザレアに言われるがままガーベラに家督を継がせたいと考えるようになります。 治癒魔法こそ使えませんが、正式には未だにマトリカリア家の家督はフリージアにあるため、身の危険を感じたフリージアは家を出ることを決意しました。 しかし、本人すら知らないだけでフリージアにはマトリカリアの当主に相応しい力が眠っているのです。 ※最初は胸糞悪いと思いますが、ざまぁは早めに終わらせるのでお付き合いいただけると幸いです。

【完結】城入りした伯爵令嬢と王子たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
ブルック王国女王エリザベスより『次期国王選びを手伝って欲しい』と言われたアシュリーは、侍女兼女王の話し相手として城入りすることとなる。 女王が若年性認知症を患っていることを知るのは、アシュリーの他に五人の王子たちのみ。 女王の病と思惑、王子たちの想い、国の危機…… エリザベスとアシュリーが誘拐されたことから、事態は大きく動き出す。 そしてそんな中、アシュリーは一人の王子に恋心を抱いていくのだった…… ※わかりやすいように、5人の王子の名前はあいうえお順にしています^ ^ ※5/22タイトル変更しました!→2024.3またまた変更しました…… ※毎日投稿&完結目指します! ※毎朝6時投稿予定 ※7/1完結しました。

【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。 二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。 しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。 サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。 二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、 まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。 サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。 しかし、そうはならなかった。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...