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第6話主人公オリビア視点

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 ジルは普通の犬ではないのかもしれません。
 前から少しは疑っていたのですが、今日はっきりしました。
 だって、魔獣を狩れる犬など普通いません。
 どこの世界に、自分の十数倍の大きさの魔獣を斃せる犬がいるというのです。
 それに今、使い魔を使役しているのです。
 絶対に普通の犬ではありません。

「ジル、あの子達は何をしてくれているの?」

「ワン!」

 ジルは強情なのか、それとも少し天然なのか、この期に及んで犬のフリをします。
 しかたありませんね。
 どうしてもジルが犬のままでいたいのなら、犬として相手をしてあげましょう。
 それに私もジルの毛並みを撫でてあげるのが大好きですから、下手に犬ではないと分かってしまうと、気安く撫でてあげられなくなります。

 それにしても、荒地を耕してくれている真赤な使い魔は、姿形だけは人間そっくりですが、明らかに人間とは違う雰囲気があります。
 まあ、見た目が真赤だから間違えようがないのですが。
 でも笑ってしまいますね。
 使い魔ならもっと他に使いようがあるでしょうに、荒地の開拓に使うなんて。

 ジルは何かが吹っ切れたのでしょう。
 私の目の前で、次々と使い魔を増やしていきます。
 井戸もそこら中に掘り返しています。
 その井戸の水を荒地の土を使って、日干し煉瓦まで作らせています。
 家でも建てる気なのでしょうか?

 私と本格的のここに住む気になってくれたということでしょうか?
 今迄は仮住まいの気だったのでしょうか?
 それとも遊び、ピクニック気分だったのでしょうか?
 私には衝撃的な出来事だったのですが、ジルとは感覚が違うようですね。
 
「ワン!」

「どうしたの、ジル?」

「ワン、ワン、ワン!」

 私がジルの見る方に眼をやると、使い魔に連れられた人間が歩いてきました。
 まだ遠くてはっきりと見分けられませんが、チャーリーではないようです。
 シルエットから判断して、スカートをはいているように見えます。
 恐らく女性なのでしょうが、魔の荒地に女性がやってくるなんて、普通では考えられない事ですから、犬に見せかけているジルの仕業でしょう。

 ここまでやって、まだ私がジルを犬だと信じると思っているのなら、ジルは完全に天然だと言えます。
 そんな天然のジルと愉しく一緒に暮らそうと思うと、私も天然になるしかないのでしょうね。
 それにしても、ジルは何のためにあの女性をここに連れてきたのでしょうか?
 今更私の世話をさせるために、女性と連れてきたとは思えないのですが。
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